著者
吉川 弘之 小野里 雅彦 KUMAZAWA Masami
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

一般設計学は、多くの産業分野で行なわれている多様な設計に関して、その本質を明らかにし、またその際に共通に成立するモデルを樹立することを目的として、理論・実験の両面より研究する学問である。本研究は、それの理論的測面の展開を目的として行なわれた。本研究においては、まず、従来の一般設計学である位相幾何学を用いた数学的モデルの精緻化を行ない、各定義・定理間の整合性を高めた。さらに概念の位相の構成を考えることによって、知能の発達・学習のモデルをこのモデル上で考察できることが明らかとなった。また、現実の設計を説明するために、メタモデルという概念を導入し、それによって現実の設計過定のモデル化を行うことで、現実の設計過程との対応をとることが可能となった。このことにより、一般設計学の設計過程モデルをCADシステムの構築に際しての脂導原理として用いることができた。以上、本研究の成果を要約すると以下のようである。1.人間の概念を位相空間としてモデル化することが可能である。2.知能の発達,学習を含め、記憶,推論などが、知能の位相空間モデル上で記述可能である。3.概念に関する基本的な性質を公理として設定すると、公理から演繹される諸定理が現実の設計行為をよく説明する。4.位相空間上で記述された設計過程モデルは、そのまま設計を支援する情報処理技術法を生み出すものではないが、システム作成の指導原理として有効であることが確認された。今後の研究課題は、これら理論的な研究による知見を実験的な面からその正当性・有効性を立証することである。