著者
後藤 仁敏 サメの歯化石研究会
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.361-374, 2004-11-25 (Released:2017-07-14)
被引用文献数
1

現生のラブカChlamydoselachus anguineusは,現生板鰓類のなかで最も原始的な解剖学的特徴を残したサメである.これまでの記録では,ラブカ科の最古の化石は南極のジェームスロス島の白亜紀後期(Campanian)の地層から産出したChlamydoselachus thomsoniであった.本論文では,日本産のラブカ属12本の歯化石にもとづく6種を記載した.すなわち,白亜紀後期(Turonian〜Maastrichtian)の地層から5種(10標本),第三紀中新世の地層から1種(2標本)である.Chlamydoselachus sp. 1の小型の歯は北海道三笠市の上部蝦夷層群(Turonian-Coniacian)と,夕張市鹿島の上部蝦夷層群(Santonian)から産出した.Chlamydoselachus sp. 2の小型の歯とChlamydoselachus sp. 3の大型の歯は,熊本県天草郡竜ケ岳町の姫浦層群樋之島層(Santonian)から産出した.Chlamydoselachus sp. 4の大型の歯とChlamydoselachus sp. 5の超大型の歯は大阪府貝塚市と泉南市昭和池の和泉層群畦ノ谷層(Maastrichtian)から産出した.Chlamydoselachus bracheriの歯は,群馬県富岡市の富岡層群井戸沢層(前期中新世)と同県安中市の富岡層群原田篠層(中期中新世)から産出した.また,ラブカ類の系統発生的関係と古環境の変化について考察した.すなわち,白亜紀後期には大型から小型のラブカ類が浅い海に生息していたのに,中新世になると比較的深い海に中型以下のラブカが棲むようになったことが推定される.
著者
Kiyoko Kuwahara Akira Yao Satoshi Yamakita
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.391-404, 1998-09-25 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
13

西南日本美濃帯の郡上八幡地域および根尾地域に分布する上部ペルム系層状チャート層の放散虫生層序の再検討を行った.郡上八幡および根尾の各セクションから産出する特徴的なAlbaillellariaの組みあわせに基づいて,上部ペルム系に4つの放散虫化石帯を識別した.下位より上位にFollicucullus scholasticus-Follicucullus ventricosus群集帯,Follicucullus charveti-Albaillella sp. F群集帯,Neoalbaillella ornithoformis群集帯,Neoalbaillella optima群集帯である.放散虫生層序学的データと地域地質のデータに基づき,従来一般的に用いられてきたN. optima帯とN. ornithoformis帯(Ishiga 1986)が,逆転して設定されていたことを確認した.
著者
Akira TAKASU Yasumitsu SUZUKI Yoshiya OHKI Takahiko OGAWARA Shizue SETO (SAKAMOTO)
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.37-42, 2022-01-25 (Released:2022-06-25)
参考文献数
26

Kosmochlor-bearing eckermannite rock is identified in the Yamanobo outcrop of Itoigawa City, Niigata Prefecture, Japan, which is emplaced within a serpentinite body of the Renge metamorphic belt. The eckermannite rock is likely a large enclave within the serpentinite body, with an albitite zone developed between the eckermannite rock and serpentinite matrix. Kosmochlor is lens-shaped or schlieren-like domains within the eckermannite matrix, and comprises spherical aggregates of radiated kosmochloric pyroxene. Spherule cores are occasionally occupied by a corroded form of chromite. The chemical compositions of the kosmochlor exhibit a solid solution between kosmochlor (Ko98Jd0Ae1Q1) and jadeite (Ko25Jd61Ae6Q8). The maximum kosmochlor component is 98 mol.%, likely representing the closest known composition to the NaCrSi2O6 end-member, worldwide. Sodium amphiboles coexisting with kosmochloric pyroxene, and especially the cores of relatively large amphibole grains, in particular, contain high Cr2O3 (up to 12.2 wt.%, 1.34 apfu) and exhibit significant C-site deficiency (i.e., C-site cation < 5).
著者
KABIR Md. Fazle 高須 晃
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.19-32, 2021-01-25 (Released:2021-04-03)
参考文献数
54

