著者
下村 賢人 高島 健太郎 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. GN, グループウェアとネットワークサービス (ISSN:21888744)
巻号頁・発行日
vol.2020-GN-110, no.9, pp.1-7, 2020-03-09

既存の観念にとらわれない発想を行う目的で,飲酒の機会を活用しようとする事例が見られる.これまでにも飲酒に関する○○についての研究は行われているが,飲酒時に創出されるアイデアの活用に関してはほとんど検討されてこなかった.本研究では,飲酒者が創出したアイデアを非飲酒者が参照することによって,より良いアイデアを創出できるという仮説を立て,その検証を実施した.実験の結果,非飲酒者のアイデアを参照したときと比較して,飲酒者のアイデアを参照した場合,より多くのアイデアを創出し,実現可能性はやや低いものの独自性が有意に高いアイデアを創出できるようになることを確認した. : There have been some attempts where opportunities of drinking alcoholic beverages are utilized to create novel ideas. However, measures to utilize and to brush up ideas created while drinking alcoholic beverages have not been sufficiently investigated. We hypothesized that it becomes able to create better ideas by referring to ideas created by people who have drunk some alcoholic beverages (i.e., drinkers). Based on this idea, we propose a novel divergent thinking method named “Designated-driver method,” in which non-drinkers create ideas referring to drinkers' ideas. We conducted experiments to evaluate usefulness of this method. As a result, comparing to cases where ideas created by non-drinkers are referred to, it was confirmed that it became able to create more ideas by referring to ideas created by drinkers, and that originality of the created ideas became significantly higher, although their feasibility is slightly lower.
著者
山内 賢幸 坊農 真弓 相原 健郎 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告: ヒューマンコンピュータインタラクション (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010-HCI-137, no.10, pp.1-8, 2010-03-12

学会の懇親会や結婚式の披露宴などの立食形式パーティーで会話の輪から孤立している人がいる. この会話の輪に入ることが出来ていない状態の人を 「孤立者」 と呼ぶ.本研究では立食形式パーティーの映像を使いハンドアノテーションを行う.そしてそこから得られたアノテーションデータを用いて孤立者の検出を行う.今回提案する検出手法は会話集団を見つけ,それ以外の人を孤立者とする方法である.人が映像を見て直感的に孤立者と判断したデータと提案手法で得られた結果との比較を行い,どれだけ孤立者が検出できたのかを明らかにする.またその結果から今後の課題についても検討を行う. : In this paper, we discuss a hand annotation method for video analysis of a buffet party toward detection of wallflowers. There are often some wallflowers in the banquet or the wedding party. We try to find out the wallflowers thorough understanding various participation roles, ex. Speaker, addressee, side participant, by the multimodal analysis of integrating several hand annotation data, i.e., speech, gaze direction body orientation and standing positions. We compare the wallflowers found out by our algorithm and that found out by people’s intuitions to investigate the performance of our algorithm.
著者
岩本 拓也 小倉 加奈代 西本 一志
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.16, pp.1-8, 2012-10-25

恋人間の愛着行動 (いわゆる 「いちゃいちゃ」) は,幸福感を得るためや相手との関係をより良いものにするために重要な行為である.恋人達の多くは,常に愛着行動をとりたいと願っている.しかしながら公共空間では,目の前にパートナーがいるにもかかわらず愛着行動を行うことができない.従来の恋愛支援技術の研究は,遠距離恋愛者を対象に研究開発が進められてきたが,近距離恋愛者に対しても支援すべき課題が残されていると考える.そこで我々は,公共空間内での対面状況において,周囲に不快感を与えることなく愛着行動を行えるメディアの研究開発を進めている.本稿では,このメディアの実現に向け,どのような種類の行動を伝え合うことが有効かに関する基礎的検証を行う."Acting cozy" is important for lovers to feel happiness and to improve their relationships much better. Many lovers desire to always act cozy. However, it is actually difficult to act cozy in a public space although they are together there. Whereas the ordinary research efforts have attempted to mainly support long-distance lovers, there are also several issues to be solved even for short-distance lovers. Accordingly, we have been studying a medium that allows the short-distance lovers who stay together to convey cozy actions even in the public space without disgusting people around them. This paper investigates what kind of cozy actions should be transmitted between the lovers being together in the public space.
著者
松原 孝志 臼杵 正郎 杉山 公造 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.3174-3187, 2003-12-15
被引用文献数
16

