著者
山本 哲朗 方 青 土屋 卓也 陳 小君 小柳 義夫 QING Fang CHEN Xiaojun
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は,当初偏微分方程式解法の主力をなすGMRESとSOR解法を中心としてその数学的基礎付けを与えることを目指したが,以前から研究を進めてきた線形・非線形SOR解法の理解が一段と進み,最近になってかなり満足すべき成果が与えられた.この解法について得られた結果の大要は次の通りである.1. 非対称行列を係数とする線形方程式に対する収束定理としてOstrowski-Reichの定理,Householder-Johnの定理,Newmanの定理,Ortega-Plemmonsの定理等が知られているが,これらはすべてSteinの定理から導くことができることを明らかにした.これにより,従来複雑であったOstrowski-Riechの定理の証明に見通しの貞い別証明を与えることができた.近く取りまとめてどこかに発表したいと考えている。2. 非線形SOR解法の収束定理としてはBrewster-Kannanの結果が知られているが,それは反復が収束するパラメータ{ω_k},0<ω_k<2の列が存在することを主張するにすぎず,ω_kの具体的な選び方には触れていない.我々は,偏微分方程式の離散化と関連した定理としてOstrowski-Riechの定理の一般化に成功した.この定理は大域収束性を保証するが,SSOR,USSOR,ad HocSOR等にも適用可能なものである.また,この手法はD-K法のSOR型加速にも使える.さらに,近年滑らかでない方程式への関心が高まっており,この分野で多くの業績をあげている陳小君(島根大学)を研究分担者として追加し,Uzawa法と平滑化Newton法の数理についても研究した.Uzawa法は一種のGauss-Seidel的反復であるが,その数理について現在見通しの良いまとまった解説はない.本研究で得られた成果をもとに引き続き研究を行い,見通しの良い理論構築を目指し,今後どこかに発表することを考えたい.