著者
柳沢 英輔 Eisuke Yanagisawa
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.421-453, 2014-03-25

本稿は,ベトナムにおけるキン族のゴング製作方法について,中部沿岸部のホイアン近郊にあるフッキウ村を事例に報告するものである。フッキウ村では,ゴング製作の知識や技術を代々受け継いだ職人がゴングを生産し,少数民族に販売してきた。ゴング製作の工程は,1 日目に原型の製作を,2 日目に鋳込み,研磨,調音などの作業を行う。鋳造によるゴング製作では原型の製作が最も重要であり,特に高度な技術を要する。また職人は少数民族の需要に合うように,鋳込みの材料に使用する金属の種類やその配合割合を変えている。村で最も優れたゴング製作職人の一人,ユン・ゴック・サン氏は,鋳造したゴングを少数民族ごとに異なる音色,音階に調律することができる。このようにゴング製作職人は,少数民族の需要に合わせてゴングを製作することで,ベトナムのゴング文化を支えてきた。