本論文では,リフレッシュルームやラウンジといった共有インフォーマル空間におけるインフォーマルコミュニケーションを触発するシステムを構築し,その評価を行う.そのために,まず,組織において自然発生的にできた`溜まり場'でどのようなインフォーマルコミュニケーションが行われているかを知るために観察実験を行った.観察実験の結果,共有インフォーマル空間の利用者は,そこに行く理由や居るための理由として頻繁に`もの(オブジェクト)'に触れたり注視したりしていることが見出され,このことにより距離圧力を回避し「居心地」よくしていることが推定された.我々は,これをオブジェクトの持つ言い訳効果と考え,そのような`もの'を「言い訳オブジェクト」と呼ぶこととした.次に,観察実験の結果を考慮し,言い訳オブジェクト効果のあるシステムを実現するための要求分析を行い,伝統的な「囲炉裏」をメタファとして用いることにより,インフォーマルコミュニケーションを触発するシステムを構築し,これを「サイバー囲炉裏」と呼んだ.さらに,実現したシステムの予備的評価を行うため「サイバー囲炉裏」を含む3種類の実験環境を設定し,「居心地」の観点から被験者によるアンケートに基づき,「サイバー囲炉裏」における「居心地」に関するオブジェクトの言い訳効果を示唆する結果を得た.さらに,実運用による評価実験を行い,開発したシステムがインフォーマルコミュニケーションを触発するのに有効であるとの結果を得た.We propose a new concept, raison d'^etre objects, and a new ware, cyber-hearth,that affords snugness in face-to-face communication in a shared informal place such as a refreshing room or lounge.We carried out observation experiments on the behavior of individuals in such a place and found interesting tendencies:most people behave unconsciously to pay attention to physical objects by watching or handling as excuses for entering or staying there.This might be because participants are unusually close each other in terms of proxemics.We developed a prototype cyber-hearth IRORI that incorporated raison d'^etre objects with a facility for enhancing conversations,employing a metaphor `hearth' (`irori' in Japanese) as a total design principle since `irori' is well recognized as a snug,traditional informal place in Japan.We preliminarily evaluated IRORI by conducting a user experiment.The results of the experiment suggested that IRORI attained snugness and therefore were effective for catalyzing face-to-face informal communication.Then, we made evaluation experiments in the real environment and obtained results that IRORI was effective to catalyses face-to-face informal communication.
著者
岩本 拓也 小倉 加奈代 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.19, pp.1-8, 2013-03-06

恋人間の愛着行動 (いわゆる 「いちゃいちゃ」 ) は,幸福感を得るためや相手との関係をより良いものにするために重要な行為である.愛着行動はデリケートな行動のためプライバシが確保された場所で行うのが一般的であり,公共の場では行われない傾向にある.公共の場では,周囲の目が障壁となるため,カップルは愛着行動を行うことが困難になると考えられる.そこで我々は,公共空間内での対面状況において,周囲に不快感を与えることなく愛着行動を行えるメディアの研究開発を進めている.本稿では,裏腹的愛着行動を伝えあう対面コミュニケーションメディアである 「ちんかも」 を提案し,その有用性をユーザスタディによって検証する."Acting cozy" is important for lovers to feel happiness and to improve their relationships much better. Many lovers desire to always act cozy. However, it is actually difficult to act cozy in a public space although they are together there. Whereas the ordinary research efforts have attempted to mainly support long-distance lovers, there are also several issues to be solved even for short-distance lovers. Accordingly, we have been studying a medium that allows the short-distance lovers who stay together to convey cozy actions even in the public space without disgusting people around them. This paper investigates what kind of cozy actions should be transmitted between the lovers being together in the public space.
著者
下村 賢人 高島 健太郎 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
インタラクション2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2P-73, pp.741-745, 2020-03-02

