著者
藤原 芳朗
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
川崎医療短期大学紀要 (ISSN:02873028)
巻号頁・発行日
no.31, pp.51-55, 2011

我が国の経済が右肩上がりに成長を続けるにつれて,死の在り方や死の迎え方についても大きく変化してきた.病死や老衰による死が大半であったが,今や交通事故死,凶悪事件・事件による死,無差別殺人,安楽死,尊厳死,脳死,過労死,死刑死,人工中絶死等と死の在り方が広がるとともに事件や事故での死が日常化する方向へと変化してきた.一方で,延命措置の手控えや医療費の無駄を理由とする尊厳死の容認化傾向,PPK運動などは,速やかな死を促進する要因となり,要介護の状態が重くなり生活の大半を他に依存しなければならない状態になる,あるいは難病等で病状が進行することで自分らしさが消え,行動が制限され自由が失われることは,死を自己決定しても差し支えない風潮へと推し進めることにつながっている.また,無駄,無益,医療費の公平な使用ということから延命措置の手控えや,やりすぎ医療の見直しを理由にどれだけ速やかに人生を全うさせるかの方向へと転換してきている.しかし,生と死は表裏一体であり,死は一瞬の出来事ではなく長い生のプロセスの後に存在する.そこで,私たちは生かされて生きているという認識を持ち,死を受容することにより,逆に生に目を向け,残された時間をいかに有為なものにするかを考えながら余命を積極的に生き抜くことが生の意味を問うということにつながると思惟する.
著者
土田 耕司
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
川崎医療短期大学紀要 (ISSN:02873028)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.41-45, 2010
被引用文献数
1

介護現場における人材不足の原因には,介護労働の現場が抱える低賃金,労働環境の悪さ,仕事のやりがいの低さ,介護労働のイメージの悪さ等の要因が挙げられる.もう一方では,介護サービスの利用者の急激な増加という社会構造の変化に介護現場への労働者の供給が追い付けていないという側面がある.この二つの側面が複雑に入り組んで,介護の人材不足を引き起こしている.しかし,政府はこれらに対する対策を図るよりも,介護人材不足を景気低迷からくる雇用状況の悪化への対応策に利用し,介護現場と介護の専門資格取得を失業者対策として位置付けた施策が行われている.国が介護現場を雇用のセーフティーネットとして位置付けることは,介護労働者イコール仕事のない人たちの就労先というようなマイナスイメージが植え付けられ,より介護人材不足の問題を複雑にし,悪化させる危険性を含んでいることを明らかにした.
著者
村中 明 林 明子 天野 貴司 荒尾 信一 成廣 直正 樋口 真樹子 西村 明久 今城 吉成
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
川崎医療短期大学紀要 (ISSN:02873028)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.81-86, 2007

蛍光ガラス線量計をX線診断領域の線量測定に使用することを目的に,その基本特性について検討した.測定値はプレヒートを繰り返し行っても影響を受けず,線量を監視しながらの長期間の積算線量測定が可能であった.自由空間中でガラス素子を直接X線で照射した場合には,素子の線量読取り方向によって約5%の比較的大きな測定値の変動が認められ,ガラス素子内部の線量勾配と蛍光読取り機構のズレが測定値変動の要因の一つと考えられた.繰り返し読取り誤差,読取り方向による誤差,素子の感度バラツキを含んだ測定値の変動は,10mGy程度の線量では変動係数3%以下と良好であった.診断用X線のエネルギー範囲ではガラス素子の感度の変化は小さく,エネルギー補償フイルタ無の素子でも線量評価が可能であった.これらの結果から,蛍光ガラス線量計は患者被ばく線量や外部放射線量の測定評価に大変有用であると考えられた.
著者
藤原 芳朗
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
川崎医療短期大学紀要 (ISSN:02873028)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.27-32, 2012

現代社会は,可能な限り死を遠ざけ,疎んじ,関わりを少なくしていこうとする風潮が蔓延している.しかし,死は自身が体験できない以上近親者の死等からしか,その意味や大切さは学ぶことができない.私たちは死を意識することで翻って今の生を見つめ,残された生の時間をよく生きていこうと気づくのであるが,死を直視しないことでこのことから疎外されている.いまこそ,死の尊厳性に気づき,死から目を逸らさず生命の有限性を自覚し,死を意識しながら今を生きる意味を感じ取ることができる方法を考えねばならない.
著者
入江 慶太 尾崎 公彦 青井 則子 秋政 邦江
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
川崎医療短期大学紀要 (ISSN:02873028)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.33-38, 2012

