著者
黒崎 龍悟 Ryugo Kurosaki
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.271-313, 2014-11-28

自然植生が大きく後退したアフリカ農村における植林の普及は重要な現代的課題である。アフリカ農村での植林の実態については,人々の植林する動機に焦点を当てた研究が蓄積されてきた。しかし,植林技術が地域社会でどのように受容され継承されてきたかについての詳細な研究はほとんどない。本論文では,植民地期から植林の歴史をもつタンザニア南部の農村を対象にして,植林のような多年にわたる取り組みを必要とする外来技術が,地域社会にどのように根づいていくのかについて考察することを目的とした。同村ではイギリス委任統治時代に植林技術が持ち込まれ,村人は徐々に植林を受容していき,1950年代頃から積極的に植林を始める村人が現れ,2000 年以降には植林に取り組む人数が目に見えて増加していた。本論文では,関連政策や開発プロジェクトなどの動向を考慮しつつ,個々人の植林行動を長期的に追うことで,村人がどのような動機で,またどのような条件の下で植林を試み/繰り返しているのかを明らかにする。そして,植林技術の伝わる複数の経路について着目し,植林技術が地域社会内で広がり,世代を越えて継承されていく様子を動態的に把握する。