日常生活において,飲酒の際に思いついたアイデアを,翌朝の素面時に発展させることで,より良いアイデアの創出ができることがある.本研究では,飲酒者の出すアイデアを非飲酒者が活用することで,より良いアイデアを生み出せるのではないかと考え,それを検証するものである.近年,既存の概念にとらわれない発想を行う目的で,飲酒の機会を活用しようとする事例が見られる.しかし,飲酒時に創出されるアイデアをどのように活用すべきかについては,十分に検証されていない.そこで本研究では,一人飲みの前後で発散的思考に関する課題を行う実験を実施し,そこで創出されたアイデアの分析を行った.そのうえで,その結果の特徴からいくつかのアイデアを抽出し,非飲酒者に提示してアイデアを生成してもらい,生成されたアイデアの分析を行った.その結果,非飲酒者のアイデアを活用したときと比較して,飲酒者のアイデアを活用したときに実現可能性がやや低下するが,独自性を向上させる可能性があることが示唆された.
著者
西本 一志 渡邊 洋 馬田一郎 間瀬 健二 中津 良平
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1556-1567, 1998-05-15
参考文献数
13
被引用文献数
7

音楽との能動的な接し方の特徴は,自分なりの音楽表現という創造性の発揮にある.しかし現実には音楽理論や楽器操作技術の困難により,多くの人は能動的な音楽との接触を諦めている.筆者らは,これらの困難を計算機で支援することにより,だれでも容易に創造的音楽表現に取り組める楽器の実現を目指している.本論文では,そのための一手段として,音機能固定マッピング手法を提案する.従来の楽器は音高を演奏インターフェース上の固定ポジションにマッピングする音高固定マッピング型の楽器であった.しかし,音には音高以外の属性があり,その1つとして,音楽的環境に応じて個々の音が人に様々な情動的作用を与える,機能という属性がある.音機能固定マッピングとは,常時一定の演奏ポジションに一定の機能を持つ音をマッピングする手法である.ある音の機能の判定には音楽理論に基づく解析が必要であるが,この手法によれば,演奏者は必要な機能を持つ音を理論的解析を行うことなく直接取り出せ,さらにそれらを自由に組み合わせることにより,容易に自分なりの創造的音楽表現を実現できるようになる.本論文では,特に音の機能の考え方が重要となるジャズの即興演奏を対象として作成した試作器と,それを用いた被験者実験について説明し,本手法の可能性について検討する.Many people cannot help but give up to play music bacause of difficultyof a musical theory or a manipulation of a musical instrument.The authors aim todevelop a musical instrument with whcih anyone can enjoycreating of music with the support of a computer.In this paper,we propose a concept called the "fixed mapping of note-funcitons".With an ordianary musical instrument,a specific pitch is always mapped on a specific position of the instrument;this is a "fixed mapping of pitch" instrument.However,a note has other attributes.A note-function,i.e.,theemotional effect of a note depending on the temporal musical situation,is one of them.The mapping of a specific note-function on a specific position is the basis of the "fixed mapping of note-funcitons" concept.In order to determine the note-function,a theoretical analysis is usually necessary.Using the proposed method,however,it becomes possible to directly extract notes with the required functions without any theoretical considerations and to exhibit creativity by combining the notes.In this paper,we show a prototype of an instrument for improvisational jazz,provide several subjective experimental results and dsicuss the possibilities of the method.
著者
角野 正高 西本 一志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.742, pp.77-82, 2004-03-18
参考文献数
6

本研究の目的は,無意識に表現された身振りやしぐさなどの身体動作に注目し,感情を表出したくても表出しにくい状況での情動表現を検討することである.そこで本研究では,対面場面の中で頻繁に観察される飲み物を飲むという行為に注目し,"コップを置いたり,持ち上げたりする際の圧力"と"コップの軌跡","動作速度"が感情によって変化するという仮説を立てた.これらの仮説を検証するために,被験者9名を対象として,自分の抱いている感情を直接表現できない"やりきれない場"における行動を記録するとともに事後プロトコル分析を行い,被験者が抱いていた感情を評価し,飲む動作と感情との相関を求めた.分析の結果,置く時の圧力の変化,コップを持ち上げてから口に付けるまでの時間は,感情によって有意に異なるという結果が得られた.
著者
富田 雄希 高島 健太郎 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
インタラクション2019論文集
巻号頁・発行日
vol.1B-37, pp.328-331, 2019-02-27

