著者
武内 博朗 花田 信弘
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.206-214, 2019 (Released:2019-07-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

歯を喪失すると咀嚼機能が低下する.咀嚼機能が低下した状態では,糖質の摂取量が増加する.一方で低GI食品,タンパク質,抗酸化物質,食物繊維,ビタミン群,ミネラル群などの摂取量が低下する.ブドウ糖負荷の増加およびタンパク質エネルギー低栄養の状態はメタボリック症候群やフレイル,さらには非感染性疾患Non Communicable Diseases(NCDs)の発症リスクを上昇させる. 本稿は,歯科補綴治療による咀嚼機能回復と栄養指導を中心とする保健指導の集中運用が体組成や代謝指標にもたらす健康増進効果について症例を提示し紹介する. 大臼歯欠損者71名を対象に歯科補綴治療介入前後の咀嚼機能値を評価した.また,71名の症例のうち歯科補綴と同時に保健指導を実施した25名について,歯科補綴治療介入前および保健指導90日後に体組成,血圧測定,血液検査を行い,体組成・代謝について数値を比較評価した. 歯科補綴による咀嚼機能向上が71名の全症例で認められた.保健指導を実施した25名の全症例で基礎代謝基準値(骨格筋量),BMI,体脂肪率,内臓脂肪レベル,タンパク質充足率が改善した.HbA1cは保健指導群のうち測定した7例全例で改善した. 咀嚼機能低下者におけるNCDsの発症予防,重症化予防のためには,歯科補綴による咀嚼機能回復と同時に行う保健指導が有効と考えられた.
著者
MATIN KHAIRUL 田上 順次 花田 信弘 北迫 勇一
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

新型PC-software(EPC-2000)導入人工口腔装置(AMS:新名称Oral Biofilm Reactor:OBR)の開発を行い、人工biofilmを形成する事に成功した。う蝕原因菌や栄養源を、速度を制御しながら滴下する事により、口腔内に類似した環境を作る事が可能となった。初期う蝕・二次う蝕の発生メカニズムの解明:牛歯・ヒト抜去歯切片をOBRにて人工biofilmを形成し、肉眼所見にてWhite Spot Enamel Lesionを確認した。その後定量的光誘導蛍光装置(QLF)及び走査型電子顕微鏡(SEM)により、表層下脱灰が認められた。さらに分散形X線分析装置(EDS)を用いて元素分析を行い、無機質のピークの減少も確認できた。また、牛歯前歯・ヒト抜去歯に形成した窩洞内にコンポジットレジンを充填した試料を使用し、複数う蝕原因菌を用いて人工biofilmを形成し、二次う蝕を形成した。その後蛍光顕微鏡、SEM、Micro-CT等を用いて観察及び分析を行い境界部の脱灰processの一端が明らかになった。上記方法により、人工初期う蝕・二次う蝕モデルの確立及びその発生メカニズムの解明に成功した。う触・二次う蝕予防を考慮した歯科材料の検討:歯科におけるSelf-surface-cleaningの実現に向け、新規フッ素樹脂化合物(テフロン)応用修復材料及びフッ素オリゴマー含有コーティング材等を使用し、材料学的・細菌学的に研究を行った。その結果、表面性状の影響を加味した第二世代への移行を遂げた。新しいう蝕予防法の検討:Biofilmの主要構成要素であるglucanに焦点を置き、常在菌叢を破壊しないglucan溶解法を検討した。その結果、アルカリ電解水がglucan溶解に有効な事を見出した。また、RT-PCR及び二次元電気泳動等を用い、菌体定量及び菌表層タンパクに変化が認められ、glucan溶解メカニズム解明の一歩と成り得た。さらに上記二次う蝕モデルを用いて、様々な予防法の開発を行っている。
著者
宮崎 秀夫 花田 信弘 中山 浩太郎 十亀 輝 重岡 利幸 児島 正明 松田 修司 竹原 直道
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会雑誌 (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.1137-1142, 1986

鹿児島県長島高校生(15∿18歳), 181名を対象に, CPITN (WHO)を用いた歯周疾患の疫学調査を行なった.その結果, 長島高校生の9割弱が歯肉出血(Code 1)以上の歯周疾患の症状を呈しており, 歯石沈着(Code 2)以上の所見が認められる者の比率でみると, 北九州の高校生より, 20% (女)∿40%(男)高かった.また, 歯周疾患の処置の必要性に関しては, 長島高校生の約90%が口腔清掃指導を必要としており, 80%以上が除石を必要としていた.しかしながら, 複雑な治療を要する者は1名もいなかった.以上の所見より, 集団歯科保健指導や管理が行なわれやすいこの時期(高校生)までに, 歯周疾患に関する徹底した指導, 教育と, スクリーニングの必要性が示唆された.
著者
西辻 直之 古藤 真実 福澤 洋一 矢吹 義秀 上谷 公之 久保 宏史 吉野 浩和 長井 博昭 中曽根 隆一 矢島 正隆 岡田 彩子 有吉 芽生 曽我部 薫 菊地 朋宏 宮之原 真由 山田 秀則 村田 貴俊 野村 義明 花田 信弘
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.89-93, 2017

