著者
Adil KASYMBEKOV Akira TAKASU Md Fazle KABIR Shunsuke ENDO Apas B. BAKIROV Kadyrbek SAKIEV Rustam OROZBAEV Takao HIRAJIMA Kenta YOSHIDA
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.47-64, 2020-05-25 (Released:2020-07-05)
参考文献数
43

キルギス北部天山に分布する高圧-超高圧変成作用を受けたマクバル・コンプレックス(Makbal Complex)中のネルディ層(Neldy Formation)のざくろ石を含まない泥質片岩(KG1251)と含ざくろ石-クロリトイド泥質片岩(KG1244)の岩石記載と地質年代の測定を行った.KG1251 の主要造岩鉱物はフェンジャイト,緑泥石と石英であり,その他に少量の曹長石,チタン石,方解石,ルチル及び炭質物を含む.ピーク変成条件はT < 630 ℃,P = 0.9-1.7 GPa が見積もられた.片理を形成するフェンジャイトのK-Ar 年代は524 ± 13 Ma であり,これはこれまでに報告されているマクバル・コンプレックスのエクロジャイト及びざくろ石-クロリトイド-タルク片岩のピーク変成年代(ca. 500 Ma)と調和的である.KG1244 の主要構成鉱物は白色雲母(コアがフェンジャイト,リムが白雲母),緑泥石,石英であり,その他に少量のざくろ石,クロリトイド,曹長石,電気石,ジルコン,モナザイト,チタン石,ルチル,方解石及び炭質物を含む.ピーク変成条件はT = 485-545 ℃,P = 1.2-1.5 GPa の高圧型変成作用を示し,その後,T = ca. 500 ℃,P > 0.3 GPa の低圧型変成作用を受けた.この変成作用は花崗岩体の貫入にともなう接触変成作用と考えられた.本研究で得られた白色雲母のK-Ar 年代(474 ± 12 Ma)は,この地域に分布するオルドビス紀の花崗岩の年代(ca. 460 Ma)と調和的である.KG1251 及びKG1244 のネルディ層の泥質片岩の変成条件は,マクバル・コンプレックスの構造・層序学的に下部を占めるエクロジャイトやざくろ石-クロリトイド-タルク片岩に比べて有意に低圧であることが明らかになった.