著者
祐森 誠司 桑山 岳人 池田 周平 吉田 豊 佐藤 光夫 半澤 恵 門司 恭典 渡邊 忠男 近江 弘明 栗原 良雄 百目鬼 郁男 渡邉 誠喜 Luis MAEZONO Enrique FLORES 伊藤 澄麿
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.49-53, 2002-06-20

本研究は,日本国内におけるラマ属の被毛生産の可能性を検討するうえで基礎的な知見と考えられるラマ属家畜の被毛形態について検討した。ラマの被毛は,日本とペルー国で飼育される動物から採取した。アルパカの被毛は日本で飼育される動物から採取した。グアナコとビクーナの被毛はラ・モリナ農業大学の共同研究者から提供されたものを用いた。メンヨウ(サフォーク種)の被毛は,我々の研究室で飼育されている個体から採取した。伸張率,クリンプ数,太さ,キューティクルの面積と形について肉眼あるいは電子顕微鏡による観察を通じて測定された。ラマ属の被毛の伸張率(1.3-2.1)はメンヨウのもの(3.2)よりも低い値を示したが,逆にラマ属の被毛のクリンプ数(5.4-8.9)はメンヨウのそれ(2.4)よりも多かった。このことは,ラマ属の被毛の柔軟性がメンヨウよりも劣っていることを示唆している。太さに関する結果は,ラマの粗毛が他の動物の普通の毛の2〜3倍太いことを示した。また,ビクーナの被毛の太さは他の動物の普通の毛の1/2倍であった。電子顕微鏡での観察結果から,キューティクルの形は2種類に分類され,1つはラマ,アルパカ,グアナコ,メンヨウのように幅の広いタイプであり,もう1つはビクーナのような長さの長いタイプであった。ビクーナの被毛はキューティクルの面積(47.4-70.0μm^2)が最も小さく,他の日本国内飼育動物のそれはそれぞれ近似した値を示した。