著者
前田 芳實 MINVIELLE Francis 岡本 新 橋口 勉
出版者
日本家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.83-95, 1999
被引用文献数
5

本研究では,INRA(フランス国立農業研究所)で実施された日本ウズラの産卵能力に対する選抜実験(個体選抜法と相反反復選抜法)において,第8世代と第13世代での遺伝子構成と遺伝変異の変化について検討を行った。遺伝的変異性はJouy系統とTours系統に属する6lines(line 1, 2, 3, 4, CおよびD)に対して10蛋白質座位により分析された。変異の量(P<sub>poly</sub>)は世代と共に減少し,第1世代,第8世代および第13世代のP<sub>poly</sub>はJouy系統でそれぞれ0.5-0.6, 0.4-0.5および0.3-0.4,また,Tours系統で0.7, 0.6-0.7および0.5-0.7であった。6系統間のG<sub>ST</sub>は第1,第8および第13世代で0.019,0.076および0.156と計算された。G<sub>ST</sub>の世代に伴う増加はline間の系統分化が進んでいることを示唆している。G<sub>ST</sub>の種々の比較から,遺伝的分化が徐々に進行し,この系統分化の一部には選抜システムの違いが関与していることが示唆された。主成分分析の結果,第8世代では,個体選抜群のline 1とline 2, Jouy系統のline 3とlineC,およびTours系統のline 4とline Dの3群に分けられ,また,第13世代では,対照群(line Cとline D),個体選抜群(line 1とline 2)および相反反復選抜群(line3とline 4)に分けられた。遺伝的距離の結果から,本研究での13世代にわたる選抜はINRAの系統間の遺伝的分散を大きくし,それには選抜様式の効果と遺伝的浮動が関与していることが示唆された。