著者
郭 芳 鄭 煕聖 高橋 順一 Hou Kaku Heeseong Jeong Junichi Takahashi
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.135, pp.1-14, 2020-12

本研究は,利用者本位の介護サービスのあり方に関する示唆を得るため,介護サービスの利用者の社会関係資本と生活満足度および人生満足度との関連を検討することを目的とした。A 県の30介護保険事業所における65歳以上の利用者を対象に,質問紙調査を行い,147名のデータを分析対象とした。調査内容は,基本属性,社会関係資本,生活満足度と人生満足度で構成した。全項目を投入してスピアマンの順位相関係数で検討した結果,介護サービス利用者の社会関係資本と満足度は有意な関連性が示された。家族,友人・知人,地域の人との交流などの社会関係資本が十分あると認識している利用者ほど,生活満足度および人生満足度が高いことが明らかとなった。これらから,利用者の社会関係を断ち切らない介護保険サービスの提供が求められること,地域に根差した施設づくりが重要であることを考察した。論文(Article)
著者
鄭 煕聖 Heeseong Jeong
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.123, pp.21-35, 2017-12

本稿の目的は,当事者視点からセルフ・ネグレクト状態にある独居高齢者の支援ニーズを探索的に検討することである。セルフ・ネグレクトの状態にある65歳以上の在宅独居高齢者9名を対象に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を参考に分析し,さらにマズローの欲求5段階説を用いて上位カテゴリーにまとめた。その結果,対象者の発言内容から調査対象者の支援ニーズに関係する17個のコードと9個のカテゴリーが抽出された。最終的に,マズローの欲求5段階説に基づき,【安全欲求充足のための支援ニーズ】【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】【尊重欲求充足のための支援ニーズ】という3個の上位カテゴリーに分類できた。考察では,対象者の支援ニーズは段階に関係なく多様性を有しており,とりわけ,長期間放置されてきた潜在的ニーズを把握するためには当事者との親密な関係形成及びライフヒストリーに対する十分な理解が重要であることが示唆された。論文(Article)