著者
妹尾 麻美 Senoo Asami セノオ アサミ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.37, pp.17-33, 2016-03-31

新規大卒就職活動において「同時期」に「一斉」に活動を行うことは、個々の学生の活動にどのような影響をもたらすのだろうか。この点を明らかにするため、本稿では、就職活動を行う大学生がどのように他の就職活動学生を認識しているのか、就職活動過程で経時的に行った聞き取り調査のデータから検討する。1990年代後半以降、就職活動は早期化・長期化した。また、早期化・長期化する就職活動が大学生のQOLを著しく阻害するとも指摘されている。しかし、先行研究はもっぱら活動量と結果の関連および採用スケジュールに焦点をあててきたため、学生間の競争には注意を払ってこなかった。そこで、就職活動過程で経時的に聞き取り調査を実施し、収集した大学生8名のデータを用いて、大学生が他の就職活動学生をどのように認識しているのかを分析する。その結果、大学生は、常に他者と比較し、自らの活動量や進捗状況を把握していることが明らかになった。このような他者との比較が、彼らを就職活動へと駆り立てている。さらに、大学生は「内定取得は活動量が要因となる」と認識し、他者や自身を評価していた。早期に内定が得られず就職活動を継続する場合、彼らは、結果への「納得」を評価基準とし、他者と比べていた。以上より、就職活動において、大学生は他の就職活動学生と常に比較し、互いに評価を下し/下されるものとなることを指摘した。