著者
桜井 宗信 SHAKYA Sudan
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

以下を研究代表者(桜井)の指導・助言のもと,研究分担者(Shakya)が実施した。1、「法界語自在曼荼羅」と関連する福徳財宝の女神ヴァスダーラー(Vasudhara)は仏教のみならずヒンドゥー教及びジャイナ教でも崇敬を集める凡インド亜大陸的女神である。一方大地の女神たるヴァスンダラー(Vasundhara)も存在し、両尊の混同が縷々認められる。文献上,両尊が異なった起源と役割を有することをその語源的な解釈も含めて明らかにして,「VasundharaとVasudhara」という論題で『印度学仏教学』第59-2号に寄稿した。また、梵・蔵・漢の資料と共にネワール語にも存在するヴァスダーラーの陀羅尼、成就法などの文献に関しては「ヴァスダーラー女尊の関連文献について」と題して『密教学研究』第43号に掲載した。2、Namasamgiti第12偈所説12母音は本タントラを理解する知る上で重要である。そこで同タントラの諸註釈と共に,ネパールカトマンドゥ盆地の起源と深い関わりを持つ典籍Svayambhupuranaの読解を通じて、それら12母音の意義を明らかにし,成果を国際チベット学会(IATS)で発表した(内容は近刊proceedingsに収載)。3、Durgatiparisodhanatantra第一章のチベット語訳のテクスト校訂および電子ファイル化を行った。その成果は広く研究者の利用に供するべく検索可能な形式で、研究雑誌等において公表する予定である。4、寄稿依頼に応じて,ネパール特にカトマンドゥ盆地に広く伝わっている食人鬼「グルマーパー」の伝説を『世界神話辞典』(近刊)において紹介した。
著者
Shakya Sudan
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1176-1180, 2006

Ma&ntilde;jusrikirti 著 <i>Aryama&ntilde;jusrinamasamgititika</i> (Tohoku 2534=<i>Tika</i>) は<i>Namasamgiti</i> (<i>NS</i>) を瑜伽タントラの立場から解説した最大の註釈書である. <i>NS</i>の第78偈に「法螺貝(dharmasankha)」という語がある. Ma&ntilde;jusrikirti はその語を説明するために,「法螺貝の三摩地 (<i>Tika</i>, 213a<sup>4</sup>-214a<sup>1</sup>=Dh-samadhi)」という「観法」を紹介している. それは以下の八項目に分けられる.<br>[1] 水輪の観想; Mam字所変の文殊を観想及び我慢 [2] Kham字所変の螺貝の観想 [3] マンダラを描く方法 [4] 供養 [5] 無量光仏としての我慢 [6] 収斂 [7] 拡散 [8] 観法の功徳<br>以上を検討した結果, 以下の二点に纏められる.<br>(1) 螺貝と音声を発生する器官である喉との類似性から, Ma&ntilde;jusrikirti が音声の発生の構造を Dh-samadhi の中で解釈していると推定される.<br>(2) <i>Tika</i> で「観法」として説かれている Dh-samadhi と殆ど同内容が, <i>Sadhanamala</i> (<i>SM</i>) に <i>Dh-sadhana</i>(<i>SM</i> No. 81) として収録されていることが判明した. この <i>Dh-sadhana</i> のチベット語訳 (Tohoku 3474) は, Grags pa rgyal mtshan 訳 <sup>*</sup> <i>sadhanasagara</i> のみに収録されており, 梵本・チベット語訳ともに著者名が伝えられていない. しかし, 内容上の類似及び <sup>*</sup> <i>Sadhanasagara</i> の翻訳年代から見て, <sup>*</sup> <i>Sadhanasagara</i> 編纂の時点で, <i>Tika</i> から Dh-samadhi の部分だけを抜き出し独立した儀軌として扱おうとする仕方があった可能性が強い.
著者
Shakya Sudan
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1176-1180, 2006-03-25

Manjusrikirti著Aryamanjusrinamasamgititika (Tohoku2534=Tika)はNamasamgiti (NS)を瑜伽タントラの立場から解説した最大の註釈書である.NSの第78偈に「法螺貝(dharmasankha)」という語がある.Manjusrikirtiはその語を説明するために,「法螺貝の三摩地(Tika, 213a^4-214a^1=Dh-samadhi)」という「観法」を紹介している.それは以下の八項目に分けられる.[1]水輪の観想;Mam字所変の文殊を観想及び我慢[2] Kham字所変の螺貝の観想[3]マンダラを描く方法[4]供養[5]無量光仏としての我慢[6]収斂[7]拡散[8]観法の功徳 以上を検討した結果,以下の二点に纏められる.(1)螺貝と音声を発生する器官である喉との類似性から,Manjusrikirtiが音声の発生の構造をDh-samadhiの中で解釈していると推定される.(2) Tikaで「観法」として説かれているDh-samadhiと殆ど同内容が,Sadhanamala (SM)にDh-sadhana (SM No.81)として収録されていることが判明した.このDh-sadhanaのチベット語訳(Tohoku3474)は,Grags pa rgyal mtshan訳 Sadhanasagaraのみに収録されており,梵本・チベット語訳ともに著者名が伝えられていない.しかし,内容上の類似及びSadhanasagaraの翻訳年代から見て,Sadhanasagara編纂の時点で,TikaからDh-samadhiの部分だけを抜き出し独立した儀軌として扱おうとする仕方があった可能性が強い.