著者
Son Suyoung 栃原 裕 Lee Joo-Young 村木 里志
出版者
独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

最近、災害現場などで防護服着用は不可欠であるが、防護服着用は着用者に動作性の低下をまねくことが知られている。各種防護服の異なるデザインや重量、着用者の運動能力、労働現場の環境温度を考慮する防護服着用時の動作性標準評価テストが必要と考えられ、防護服着用時の動作性を評価できる標準テスト方法の提案を着想することに至った。本研究では、様々な防護服着用による動作性を検討し、防護服着用時の動作性を評価できる基準値を含む標準評価テスト方法を提案することを目的とした。各種防護服着用時の動作性の検討を行うため、 個人装備着用時の関節可動域、作業及び運動能力、バランス能力などの測定を行った。
著者
栃原 裕 LEE Joo-Young LEE Joo-young
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

鳥インフルエンザなどの感染症対策、アスベストの除去作業等で、防護服の着用の機会が増え、多くの新しい防護服が開発されている。一方では、その防護性能の高さから、作業者は防護服着用時に大きな暑熱ストレスを受けることになる。そこで本研究では、比較的容易で判定精度の高い防護服着用時の暑熱負担評価テスト法を開発し、有効で簡便な生理・心理測定手技を提案することを目的とした。本年度は、安静または運動の2条件、防護服3条件、気温2条件(25、32℃)の組み合わせによる12条件の実験を行い、直腸温、赤外線式鼓膜温、皮膚温、発汗量、心拍数、主観的皮膚濡れ率、温冷感等を測定した。本研究から得られた知見を以下に示す。1)暑熱環境における非蒸散防護服着用時の運動条件では、赤外線式鼓膜温が直腸温の変化によく一致し、心拍数や発汗量などの生理指標との相関も高く、深部体温の測定方法としての妥当性が示された。しかしながら、中立気温条件や軽装条件、安静時および回復時には直腸温の変化に追従せず、測定方法の限界が示された。2)主観申告に基づく主観的皮膚濡れ率は、体温変化および心拍数や発汗量とよく一致し、熱理論式により求めた皮膚濡れ率との相関も高かった。この結果から、主観的皮膚濡れ率の妥当性が示され、フィールドテストにおける利便性、測定、計算の簡便性が示唆された。3)平均皮膚温を算出する際の体幹部皮膚温として、安静時には胸部、腹部、背部による差はなかった。しかし、運動時には体幹部皮膚温の分布が一様でなく、腹部では過小評価、背部では過大評価することが示され、3点の平均値、または1点で代表させる場合には胸部を用いることが推奨された。本研究の成果は、新しい防護服の開発や改良の際の標準評価法として利用でき、近い将来、防護服着用時の暑熱負担評価テスト法に関するISO/JIS規格の原案となりうるもので、その社会的意義は大きい。