地域活性化の施策として,多くのご当地アイドルが各地で活動している.ご当地アイドルが円滑な活動を続けるためには,新規ファンの獲得が必要不可欠である.しかし,既存ファンコミュニティによる熱狂的応援や独特のルールなどが,潜在ファンの参入障壁を形成してしまう.本研究ではこの障壁を軽減するため,役割体験学習を活用した古参ファンの体験を追体験するノベルゲームを構築し,その効果を他者理解と愛着の増加の観点で検討する.モデルケースとして,石川県西金沢の商店街を拠点に活動する西金沢少女団の既存ファンコミュニティから実体験を収集し,その実体験を織り込んだノベルゲームBNO-Storyを潜在ファンに楽しんでもらう.このゲームにより,古参ファンがなぜ熱狂的応援をするのかを理解できるか,アイドルへの愛着が増加するかを評価する.
著者
宮下芳明 西本一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 : ヒューマンインタフェース研究会報告
巻号頁・発行日
vol.2004, no.90, pp.13-18, 2004-09

本稿では、温度を媒介として打鍵後に助言を行う即興演奏支援システムを開発した。従来の即興演奏支援システムとは異なり、楽器の基本機能を変更しない点が特徴である。システムの効果を検証するため、典型的な即興演奏支援システムとの比較実験を行った。その結果、即興演奏未経験者にとって、従来の即興演奏支援システムのほうがより楽しいと評価されたが、本システムは即興演奏の支援にとどまらず、即興演奏に対する学習を促す効果を持っていることが示された。 : In this paper, we propose an improvisation support system that makes advice after a player hits the key via thermal sensation. Differ from conventional improvisation support systems, it does not change the essential function of a musical instrument itself. To examine effectiveness of the system, we carried our an experiment and compared it with a typical improvisation support system and the instrument with no support. Though the traditional improvisation support system was rated more enjoyable by novice subjects, our system certainly supported them and facilitated learning the harmony, namely, fostered their music ability.
著者
岩本 拓也 小倉 加奈代 西本 一志
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.16, pp.1-8, 2012-10-25

恋人間の愛着行動 (いわゆる 「いちゃいちゃ」) は,幸福感を得るためや相手との関係をより良いものにするために重要な行為である.恋人達の多くは,常に愛着行動をとりたいと願っている.しかしながら公共空間では,目の前にパートナーがいるにもかかわらず愛着行動を行うことができない.従来の恋愛支援技術の研究は,遠距離恋愛者を対象に研究開発が進められてきたが,近距離恋愛者に対しても支援すべき課題が残されていると考える.そこで我々は,公共空間内での対面状況において,周囲に不快感を与えることなく愛着行動を行えるメディアの研究開発を進めている.本稿では,このメディアの実現に向け,どのような種類の行動を伝え合うことが有効かに関する基礎的検証を行う."Acting cozy" is important for lovers to feel happiness and to improve their relationships much better. Many lovers desire to always act cozy. However, it is actually difficult to act cozy in a public space although they are together there. Whereas the ordinary research efforts have attempted to mainly support long-distance lovers, there are also several issues to be solved even for short-distance lovers. Accordingly, we have been studying a medium that allows the short-distance lovers who stay together to convey cozy actions even in the public space without disgusting people around them. This paper investigates what kind of cozy actions should be transmitted between the lovers being together in the public space.
著者
藤田 英徳 西本 一志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.742, pp.1-6, 2004-03-18
被引用文献数
3

