著者
佐藤 卓 Moreshet Samuel 高垣 美智子 篠原 温 伊東 正
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 = Japanese journal of tropical agriculture (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.61-69, 2003-06-01

地下水の過剰利用や地球環境の変化により、旱害は農業生産において深刻な問題となりつつあることから,乾燥条件下における植物生理の理解を深め、乾燥ストレス耐性を付与した品種育成を目的とした研究が急務となっている.Capsicum annuum L.の中で,タイチリとニューエースは環境ストレスに対して対照的な反応を示す品種として知られていることから,この2品種を用いて乾燥ストレスに対する生理的反応を調査した.乾燥ストレス処理に際し,ヒートパルス法によるサップフロー,気孔コンダクタンス,葉の水ポテンシャルの測定を行った.タイチリは乾燥に対してより高い感受性を示し,水分供給量が限られている場合に蒸散による余分な水分損失を押さえていると思われた.また,潅水を再開した後の,サップフロー,気孔コンダクタンス、葉の水ポテンシャルの回復はタイチリの方がニューエースよりも早かった.さらに,一度乾燥ストレス処理を受けた植物は二度目のストレス処理の際に,以前に乾燥ストレスを受けていない植物よりも強い乾燥ストレス耐性を示した.品種間における形態,生理的な違い,つまり,葉や根の構造、及び、乾燥に対する水ポテンシャル調整機能の違いが、乾燥ストレスに対する反応の違いをもたらしたと考えられた.