著者
西本 一志 魏 建寧
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1207-1216, 2016-04-15

近年,日本や中国において,漢字を読むことはできるが書くことができないという,いわゆる漢字健忘 (Character Amnesia) が問題となっている.その原因として,漢字の読みを入力して漢字に変換する漢字入力方式が広く使われるようになったことが一般に指摘されている.その他の漢字入力方式として,特に中国において,部首やストロークなどの漢字を構成する形状的要素の組み合わせを入力する方式が多数研究開発されている.しかしながらこのような方式は,漢字形状を熟知しているユーザにしか使用できないため,すでに漢字健忘に陥っているユーザには使用できず,また漢字健忘の問題をこの入力方式を使用することによって解決することもできない.本論文では,最も普及している漢字の読みを入力する方式を基盤として,漢字健忘の問題を解決する機能を有する新規な漢字入力方式 G-IM を提案する.G-IMは,従来の漢字入力方式とは異なり,ときどき漢字の形状に誤りがある漢字を出力する.これにより,ユーザは常に漢字形状に注意を払うことを強いられるため,漢字形状記憶が強化されることが期待される.ユーザスタディを実施した結果,G-IMは,従来の読みに基づく漢字入力方式や手書きよりも,有意に漢字形状記憶を強化することが確認された.

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