近年のIT技術の発達に伴い,携帯電話やコンピュータを利用したコミュニケーションツールが発達し,遠隔地間でも気軽にコミュニケーションを取る事ができるようになってきた.しかし,既存コミュニケーションツールでは思いやりのような繊細な気持ちを十分に伝え合うことは依然として難しい.その困難の理由として,互いの状況に関する常時的認識と適時性の欠如,また非言語情報の不足が考えられる.本研究では,状況に関する常時的認識と適時性に注目し,気温情報を状況アウェアネス情報として常時伝達しあい,気温変化が生じた際に「あたためる行為」を伝えることにより,遠く離れた親しい人への思いやり感を醸成するシステムを"Lovelet"を提案する.Loveletを用い,二組の遠距離恋愛を行うカップルに約2週間の実験を行い,アンケート調査とログデータに基づき評価を行った.この結果,実際に気温変化に応じた「あたため行為」の伝達が生じ,それによって親しみ感やつながり感が増すことがわかった.また,既存コミュニケーションツールと併用して使用するセカンドコミュニケーションツールとしての有効性も確認され,さまざまな気持ちのやりとりにも使用されていたことも明らかになった.
著者
鈴木 真一朗 西本 一志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.31, pp.37-42, 2008-03-21

本研究では,コミュニケーションの情緒的側面を支援する一手段として,`思い出'に着目し,思い出を同期的に語り合うためのシステム`Sweethearts Client'と非同期に追体験を促すためのシステム`Mobile Sweetheart'からなるコミュニケーションメディア`Lovebird's-Eye'を提案する.特に,コミュニケーションにおける情緒的側面を強く求めるのは恋人たちであろうと想定し,実際に恋愛中の3組の男女に対して約4週間の評価を行った.評価から,Sweethearts Clientが場所にまつわる話題を提供し,Mobile Sweetheartが思い出を共有したいという欲求を促進していることが確認され,これらが連携することによって,さらに情緒的なコミュニケーションが創出される可能性も示唆された.This paper describes novel communication media named ``Lovebird's-Eye'' for enhancing affective communications.Lovebird's-Eye consists of two subsystems, i.e., ``Sweethearts Client'' and ``Mobile Sweetheart.''Sweethearts Client is a synchronous chat system for two people that is equipped with a shared map to let users talk about location-based topics.Mobile Sweetheart delivers a chat log to a user's cell-phone when he/she is near a real place where the conversation in the chat log was held.We conducted user studies with three sweetheart couples for four weeks.As a result, we confirmed that they talked about their memories related to some places using Sweethearts Client and they tried to get the logs in the real world using Mobile Sweetheart to vicariously experience there.
著者
松原 孝志 臼杵 正郎 杉山 公造 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 = Transactions of Information Processing Society of Japan
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.3174-3187, 2003-12

本論文では、リフレッシュルームやラウンジといった共有インフォーマル空間におけるインフォーマルコミュニケーションを触発するシステムを構築し、その評価を行う。そのために、まず、組織において自然発生的にできた‘溜まり場’でどのようなインフォーマルコミュニケーションが行われているかを知るために観察実験を行った。観察実験の結果、共有インフォーマル空間の利用者は、そこに行く理由や居るための理由として頻繁に‘もの(オブジェクト)’に触れたり注視したりしていることが見出され、このことにより距離圧力を回避し「居心地」よくしていることが推定された。我々は、これをオブジェクトの持つ言い訳効果と考え、そのような‘もの’を「言い訳オブジェクト」と呼ぶこととした。次に、観察実験の結果を考慮し、言い訳オブジェクト効果のあるシステムを実現するための要求分析を行い、伝統的な「囲炉裏」をメタファとして用いることにより、インフォーマルコミュニケーションを触発するシステムを構築し、これを「サイバー囲炉裏」と呼んだ。さらに、実現したシステムの予備的評価を行うため「サイバー囲炉裏」を含む3種類の実験環境を設定し、「居心地」の観点から被験者によるアンケートに基づき、「サイバー囲炉裏」における「居心地」に関するオブジェクトの言い訳効果を示唆する結果を得た。さらに、実運用による評価実験を行い、開発したシステムがインフォーマルコミュニケーションを触発するのに有効であるとの結果を得た。 : We propose a new concept, raison d’etre objects, and a new ware, cyber-hearth, that affords snugness in face-to-face communication in a shared informal place such as a refreshing room or lounge. We carried out observation experiments on the behavior of individuals in such a place and found interesting tendencies: most people behave unconsciously to pay attention to physical objects by watching or handling as excuses for entering or staying there. This might be because participants are unusually close each other in terms of proxemics. We developed a prototype cyber-hearth IRORI that incorporated raison d’etre objects with a facility for enhancing conversations, employing a metaphor ‘hearth’ (‘irori’ in Japanese) as a total design principle since ‘irori’ is well recognized as a snug, traditional informal place in Japan. We preliminarily evaluated IRORI by conducting a user experiment. The results of the experiment suggested that IRORI attained snugness and therefore were effective for catalyzing face-to-face informal communication. Then, we made evaluation experiments in the real environment and obtained results that IRORI was effective to catalyses face-to-face informal communication.
著者
西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HCI, ヒューマンコンピュータインタラクション研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2012-HCI-149, no.1, pp.1-8, 2012-07-12

