著者
太田 伸広 OTA Nobuhiro
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.33-59, 2011-03-30

魔女はお年寄りで、ほとんどが森の中の小さな家に住んでいる。魔女の身分や職業、暮らしぶりはほとんどわからない。魔女が真珠や宝石、金銀などの宝を持っている場合は5例で少ない。魔女の魔女たるゆえんはやはり魔法を使うということである。しかし、その目的、使用の相手はほとんどが不明である。魔法の解き方も様々で一定しない。ところが、魔法という武器を持ちながら、魔女が相手に打ち勝つために魔法を用いることはない。それどころか、意外な脆さを見せ、没落する。魔女は殺人など数々の悪事を働く。そのせいか、悲惨な末路を迎える魔女が多い。魔女は山姥や鬼婆と違い、人を食わない。またグリム童話の魔女は、魔女裁判に出てくる「舞踏」、「集会」、「淫行」、箒での飛行、穀物や家畜への危害とも無縁である。さらにグリム童話の魔女は、神学の魔女規定とは違い、悪魔と結託することもない。