著者
金戸 進 Susumu Kaneto
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.285-290, 1997-03

南極域における気候変動に関する総合研究(ACR)期間の最終年である1991年は, 6月にフィリピンのピナツボ火山が, 8月にはチリのハドソン火山の噴火がおき, 大量の噴出物が成層圏にまで到達して気候システムは大きな影響を受けた。昭和基地で行われた観測結果を全球などの観測結果と比較して, この影響がどのようなものであったかを見た。噴煙の直接的な影響を受ける混濁度観測や日射観測では1991年末から影響が見られた。しかし, 気温やオゾン全量など大循環の結果のような間接的な要素では, 影響がはっきりしなかったり(成層圏気温), 影響と思われる偏差が見られたものの発現時期に全球とのズレが考えられるもの(地上気温やオゾン全量)があった。
著者
金戸 進 山内 恭 Susumu Kaneto Takashi Yamanouchi
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.459-476, 1999-11

第38次南極地域観測隊ドームふじ観測拠点越冬隊9名は, 1997年1月25日から1998年1月24日までの1年間, ドームふじ観測拠点での3年目, 最終年の越冬観測を実施した。今次隊では, 気水圏系プロジェクト研究観測の「氷床変動システム研究観測」と「南極大気・物質循環観測」を主に実施した。前者では, 36次隊から続けられた氷床深層掘削が中心課題として計画されていたが, 前次隊末のドリルスタック以来, 液封液の補充を続けたがドリルを回収できず, 深層掘削の再開には至らなかった。しかし, 前年までに掘削された氷床コアの現場処理・解析を続け, 多くのコア試料を持ち帰った他, 雪氷観測, 浅層掘削, 内陸旅行観測を行った。後者では, 新たな観測として, ライダーによる極域成層圏雲の観測やGPSゾンデによる高層観測, 大気循環場の観測等を精力的に実施し, 初めて内陸での極成層圏雲の通年の盛衰を捉えたり大気循環場のブロッキング高気圧に伴う熱や水蒸気の流入を捉えるといった成果を上げることができた。これら観測を支える設営面では, 水作りのための雪取りや, 燃料ドラムの搬入, 低温下での車両の立ち上げに苦労した。燃料事情は厳しかったが, 昭和基地からの補給を行ったことで内陸調査旅行が可能となった。越冬最後に, 基地の閉鎖作業を行い, 基地を後にした。