著者
阿久津 洋巳 浅野 壮志 AKUTSU Hiromi ASANO Takeshi
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.9, pp.65-71, 2010

現代社会に生活する多くの人は,1週間を一つの周期としている.この周期は「日曜日が好きだ」とか「月曜日は嫌いだ」という大まかな曜日の好き嫌いに現れたり,曜日ごとに様々に変動する感情をもたらす.ポジティブ感情(PA)とネガティブ感情(NA)は,曜日ごとに変動することが知られており,この変動は「曜日の効果」と呼ばれることもある.「曜日の効果」に関する先行研究は,活性化したPA と「快感情(Pleasant affect)」を区別する必要があることを明らかにしている(Egloff,Tausch,Kohlmann & Krohne, 1995).活性化したPA(以下単にPA とよぶ)は覚醒感をともなっているが,一方,快感情は高い活性状態をともなっておらず,「幸せ」や「うれしい」のような穏やかで持続的な気持ちを含んでいる.活性化したネガティブ感情,つまり緊張や不安といった気持ちを含むNA(以下単にNA とよぶ)と,悲しみや不幸といった気持ちを含む「unpleasant affect(不快感情)」についてもPA と同様のことが言える.
著者
阿久津 洋巳 AKUTSU Hiromi
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.13, pp.245-252, 2014

岩手大学教育学部は学期末に授業評価を実施するが,実施された結果を詳細に検討した報告書はまだ公表されていない。筆者は授業評価が測定している構成概念と測定される概念間の関連,および評価が高い授業の特性を調べるために,2013年度前期に集められた実際の評価データー(1680ケース) に多変量解析を適用して分析した。「教員の授業の技量と学生の満足度」「授業に対する学生の興味と意欲」「授業外の活動」「シラバスの評価」の4つの要因が見出された。技量・満足度と興味・関心の間に関連があり,また技量・満足度とシラバス評価の間にも関連があった。評価の高い授業は,話し方が明瞭で聞き取り易く,よく準備されていて,学生の理解に配慮して適度な分量と速さで進むという特性をもっていた。一方測定尺度としての欠陥も見つかった。評価アンケートは回答が特定の値に集中し、分布は偏っていた。尺度の信頼性は検討されていなかった。信頼できる評価尺度の開発が必要である。
著者
阿久津 洋巳 石亀 雅哉 AKUTSU Hiromi ISHIGAME Masaya
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.11, pp.167-175, 2012-03-31

大学生の共通教育科目の学力は,合理的な手立てとして多くの場合試験によって評価される。受講生の人数が多いため,客観式テストによる学力評価が望ましいが,信頼性のあるテストを作成することは容易なことではない。本研究は,項目反応理論を用いて,適正な評価を行うために必要な試験問題の選び方とその採点の方法について検討した。そのため実際の共通教育試験問題のデータに対して項目反応理論を適用し,不適格な問題項目を見出し,それらの問題項目を取り除いた採点結果と初めの試験問題を使った通常の採点結果とを比較した。項目反応理論を適用する有効性がいくつかの側面で明らかとなった。
著者
阿久津 洋巳 AKUTSU Hiromi
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The Journal of the Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:24329231)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.61-70, 2017-03-31

本論文は入学試験に使われる小論文の採点時の集計方法を検討した。小論文テストでは,採点者間の得点(素点)の分散が評価の公平性に影響する。この問題の解決方法は素点をz変換して分散を調整することにあるが,素点の平均と分散調整済み得点の平均の違いを明らかにするために数値シミュレーションを使いた。さらに現実場面に近い条件で,素点の分散の違いが順位に及ぼす影響を推測した。これらの例示を通して,素点をz変換する方法がもつ利点を明確にした。