著者
加藤 重広
出版者
富山大学人文学部
雑誌
富山大学人文学部紀要 (ISSN:03865975)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.31-64, 1997-03-21

日本語の数量詞(quantifier)に関する問題はこれまで様々なかたちで考察されてきており,論点は整理されてきたように見える。①子豚が三匹いました。(NCQタイプ)②三匹の子豚がいました。(Q-no-NC タイプ)③子豚三匹がいました。(NQCタイプ)。本稿では,まず「数量詞」の様々な形を網羅的に議論できるように,その用語を定義することから始める。「数量詞」の定義は単純なようで厄介な問題を含んでおり,数量詞分析のアプローチに直結する問題も含んでいるので,避けて通るわけには行かない。その後で,まずNCQタイプの数量詞(遊離数量詞)の性質について多角的に分析を試みる。次に,Q-no-NCタイプの数量詞文(連体数量詞文)の意味とNCQ夕イプの数量詞文(遊離数量詞文)の意味の違いを分析する。これら連体数量詞と遊離数量詞の差異は,従来の意味統辞的な準位だけでなく,談話文法のレベルでの分析が必要である。多くの例文に当たりながら,話者の認知がいかに反映されるかについて,一つの仮説を示し,あわせてその検証を行う。

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