<p> (公社)東京都港区芝歯科医師会は,JR新橋駅西口SL広場において,事前の告知や当日の呼びかけに応じた成人男女250名を対象に,「歯周病予防のための新唾液検査事業」を5年間にわたり4回実施した.事業目的は,歯周病のスクリーニング可能な唾液検査の受診を契機に,受診者の歯周病への理解を促し,検診の重要性を啓発することである.</p><p> 各受診者から採取した唾液を用いて生化学検査を行い,結果を受診者に郵送した.また,事後アンケートを実施し,「受診したきっかけは何か」,「唾液検査は簡単か」,「唾液を採取することに対して抵抗があるか」,「次回の検査も受けたいか」,「検査結果票はみやすいか」,「検査結果をみて歯科を受診するか」,「検査結果をみて歯周病について関心が深まったか」の7項目への回答を求めた.</p><p> 事後アンケートで回答者(回収率;年平均22.1%)の9割が選択した項目は,「この検査が簡単だと感じた」,「次回も受けたいと思う」および「検査により歯周病に興味をもった」であった.以上より,唾液検査は歯周病への関心を高めるとともに,受診契機の一要因となることがわかった.</p>
著者
葭原 明弘 清田 義和 片岡 照二郎 花田 信弘 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 = JOURNAL OF DENTAL HEALTH (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.241-248, 2004-07-30
参考文献数
25
被引用文献数
7

日常の楽しみごととして食事をあげる高齢者は多い.本調査では,食欲とQOLの関連をほかの要因を考慮しながら評価することを目的としている.本調査の対象者は70歳の高齢者600人である.QOLを総合的にあらわす指標としてフェイススケールを用いた.生活満足状況について5つの顔の表情を示し,一番実感に近いものを選択してもらった.食欲については質問紙法により情報を得た.さらに,身体的要因,健康行動,社会的要因,口腔内症状について情報を得た.フェイススケールの結果にもとづき,食欲,口腔内症状の合計数およびほかの全身的要因との関連をロジスティック回帰分析により評価した.その際,従属変数をフェイススケールの分布にもとづき2種類のモデル(モデル1,モデル2)を作成した.いずれのモデルにおいても食欲,口腔内症状の合計数,老研式活動能力指標,睡眠時間および性別を独立変数に採用した.その結果,モデル1では,食欲(オッズ比:2.77,p<0.05) ,口腔内症状の合計数オッズ比:1.25,p<.05) ,老研式活動能力指標オッズ比:1.25,D<0.01)が統計学的に有意であった.一方,モデル2では,食欲(オッズ比:3.23,p<0.001),老研式活動能力指標(オッズ比:1.24,D<0.001) ,睡眠時間(オッズ比:1.72,n<0.0l)が統計学的に有意であった.食欲は,モデル1とモデル2において,また,口腔内症状の合計数はモデル1において有意な関連が認められた.この結果は,地域在住高齢者では,食欲とQOLが有意に関連していることを示している.さらに,口腔内症状の改善がQOLの向上には必要であると考えられた.
著者
山田 秀則 花田 信弘 野村 義明 今井 奬
出版者
鶴見大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

