著者
MATIN KHAIRUL 田上 順次 花田 信弘 北迫 勇一
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

新型PC-software(EPC-2000)導入人工口腔装置(AMS:新名称Oral Biofilm Reactor:OBR)の開発を行い、人工biofilmを形成する事に成功した。う蝕原因菌や栄養源を、速度を制御しながら滴下する事により、口腔内に類似した環境を作る事が可能となった。初期う蝕・二次う蝕の発生メカニズムの解明:牛歯・ヒト抜去歯切片をOBRにて人工biofilmを形成し、肉眼所見にてWhite Spot Enamel Lesionを確認した。その後定量的光誘導蛍光装置(QLF)及び走査型電子顕微鏡(SEM)により、表層下脱灰が認められた。さらに分散形X線分析装置(EDS)を用いて元素分析を行い、無機質のピークの減少も確認できた。また、牛歯前歯・ヒト抜去歯に形成した窩洞内にコンポジットレジンを充填した試料を使用し、複数う蝕原因菌を用いて人工biofilmを形成し、二次う蝕を形成した。その後蛍光顕微鏡、SEM、Micro-CT等を用いて観察及び分析を行い境界部の脱灰processの一端が明らかになった。上記方法により、人工初期う蝕・二次う蝕モデルの確立及びその発生メカニズムの解明に成功した。う触・二次う蝕予防を考慮した歯科材料の検討:歯科におけるSelf-surface-cleaningの実現に向け、新規フッ素樹脂化合物(テフロン)応用修復材料及びフッ素オリゴマー含有コーティング材等を使用し、材料学的・細菌学的に研究を行った。その結果、表面性状の影響を加味した第二世代への移行を遂げた。新しいう蝕予防法の検討:Biofilmの主要構成要素であるglucanに焦点を置き、常在菌叢を破壊しないglucan溶解法を検討した。その結果、アルカリ電解水がglucan溶解に有効な事を見出した。また、RT-PCR及び二次元電気泳動等を用い、菌体定量及び菌表層タンパクに変化が認められ、glucan溶解メカニズム解明の一歩と成り得た。さらに上記二次う蝕モデルを用いて、様々な予防法の開発を行っている。