著者
片岡 龍峰 山本 和明 藤原 康徳 塩見 こずえ 國分 亙彦 Ryuho KATAOKA Kazuaki YAMAMOTO Yasunori FUJIWARA Kozue SHIOMI Nobuo KOKUBUN
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科 / 葉山町(神奈川県)
雑誌
総研大文化科学研究 = Sokendai review of cultural and social studies (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.16, pp.17-29, 2020-03

日本最古の天文現象の記録は、『日本書紀』巻二十二、推古二十八年十二月一日(西暦六二〇年十二月三十日)の條に記される「十二月庚寅朔、天有赤気。長一丈餘。形似雉尾」という一節である。「赤気」は、彗星の類と理解され、日本古典文学や歴史学などの研究では悪い兆候を示すもの、といった理解がなされてきた。その一方、地球物理学においては、オーロラと理解され、オーロラの最も早い事例としてこの『日本書紀』が位置づけられてきた経緯がある。今回の考察では、「赤気」だけではなく、文中の「雉尾」という言葉にも着目し、『日本書紀』諸本での記述を踏まえたうえで、扇形をした赤いオーロラが日本などの中緯度で観察されやすく、真夜中より前に見られ、かつ雉の尾に似た形状をし、「長一丈」に該当する角距離十度相当で見えるという最も構造が際立った形態であるということを、雉の生態など、鳥類学の研究も踏まえて明らかにした。文献学的な考察に加え、雉の生態や尾羽の特徴を理解する鳥類学、彗星に関する古天文学の知識も合わせて新たな考察を加えたことによって、『日本書紀』の編纂に当たった人々の記述に対する責任感や知性、私たち日本人のルーツとなった倭の人々の観察眼や感性を伺い知るうえで一定の視点を与えることに寄与しうるものである。The oldest record of an astronomical phenomenon in Japan was recorded in the Nihon-shoki as follows: "On December 30 in 620, a red sign appeared in heaven. The length was more than 1 jo (10 degrees). The shape was similar to a pheasant tail (Suiko-Tennou, 28)". The appearance of a red sign has been recognized as an expression of a bad omen in literature, while it has been interpreted as the northern lights in geophysics. First we examine the description of the pheasant tail in detail. We then introduce the latest scientific findings that the northern lights show a fan-shaped appearance with a red background when appearing over Japan. After showing that the fan-shape is similar to a pheasant tail, also pointing out the low possibility of comets, we conclude that the oldest record of the red sign is consistent with the appearance of the northern lights over Japan. We hope that this examination contributes to increasing awareness of the sensitivity of Japanese people 1400-years-ago who compared a beautiful behavior of birds with a magnificent and rare natural phenomenon.
著者
山元 一晃 浅川 翔子 加藤 林太郎 Kazuaki YAMAMOTO Shoko ASAKAWA Rintaro KATO
出版者
金城学院大学
雑誌
金城学院大学論集. 人文科学編 = Treatises and Studies by the Facalty of Kinjo Gakuin University. Studies in Humanities (ISSN:18800351)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.129-139, 2021-09-30

筆者は,看護師を目指す留学生のためのライティング教材の開発を行った。本稿は,開発に至った背景,開発の過程,その内容,想定される使用方法などについて述べる。まず,開発に至った背景については,看護学生・看護師向けのライティング教材を分析し,留学生の日本語教育にそのまま応用することは難しいことを明らかにした。その後,開発の経緯や内容について述べた。看護師と日本語教師が共同で開発にあたり,看護学科で用いられている課題を分析し,その上で必要なものを選んだ。さらに,実際のテキストを示しながら,本書の特徴を述べた。看護実習の流れにそった内容になっており,大きく「実習前」「実習中」「実習後」に分け,形式に関する説明を加え,電子カルテなど実際に看護実習で情報を得るための資源を入れ,ステップアップできる練習問題を豊富に用意した。最後に,想定される使用法や,今後の課題を述べた。
著者
山元 一晃 浅川 翔子 加藤 林太郎 Kazuaki YAMAMOTO Shoko ASAKAWA Rintaro KATO
出版者
金城学院大学
雑誌
金城学院大学論集. 人文科学編 = Treatises and Studies by the Facalty of Kinjo Gakuin University. Studies in Humanities (ISSN:18800351)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.138-147, 2022-09-30

筆者らが作成した看護留学生向けのライティング教材について,実際に使用した学生にインタビューを実施し,その難易度,使いやすさ,有用性などについて検証を行った。その結果,一定程度留学生が役に立ったと感じていることが分かった。「患者情報の記録」「先生とのメール」は有用性が高かったと感じている一方で,「私の理想の看護師」「施設情報」については,既習だったこと,特に難しくなかったことから,役立ったとは感じていなかったようである。また,「看護展開」などは,実際の実習などで課されたものよりも易しく,難易度を上げてもよいのではないかという指摘があった。さらに,領域別に書くことや,実際の患者は合併症を抱えていることなどの相違点があったようである。テキストで扱われていなかった内容として,変更が生じた場合の修正の仕方,指導者への説明やカンファレンスなど口頭でのやりとり,専門用語などについても含めて欲しいとの要望があった。自習で使えるかについては,意見が分かれ,解説があるため自習も可能という指摘があった一方で,最初は自力ではできなかったなどの指摘もあった。