著者
ICU 機能評価委員会 今中 雄一 林田 賢史 村上 玄樹 松田 晋哉
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.227-232, 2010-04-01 (Released:2010-10-30)
参考文献数
8
被引用文献数
2 8

ICU入室患者の治療成績を向上させるには,患者の重症度評価と予後に関するデータ蓄積が必要不可欠である。そこで,全国のICUの実態・治療等に関する松田班調査が2006,2007,2008年度に行われた。各年度の10月の1ヵ月間にICUに入室した患者を対象に,Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II(APACHE II)スコアを用いた重症度評価と予後,各施設のICU運用状況等を調査した。今回は2007年度の調査結果を検討した。ベッド数は6床が最も多く,中央値は8床であった。午前10時に専任の医師がいない施設が21%あり,夜間にはさらに増加した。APACHE II スコアは11,12点が最も多く,実死亡率はAPACHE II スコアから予測される死亡率より低かった。今後は治療に関与する因子を特定し,わが国ICUの治療成績向上を目指す必要がある。そのためには,恒常的なデータ収集システムの構築が必須である。
著者
日本集中治療医学会 ICU機能評価委員会 平成20年度厚生労働科学研究班
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.283-294, 2011
被引用文献数
3

【目的】診断群分類(diagnosis procedure combination, DPC)に基づく包括評価下でのICU機能評価の方法を検討する基礎資料として,人員配置あるいは運営方針の違いが患者転帰に与える影響を明らかにする。【方法】厚生労働科学研究「包括払い方式が医療経済及び医療提供体制に及ぼす影響に関する研究」班(松田研究班)に日本集中治療医学会ICU機能評価委員会が協力し,2008年に実施したICU調査で収集した情報を分析した。重症度予後評価にはAcute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)II scoring systemを用いた。分割患者群間の比較には標準化死亡比(standardized mortality ratio, SMR)を用いた。また,分割患者群間の平均予測死亡率に差を認めない場合には,観察された死亡率を比較した。【結果】ICU病床数は,2~67床(中央値:8床,四分位範囲:6~12床)で,病院間に大きな差を認めた。専任・専従医が入退室を決定しているICUでは,在室日数が有意に短かった(3.53±3.35日vs. 4.07±5.47日,<I>P</I><0.001)。専任・専従医が平日の20時にICU内に「いる」ICUと「いない」ICUを,SMRで比較すると「いない」ICUが低く,観察した死亡率で比較すると,「いる」ICUで死亡の危険が有意に高かった(odds比:1.394,信頼区間:1.078~1.803, chi-squared: 6.16,<I>P</I>=0.013)。専任・専従医が人工呼吸器の設定と離脱の方針を決定しているICUの死亡率は,それ以外のICUと比較して低い傾向を認めた(odds比:0.849,信頼区間:0.596~1.209, chi-squared: 0.665, <I>P</I>=0.415)。臨床工学技士と認定看護師の配置は患者転帰に良い影響を及ぼす傾向を認めた。本学会認定専門医あるいは本学会認定施設が患者予後に与える影響は明らかにできなかった。【結論】専任・専従医の配置は,ICU在室日数を短縮する。専任・専従医が人工呼吸器の設定や離脱の方針を決定することは患者転帰を改善する。集中ケア認定看護師,臨床工学技士の配置は患者転帰を改善する傾向を示した。