- 著者
-
鄭 煕聖
- 出版者
- 一般社団法人 日本社会福祉学会
- 雑誌
- 社会福祉学 (ISSN:09110232)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.1, pp.56-69, 2018-05-31 (Released:2018-06-28)
- 参考文献数
- 27
- 被引用文献数
-
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本研究の目的は,高齢者がなぜセルフ・ネグレクト状態に陥ったか,その発生要因とプロセスを明らかにすることである.そのため,セルフ・ネグレクトの状態にある65歳以上の在宅独居高齢者9名を対象に半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによるデータ分析を行った.その結果,セルフ・ネグレクトの発生要因として20カテゴリーが抽出され,それらを次の四つの上位カテゴリーにまとめることができた.また,セルフ・ネグレクトは,【素因(個人的特性)】+【危機的ライフイベント】⇒{【社会・環境要因】⇔【無気力・生活機能低下】}という一連のプロセスのなかで生じることが明らかになった.考察では,セルフ・ネグレクトとは,個人の意図性に関係なく,誰にでも起こりうる出来事であり,今後の課題として予防的視点を重視した多機関多職種の協働と連携とともに,社会的包摂志向のアプローチの必要性が示唆された.