- 著者
-
濱尾 章二
Veluz Maria J. S.
西海 功
- 出版者
- 国立科学博物館
- 雑誌
- 自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, pp.17-26, 2006-03
日本のウグイス(Cettia diphone cantans)とフィリピンのウグイス(C. seebohmi)について、体サイズ測定値と翼の形を比較した。日本のウグイスでは雄が雌よりも明らかに人きく、雌雄のサイズ分布が重複しなかった。フィリピンの雄は日本の雄よりも小さく、雌は日本の雌と同じかやや大きかった(Table 1)。このことは、性的なサイズ二型が日本で顕著であることを示している。日本のウグイスは発達した一夫多妻の婚姻システムをもつが、フィリピンのウグイスは一夫一妻か、あまり発達していない一夫多妻の可能性が考えられる。翼の形では、フィリピンのウグイスは最も長い初列風切羽が翼の内側(体に近い側)にあり、翼差(最も長い初列風切と次列風切の長さの差;Fig.3)も小さく、日本のウグイスに比べて丸みのある翼をもっていた(Table 2)。丸みのある翼は渡りなどの長距離飛行には適さないが、素早く急角度で飛び立つことを可能にすると言われている。季節的な移動を行う日本のウグイスがとがった形の翼をもつのに対し、フィリピンのウグイスが丸い翼をもつのは、渡りをせず、よく茂ったやぶに棲むことに適応したものと考えられる。この研究は、国立科学博物館の「西太平洋の島弧の自然史科学的総合研究」の一環として行われたものである。