本研究の目的は,総合表現(オペレッタ)において,自らの作品発表を客観的に振り返るための自己評価チェック項目を選定することである. 過去3年間の自己評価チェックシートの分析の結果,学生は第三者にどのように見えているかという「観る側の視点」まで十分に到達できずに,自らのイメージを具体的にどう表現するかという段階(創る側の視点)に留まっていること,教員提示のカテゴリが「創る側の視点」に偏っていることが明らかとなり,両者を改善する必要性が示唆された. 以上のことを踏まえ,4カテゴリ12チェック項目「コミュニケーション(双方向の話し合い・情報共有・他者理解)」「備品・施設の使用(正しい使用・決まりごとの順守・利用時の他者への配慮)」「制作上の工夫(効果的な指導の取り入れ・テーマの表現・表現分野の工夫)」「省察(既有知識の活用・客観的視点の保持・自己表現)」を自己評価チェック項目として選定した.
著者
伊藤 智里 青井 則子 秋政 邦江 尾崎 公彦
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
川崎医療短期大学紀要 (ISSN:02873028)
巻号頁・発行日
no.30, pp.77-82, 2010

本研究は,オペレッタ授業を通して学生同士が学びと気づきを共有し,客観的に自らの作品発表を顧みる方法を模索することを目的とし,PPPチェックリストの様式を採用した自己評価シートを作成し,その内容について分析・考察した.自己評価するためのチェック項目を自分で作成することにより,学生が授業において感じていた思いや関心を浮き彫りにすることができた.また,教員がチェック項目を作成するためのカテゴリを提示したことで,学生は,授業の目的とねらい,達成目標を意識して確認することができた.他人に表現して観せる為には,創る側と観る側の2つの視点が必要であるが,観る視点を意識した指導をさらに強化することが今後の課題である.
著者
重松 孝治
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
川崎医療短期大学紀要 = Bulletin of Kawasaki College of Allied Health Professions (ISSN:02873028)
巻号頁・発行日
no.34, pp.47-51, 2014

本研究は,保育園への継続的な巡回相談を実施している自治体での実践について,その内容を報告するものである.本研究では巡回相談を,専門性をもつ者が援助対象に対して,問題状況とその援助の在り方について検討しあうプロセスであるコンサルテーションとしてとらえて検討を行っている.本研究での事例では,専門家への相談内容が各児童の保育上の相談に加え,各園の現状に応じた独自の相談や助言の要請が行われるようになってきている.そのため本研究での実践においては,従来の巡回相談における,特定の事例に対する問題解決型のコンサルテーション(児童への保育上の相談)に加え,研修型のコンサルテーション(保育者に対する研修の提供)やシステム介入型のコンサルテーション(園全体としての取り組みに対する助言や相談)を複合させながら進めてきたものである.こうしたことを実現するためには,各保育園側の知識や技術の積み重ね,専門家と保育園とが対等に話し合う関係の構築などが必要であると考えられる.今後もこうした実践を蓄積しながら,保育園を支えるためのより有用な援助が実施されるための検証が求められる.
著者
友光 達志 三村 浩朗 北山 彰 原内 一 荒尾 信一 天野 貴司 村中 明
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
川崎医療短期大学紀要 (ISSN:02873028)
巻号頁・発行日
no.31, pp.45-50, 2011

Microsoft Excelを用いて2次元高速フーリエ変換を行い,空間周波数領域で画像処理する方法の構築を目的とした.検討には,処理対象画像として胸部骨シンチグラム像を,解析アプリケーションソフトにはMicrosoft Excel 2007とImage Jをそれぞれ用いた.なお,Microsoft Excelでの高速フーリエ変換は,処理時間を短縮するためマクロを構築した.その結果,Microsoft Excelでの処理画像は,核医学のデータ処理専用装置のそれとの間に殆ど差が認められなかった.これにより,我々が構築したMicrosoft Excelを用いた画像処理法は,十分に使用可能なことが証明された.
著者
平田 貴子
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
川崎医療短期大学紀要 (ISSN:02873028)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.47-51, 2007

