著者
安井 萠 YASUI Moyuru
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.12, pp.29-40, 2013

世界史(外国史)の授業は一般に、時代や地域ごとに史実を概説する形で行われる。こうしたやり方に多大な利点があることはなるほど間違いない。だが私見によれば、学習者の思考力を高める上で、時に時代や地域の枠を越えた「大きな絵」を描いてみることも大切ではないかと思われる。本稿では、そのような認識のもと筆者が企画・試行したある授業を、一つの実例として紹介したいと思う。紹介するのは「共和政の歴史的展開」と題する授業である。これは、西洋世界における共和政の理念ならびに共和政国家(共和国)の展開の歴史を古代から近代までたどるという内容のもので、この授業を通じ学習者が西洋史の全体的なつながりを意識するようになることを狙いとしている。筆者はもともとこれを大学の講義用に作成した。しかしその後高校世界史にも応用できるよう手直しし、まず岩手大学教育学部世界史研究室のゼミで試行的に授業を行った。そしてさらに岩手大学世界史研究会の例会で発表し、高校教員の会員から意見を聞いた。以下では、これら二度の試行を踏まえて仕上げた授業の原稿を掲げ、関係者の参考に供することとしたい。(授業の言葉づかいは、冗長を避けるため「である」調とした。本文の見出しと註は今回新たに付したものである。)