著者
軸屋 和明 立花 博之 平松 修 望月 精一 松本 健志 後藤 真己 OGASAWARA Yasuo KAJIYA Fumihiko
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

心筋内の血流分布は微小循環レベルで著しい空間的不均一性を示すことが知られ、冠微小循環障害発症メカニズムの関連因子として注目されている。本研究では、放射性分子血流トレーサ(トリチウム標識のデスメチルイミプラミン:^3H-DMI)を用い、従来にない高分解能(100サンプル/mm^2、最小サンプルサイズ0.lmm)で麻酔開胸家兎の心内膜側心筋と心外膜側心筋の血流分布の全体的および局所的不均一性を評価した。その結果、心内膜側では心外膜側に比して血流の全体的不均一性(global heterogeneity)は大きかったが、逆に近接サンプル間の血流相関性すなわち局所的な血流の一様性(local homogeneity)が高かった。また、フラクタル解析によって、血流分布のランダム性は心内膜側で小さく、クラスター様の分布パターンであることが明らかになった。以上より、心内膜側心筋は不均一な冠血管構造と心筋メカニカルストレスの影響下にあるために全体的な血流分布のバラツキは大きいが、高い心筋酸素需要に応じて局所血流調節が強く働き、血流分布を局所的に一様化していることが示された。また、サンプルサイズを変数とした近接サンプル間の血流相関値にあらわれる増加→プラトー関係から、血流調節ユニットが心外膜・内膜側ともに約400μmであった。この大きさは臨床的に知られる散在性の心筋虚血の個々の虚血領域の大きさに対応している。