現在,共働き家庭や働く女性,母子・父子家庭の増加,地域環境の変化,学校週五日制の導入などに件い,学童保育の需要が高まっている.それは,帰宅途中の子どもの誘拐や殺傷事件が報じられ,放課後の子どもの生活が安全で且つ安心な場にとの要求,また,学校が競争的な環境が強まっているがゆえに,学童保育を子どもの人間的な発達を求める機会と場として望む親も増え,質の高い保育ニーズが求められている.しかし,1997年6月に学童保育が「放課後児童健全育成事業]として法制化されかにもかかわらず,具体的な施設の最低基準等が明記されず,また,学童保育指導員の資格や専門性が不明確である.そこで,学童保育の課題を明らかにするにあたって,本校では,わが国における学童保育の歴史を整理した.
著者
松本 健志 小笠原 康夫 片岡 則之 後藤 真己 梶谷 文彦 MOCHIZUKI Seiichi MATSUMOTO Takeshi TACHIBANA Hiroyuki
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

【目的】糖尿病に認められる血液レオロジーの変化は微小血管分岐部における血流分配にも影響し,局所的に心筋酸素需要-供給バランスを悪化させ,糖尿病と高率に合併する冠微小循環障害の原因になり得ると考えられる.本研究では血液レオロジー変化がもたらす心筋血流異常について基礎的検討を行うために,血液,タイロード溶液,および人工赤血球+血液による摘出潅流心モデルを対象に,冠微小循環単位レベル(最小の細動脈が潅流支配するサブミリメートルサイズの心筋微小領域)で心筋潅流分布評価を行った.【方法】血液,NRC+血液潅流では交叉潅流モデルを用いて潅流液を酸素化し,タイロード溶液については酸素バブリングにて心筋潅流を行った.人工赤血球にはテルモ社製Neo Red Cell(NRC,粒子径=200nm)を利用した.各潅流液での潅流中に血流マーカーであるHDMI(2μCi)を心筋内ボーラス投与し,心停止後,心表面に平行に心筋スライスを作製し(10μm厚,28枚/心筋),デジタルラジオグラフィによってスライス内のHDMI分布を測定した(空間分解能100μm).潅流分布の評価には,局所血流の不均一性の指標である変動係数(CV[%]=局所HDMI密度の標準偏差/HDMI密度の平均)を用いた.【結果及び考察】潅流量,左室発生圧は,NRC+血液潅流心では5.4±0.4ml/min/g,109±6mmHg,血液潅流心では2.8±0.1ml/min/g,108±15mmHg,タイロード潅流心では13.6±2.7ml/min/g,107±18mmHgであった.なお,NRC潅流ではヘマトクリット,リポソームの体積率は各々20±1,9±2%であった.局所心筋潅流のバラツキCVはタイロード溶液潅流心で最も低く,次いでNRC+血液潅流心,血液潅流心で最も大きかった.NRCは赤血球径の1/40であることからNRC+血液の粘性は血液に比べ低く,その結果,潅流量は増加し,さらに潅流不均一性の低下が認められた.加えてNRC添加により酸素供給不均一化の原因となる微小血管分岐でのプラズマスキミングも低減すると考えられ,NRC代謝改善効果に寄与するものと考えられた.
著者
軸屋 和明 立花 博之 平松 修 望月 精一 松本 健志 後藤 真己 OGASAWARA Yasuo KAJIYA Fumihiko
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

心筋内の血流分布は微小循環レベルで著しい空間的不均一性を示すことが知られ、冠微小循環障害発症メカニズムの関連因子として注目されている。本研究では、放射性分子血流トレーサ(トリチウム標識のデスメチルイミプラミン:^3H-DMI)を用い、従来にない高分解能(100サンプル/mm^2、最小サンプルサイズ0.lmm)で麻酔開胸家兎の心内膜側心筋と心外膜側心筋の血流分布の全体的および局所的不均一性を評価した。その結果、心内膜側では心外膜側に比して血流の全体的不均一性(global heterogeneity)は大きかったが、逆に近接サンプル間の血流相関性すなわち局所的な血流の一様性(local homogeneity)が高かった。また、フラクタル解析によって、血流分布のランダム性は心内膜側で小さく、クラスター様の分布パターンであることが明らかになった。以上より、心内膜側心筋は不均一な冠血管構造と心筋メカニカルストレスの影響下にあるために全体的な血流分布のバラツキは大きいが、高い心筋酸素需要に応じて局所血流調節が強く働き、血流分布を局所的に一様化していることが示された。また、サンプルサイズを変数とした近接サンプル間の血流相関値にあらわれる増加→プラトー関係から、血流調節ユニットが心外膜・内膜側ともに約400μmであった。この大きさは臨床的に知られる散在性の心筋虚血の個々の虚血領域の大きさに対応している。
著者
名木田 恵理子 田中 伸代 板谷 道信 小林 伸行 WATERBURY David H. 小林 香苗
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