Corynebacterium matruchotiiはバイオフィルムの石灰化に重要な役割を果たしている。しかし、C. matruchotiiと歯石沈着の関連における疫学調査や臨床データが少ない。その理由は、C. matruchotiiの簡便な検出方法が存在しないためである。本研究では、C. matruchotiiの簡便な検出方法の確立を目指した。C. matruchotiiの分子疫学調査に利用できる比較的安価で特異的な抗原を抽出した。C. matruchotiiのカルシウム結合タンパク質は20種類存在し、そのタンパク質の多くは酸性タンパクであることが明らかとなった。
著者
泉福 英信 浅野 敏彦 村田 貴俊 花田 信弘
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、ヒト型モノクローナル抗体を利用した新しい口腔バイオフィルム感染症予防方法の確立を行った。ヒト型モノクローナル抗体の作製は、PAc(361-377)ペプチドを利用して行った。このペプチドは、S.mutansの歯表面への付着阻害抗体の認識するB細胞エピトープとT細胞エピトープを有する。実際にこのペプチドがヒトにおいて有効に免疫原として作用するか、唾液のペプチドIgA抗体量とS.mutans量との相関関係を検討した。その結果、抗体価の高い唾液を有するヒトは、S.mutans量も低下していることが明かとなった。またDRB1^*1501やDRB1^*0406などを含む10種類のHLA-DR遺伝子タイプを有する被験者においてその高い唾液抗体誘導が認められた。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をNOD-scidマウスに移植し、このペプチドを接種して、ヒト特異ペプチド抗体を誘導できるか検討を行うと、すべての遺伝子タイプのPBMC移植において、PAc(361-386)ペプチドIgG抗体を誘導できることを明かにした。これらの結果から、PAc(361-386)ペプチドはヒトへの接種によりPAc(361-386)ペプチドIgA抗体やIgG抗体を誘導できる抗原であることが確認できた。よって、この抗原を利用して作製されたヒト型モノクローナル抗体を用いれば、有効な齲蝕予防方法が確立して行くことができる。このPAc(361-377)ペプチドを免疫原として、10種類のモノクローナル抗体を得た。それら抗体のうちKH3,KH5,SH2,SH3は、S.sobrinusとS.mutansのみに反応する事が認められた。これらの抗体SH2,SH3,KH5は、S.mutansの歯表面の付着においてPBSで処理したラットに比べ60%以上の阻害効果が認められた。またこれらのモノクローナル抗体は、S.mutansと唾液成分との結合をBIAcore in vitro実験においても70%以上の阻害することが認められた。今回明かとなったペプチド抗原で誘導されたヒト型モノクローナル抗体をこの3DSのような口腔バイオフィルム除去法を併用していけば、さらに長期間効果を期待できるう蝕予防が実現化していくと考えられる。
著者
栗原 英見 佐藤 勉 鴨井 久一 石川 烈 花田 信弘 伊藤 公一 村山 洋二 岩山 幸雄 丹羽 源男
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

唾液を用いた歯周病検査の開発について多角的に検討した.侵襲性歯周炎患者においてPorphyromonas gingivalis(P.g)に対するfgA抗体産生がみられ,唾液中の特異的IgA抗体測定によってP.g感染を検出できる可能性を示した.PCR(polymerase chain reaction)法での唾液を使った歯周病原性細胞検査が可能であることを明らかにした.血清とActinobacillus actinomycelemcomltans(A.a)の外膜タンパク(Omp)が強く反応した歯周病患者の唾液を使って,A.aのOmpを抗原としたfgAレベルでのA.a感染の同定を行う有効な手段を示した.Streptococcus-anginasus(S.a)をPCR法で特異的に検出する技術を確立し,上皮組織の抗菌ペプチド(hBD-2)とS.aの関連によって,S.aが病原性を示す際に必要な分子メカニズムの一端を解明した.歯周治療によりインスリン抵抗性や血糖コントロールを改善した糖尿病患者モデルを使うことで,唾液を用いた歯周病検査の開発に利用できることを明らかにした.糖尿病患者の唾液を検体とした生化学検査によって歯周疾患群と歯周疾患なし群とで有意差をは認めず,糖尿病と歯周疾患の関連性を明らかにすることはできなかった.唾液中の好中球のエラスターゼ活性や活性酸素産性能は歯周疾患の病態やリスク判定に有用である可能性を明らかにした.唾液中のMMP-8量の測定から,その活性型の値によって歯周疾患活動性の高い患者を特定できることを明らかにした.健常者に比べ歯周病患者では唾液中の酸化ストレス産物(8-OhdG)が有意に高く,歯周病診断の検査項目として有用なことを明らかにした.歯槽骨代謝マーカーとして有用性の示唆されている硫酸化グリコサミノグリカン(S-GAG)について,唾液での測定を行ったが測定できなかった.
著者
花田 信弘
出版者
福岡歯科大学学会
雑誌
福岡歯科大学学会雑誌 (ISSN:03850064)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.117-121, 2001-12-30

The oral cavity plays an important role in performing all functions awkward use involving communication and mastication. Therefore, the deterioration of oral functions caused by dental caries and periodontal diseases may have harmful influences on general health. Previous reports have revealed that dental caries is an infectious disease caused by domestic infection with Streptococcus mutans. Clinical trials conducted in northern Europe have shown that prevention of S. mutans infection from mother to child is possible. One British research group, which has been involved in the development of a vaccine for dental caries, succeeded in synthesizing an IgG and secretary IgA antibodies against S. mutans protein antigen I / II from tobacco. They then reported that it is possible to eliminate S. mutans from the oral cavity using these antibodies. Recently, we found a method of eliminating S. mutans without any antibodies. A dental drug delivery system (3DS) with dental trays and chlorhexidin gel was proposed to eliminate S. mutans, and similar methods are spreading rapidly in Japanese dental clinics. 3DS will become a powerful tool to prevent the transmission of oral pathogens. 3DS will contribute to not only dental caries but also to general health through pathogenic bacterial control.