蓮華変成帯若桜地域に分布する青色片岩には昇温期,ピーク,そして降温期の 3つのステージの変成作用が記録されている.昇温期変成作用は片理を構成する鉱物に包有される鉱物群(緑泥石,緑れん石,フェンジャイト,曹長石,ウィンチ閃石/藍閃石,パラゴナイト,赤鉄鉱,石英)によって定義される.ピーク変成作用は片理を構成する鉱物(藍閃石/マグネシオリーベック閃石,緑れん石,フェンジャイト,緑泥石,チタン石,赤鉄鉱,石英)によって定義される.昇温期とピークの変成温度圧力を Na2O-CaO-K2O-FeO-MgO-Al2O3-SiO2-H2O-O2 (NCKFMASHO)系の相平衡モデル(シュードセクション・モデリング)により推定した.フェンジャイトと緑泥石の組成等値線から,昇温期変成条件は 300-320℃,0.5GPa,また,ピーク変成条件は 350-390℃,1.05-1.2GPa(ローソン石藍閃石片岩相または緑れん石藍閃石片岩相)であることが明らかにされた.片理を形成する角閃石の縁部(ウィンチ閃石~アクチノ閃石)およびピーク変成鉱物を置換する緑泥石とカリ長石の組み合わせより,360-400℃,0.4-0.5GPaの降温期変成条件が得られた.これらの昇温期,ピーク,降温期変成条件の推定より,若桜の青色片岩は変成ピーク後の岩体上昇初期に定温降圧を伴う時計回りP-T経路を経て形成されたことがわかる.このような定温降圧を伴うP-T経路は,ピーク変成条件は異なるが,周防帯に属する江津地域の青色片岩と類似する.
著者
Adil KASYMBEKOV Akira TAKASU Md Fazle KABIR Shunsuke ENDO Apas B. BAKIROV Kadyrbek SAKIEV Rustam OROZBAEV Takao HIRAJIMA Kenta YOSHIDA
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.47-64, 2020-05-25 (Released:2020-07-05)
参考文献数
43

キルギス北部天山に分布する高圧-超高圧変成作用を受けたマクバル・コンプレックス(Makbal Complex)中のネルディ層(Neldy Formation)のざくろ石を含まない泥質片岩(KG1251)と含ざくろ石-クロリトイド泥質片岩(KG1244)の岩石記載と地質年代の測定を行った.KG1251 の主要造岩鉱物はフェンジャイト,緑泥石と石英であり,その他に少量の曹長石,チタン石,方解石,ルチル及び炭質物を含む.ピーク変成条件はT < 630 ℃,P = 0.9-1.7 GPa が見積もられた.片理を形成するフェンジャイトのK-Ar 年代は524 ± 13 Ma であり,これはこれまでに報告されているマクバル・コンプレックスのエクロジャイト及びざくろ石-クロリトイド-タルク片岩のピーク変成年代(ca. 500 Ma)と調和的である.KG1244 の主要構成鉱物は白色雲母(コアがフェンジャイト,リムが白雲母),緑泥石,石英であり,その他に少量のざくろ石,クロリトイド,曹長石,電気石,ジルコン,モナザイト,チタン石,ルチル,方解石及び炭質物を含む.ピーク変成条件はT = 485-545 ℃,P = 1.2-1.5 GPa の高圧型変成作用を示し,その後,T = ca. 500 ℃,P > 0.3 GPa の低圧型変成作用を受けた.この変成作用は花崗岩体の貫入にともなう接触変成作用と考えられた.本研究で得られた白色雲母のK-Ar 年代(474 ± 12 Ma)は,この地域に分布するオルドビス紀の花崗岩の年代(ca. 460 Ma)と調和的である.KG1251 及びKG1244 のネルディ層の泥質片岩の変成条件は,マクバル・コンプレックスの構造・層序学的に下部を占めるエクロジャイトやざくろ石-クロリトイド-タルク片岩に比べて有意に低圧であることが明らかになった.
著者
高橋 正志 福田 芳生
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.259-274, 1991-07-25 (Released:2017-06-06)

Fossil fish otoliths from the Upper Pleistocene Kioroshi Formation in Sakurai, Kisarazu City, Chiba Prefecture, are described. Following 16 species are first reported from the Kioroshi Formation: Trachinocephalus myops (Schneider), Neoscopelus sp., Rhynchocymba sp., Uroconger sp., Trachurus Japonicus (Temminck et Schlegel), Argyrosomus argentatus (Houttuyn), Sillago japonica Temminck et Schlegel, S. paruisquamis Gill, Evynnis sp., Calliurichthys sp., Callionymus sp. cf. C. richardsoni Bleeker, Chaeturichthys sp., Sagamia genionema (Hilgendorf), Hypodytes rubripinnis (Temminck et Schlegel), Cociella sp., Engyprosopon sp.. Though deep-sea (36%) and shallow-sea (64%) fish otoliths co-occurred from the Kioroshi Formation, the sedimentary environment of this formation is presumed to have been the sandy and muddy bottom of the sea, of which the depth was 5-50m, and the temperature was the same as that of the Recent Bay of Tokyo or somewhat warmer. A predatory, Cociella sp., and a preyed, Callionymus sp. cf. C. richardsoni Bleeker, co-occurred.
著者
林 成多
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.38-52, 1999-01-25 (Released:2017-07-14)