川崎学園内の3大学においてESP(English for Special Purposes)の考え方に基づいて「医学用語(英語)」と「医療英文」のe-learning用教材を自主制作し、学園内サーバを利用してイントラネットで運用した。「医学用語(英語)」コースは、2002年の運用開始から2007年現在まで933名の学生が利用している。「医療英文」コースは、公開から2年を経て114名の利用があった。これらの実践において経年的に集めた学習データの分析から、さらに効果的な運用方法を考案、試行している。主なLMS(学習管理システム)はInternet Navigwareである。「医学用語(英語)」コースについては授業に導入してブレンディッド・ラーニングとした。講義のみの授業形態のときに比べ、学習到達度の向上は明らかであった。また実践していく過程で、意識調査、医学用語の基礎知識テスト、コンピュタリテラシ測定、到達度テストなどを実施し、教材改善に役立てると同時に、e-learning導入においてのデータとして蓄積している。これらの分析結果から学習者特性を考慮に入れて、新たにLMSとしてMoodleを利用したe-learningを構築し、協調学習も導入した。当該科目におけるe-learningの可能性はより広がっている。「医療英文」コースはセルフラーニングとして提供した。「基本単語」、「文法20」、「長文読解」をESPの観点から整えた。音声付教材の「基本単語」は医療に特化しているため、他の語彙学習サイトとリンクさせることによって充実を図った。「文法20」、「長文読解」も素材となる英文はすべて医療系であり、主に4年制大学への編入学を目指す短大学生に利用された。
著者
片山 英雄 林 喜美子
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

研究の目的看護婦養成においてロールプレイは患者の心情の共感的受容という「理念」を「行動的に理解」させることができる優れた教授法であると一般に言われている.これを終末期老人患者の援助場面へ適用し,その効果を実証することを目的とした.研究の実施と結果1.臨床実習で学生が実際に体験した,終末期患者の援助の事例を収集した.学生の報告の中より終末期肝臓癌患者の援助に苦心した事例を選定した.これをもとにロールプレイの紙上シミュレーションの設計を試みた.その要点は,もし終末期の患者から「もうすぐ死ぬのでは?」と話しかけられたら,担当看護婦としてどう答えるか考えて記述させるものである.そして,学生の回答を共感的理解受容を基準として4段階に評価するように計画した.2.終末期老人患者の援助場面のロールプレイを,学生の実際に上演させた.その前後に紙上シミュレーションを実施して効果の確認をした.その結果,著しい向上が確認できた.すなわち,上演前でが「そんな弱気を言ってはいけませんよ」と否定したり,「元気を出して頑張りましょう」と励ましたりするなどの応答が中心であったが,上演後では「もうダメだと感じられているのですね.本当に大変ですね」など理解・受容を示す者がほとどになり学生の意識の変化が確認できた.3.これらの研究成果は今後の学生指導にも活用するとともに,第3回国際保健医療行動科学会会議,第9回日本健康心理学会などで発表する予定である.
著者
名木田 恵理子 板谷 道信 田中 伸代 小林 伸行 重田 崇之
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、医療関係のESP(EnglishforSpecialPurposes)教育として、「医学用語(英語)」と「医療英文読解」において、eラーニングに協調学習をブレンドした授業モデルを設計・実践し、その教育効果を検証することである。対象者の前提条件やモチベーションに応じて、知識獲得型プログラム学習のためのInternetNavigwareとインタラクションに適したMoodleの、2つの学習管理システムを用いた。その結果、協調学習は、どちらの学習管理システムを使っても導入可能であり、学習者意識にプラスの効果をもたらすことや前提条件、学習者特性に対する配慮が有益であることなどがわかった。