- 著者
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Giorgio BALDIZZONE
奥 俊夫
- 出版者
- THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.2, pp.97-112, 1990-07-20 (Released:2017-08-10)
原記載の後に詳細な検討がなされていなかった下記のツツミノガ科4種を再記載した.Coleophora cercidiphyllella OKUカツラツツミノガ雌のみによって記載され,欧州でカバノキ科などに寄生するC.violacea STROMに近縁と推測されていたが,雄の発見によりこの点を確証できた.雄交尾器のvalvaは後者に比較して短い.幼虫はカツラの新芽を食し,成葉の裏面に移って蛹化する.成虫は6月に出現.幼虫の筒巣は記載済み.北海道のほか,新たに岩手県からも記録された.C.flavovena MATSUMURAキミャクツツミノガ触角基部の毛束が発達せず,白色の前翅に細い黄褐条を有する種群のうち,極東産の唯一の既知種.幼虫はヨモギ,エゾヨモギの葉縁から数片を切取って交互につなぎ合わせ,暗褐色の扁平な筒巣を作る.晩夏から翌春まで葉裏に住み,透明な潜入食痕を残す.成虫は6月後半〜7月に出現.北海道,本州寒冷地(東北地方,長野県)産.朴奎澤博士採集の標本により韓国からも記録された.C.melanograpta MEYRICKカシワピストルミノガ(新称)成虫,触角基部の毛束はよく発達し,白色の前翅に黄褐条を有する.外観は同じくナラ類に寄生する他の2種に酷似するが,交尾器はこれらと明らかに異なる.幼虫はカシワ,クヌギ,コナラ,ミズナラの業面を食し,潜葉習性を示さない.山本光人氏はエノキからも筒巣を得たが,エノキの葉を食するかどうかは不明.筒巣は黒色のピストル状,長短の変異があるが,台尻に相当する尾端部上縁が屈曲点後方で凹むことが特徴.成虫は7月に出現.中国の南京近郊から記載されたが,今回,北海道,本州(関西地方まで)から記録された.C.citrarga MEYRICKヒメツツミノガ(新称)既知種の中では最も小型の部類で,成虫は開張9〜10mm.明るい黄土色の前翅に不鮮明な白条をそなえ,暗色点を欠くため,一見キクツツミノガの淡色個体に似るが,触角に暗色輪紋を全く欠いている.寄生植物は未知.大阪から記載された種で関西地方に普通.米国国立博物館所蔵の故一色周知教授採集の標本により,東京都及び台湾(台北,新記録)からも記録.暖地性の種であるらしく北日本には産しない.