埼玉県南西部の加治丘陵および入間川流域に分布する鮮新-更新統の上総層群から産出したネタイハムシの化石について再検討を行った.その結果,仏子層(前期更新世)からはオオミズクサハムシPlateumaris constricticollis,ブシミズクサハムシPlateumaris dorsata,フトネクイハムシ近似種Donacia cf. clavareaui,フトネクイハムシ亜属の1種Donacia(Donaciomima)sp.,コウホネネクイハムシ近似種Donacia(Donacia)cf. ozensis,イネネクイハムシ亜属の1種Donacia(Cyphogaster)sp.の6種を確認した.また,仏子層の下位層である飯能礫下部層(後期鮮新世)からもオオミズクサハムシとフトネクイハムシ近似種が産出した.仏子層および飯能礫層から産出したネクイハムシの化石には,後期鮮新世から前期更新世のネクイハムシ相には現生種と絶滅種の両方が含まれていることを示している.さらに,関東地方の各地から報告された中期更新世と後期更新世のネクイハムシの化石には現生種のみが含まれており,より古い時代の後期鮮新世から前期更新世のネクイハムシ相とは種構成が異なっている.絶滅種とされるブシミズクサハムシは仏子層から記載されたミズクサハムシ属の1種である.原記載以降,本種の系統関係を推定する上で重要ないくつかの形質が観察された.本種は近縁種のヒラシマミズクサハムシPlateumaris weiseiとの共通祖先から前期更新世以前に旧北区東部で分化し,北米に分布する姉妹種のP. germariは本種から派生した種であることが,これら3種の新たに得られた系統関係,化石記録,地理的分布から推定される.
著者
林 成多
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.361-370, 1997-09-25 (Released:2017-07-11)

埼玉県入間市野田の入間川河床において,仏子層のA部層より多くのネクイハムシ亜科の化石が得られた.これらの化石を検討した結果,ほとんどの化石はミズクサハムシ属の1種に同定された.この種は,前胸背板の表面を網目状の微細彫刻が覆い,不明瞭な中央縦溝を持つなどの特徴により,ミズクサハムシ属の現生種とは区別され,絶滅した未記載種である.本論では,仏子層A部層産のミズクサハムシ属の1種を新種Plateumaris dorsata, sp. nov.ブシミズクサハムシ(新称)として記載し,本種のミズクサハムシ属における分類学的な位置づけについて考察した.
著者
紀岡 秀征 古山 勝彦 三宅 康幸 酒井 潤一 長尾 敬介 池元 壮彦 野入 久幸 小田 貴代美
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.464-474, 1998-11-25 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
2

御岳火山中部更新統樽沢累層の溶岩47試料のK-Ar年代を測定した結果,古期御岳火山の火山活動は0.78±0.14 Ma〜0.39±0.006 Maの間である.年代データのそれぞれは,野外で観察された溶岩やテフラの層序関係と調和している.火山活動は,ステージ1(0.78-0.59 Ma)と2(0.53-0.39 Ma)に分けられ,ステージ1はさらに1a(0.78-0.71 Ma),1b(0.71-0.66 Ma)及び1c(0.66-0.59 Ma)に細分される.サブステージ1a,1bには主として玄武岩や安山岩の活動があり,サブステージ1c以降には安山岩やデイサイトが主体となっている.サブステージ1a,1bにはサブステージ1c以降に比べて非常に多くの泥流堆積物が含まれる.この岩相変化は,おそらく火山体の成長と関連している.すなわち,火山成長の初期には,流出した溶岩が各所で流水を堰き止め,できた湖の水とマグマとの相互作用の結果,大量の火山砕屑物が生産された.後には地形の低所は埋め立てられて,さらに粘性の高い溶岩が傾斜の大きな山体を作った結果,火山砕屑物質の生産は終わり,たとえあったにしても急勾配の調査範囲内には堆積しにくくなった.火山体がほぼ円錐状に成長したため,上述した岩相変化のタイミングは円錐火山体の全方向でほぼ一敦する.溶岩に挟在される以下の指標テフラの年代も溶岩の年代から決定できた.それらは,寒原Pm.I:0.70-0.65 Ma,寒原Pm.II:0.67-0.65 Ma,白布沢Pm.:0.61-0.58 Maである.