本稿では,ポスト知識社会を見据えた,Creativity Miningという新しい創造活動支援のあり方を議論する.我々のような一般人がなにがしかの新奇なモノを創り出すことは容易ではない.しかしながら,それは我々が非創造的であるということを意味しない.我々は皆,潜在的に創造性を有している.ただ,持てる潜在的創造力を思い通りに発揮することができないか,あるいは潜在的な創造力の存在に気づいていないだけであると私は考える.すなわち,我々の多くは「非創造的」なのではなく「未創造的」であると言えよう.来るべきポスト知識社会としての「創造性社会(Creative Society)」を確立するために必要となる創造的人材を大幅に増員するためには,未創造的な人々の裡に深く埋もれたままの創造性を見いだし,その発揮を支援するための新たな技術の実現が不可欠である.すでに創造性支援技術が広く研究開発されているが,これらの技術は基本的に「既創造的」な人々を主たる支援対象としており,未創造的な人々には適用し難い.Creativity Mining技術は,未創造的な人々を支援対象とし,これらの人々が有する潜在的創造性を発見・発掘することを支援する.本稿では,筆者らの研究室でこれまでに開発された3つのシステムを事例として取り上げ,これらの事例がどのようにCreativity Miningシステムとして機能するかを論じ,Creativity Mining技術の要件について検討する. : This paper proposes a novel concept called “Creativity Mining” for Post-Knowledge Society. Even though it is quite difficult for general people to create novel things, that does not mean that we are not creative. We all potentially have creativity. We simply cannot manifest our potential creativity at will or are unaware of its existence. In this sense, perhaps we are not uncreative but not-yet-creative. To increase creative human resources to establish the coming “Creative Society” as a Post-Knowledge Society, we require new technologies for finding the buried creativity deep within not-yet-creative people and for supporting its manifestation. Although creativity support technologies have been widely studied, they have supported the creative activities of already creative people. They are not useful for supporting not-yet-creative people. In contrast, creativity mining technology supports not-yet-creative people to find and confirm their potential creativity. This paper illustrates three example systems developed at the author's laboratory and discusses how they work as creativity mining systems and their requisites.
著者
山内 賢幸 坊農 真弓 相原 健郎 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.10, pp.1-8, 2010-03-12

学会の懇親会や結婚式の披露宴などの立食形式パーティーで会話の輪から孤立している人がいる. この会話の輪に入ることが出来ていない状態の人を「孤立者」と呼ぶ.本研究では立食形式パーティーの映像を使いハンドアノテーションを行う.そしてそこから得られたアノテーションデータを用いて孤立者の検出を行う.今回提案する検出手法は会話集団を見つけ,それ以外の人を孤立者とする方法である.人が映像を見て直感的に孤立者と判断したデータと提案手法で得られた結果との比較を行い,どれだけ孤立者が検出できたのかを明らかにする.またその結果から今後の課題についても検討を行う.In this paper, we discuss a hand annotation method for video analysis of a buffet party toward detection of wallflowers. There are often some wallflowers in the banquet or the wedding party. We try to find out the wallflowers thorough understanding various participation roles, ex. speaker, addressee, side participant, by the multimodal analysis of integrating several hand annotation data, i.e., speech, gaze direction body orientation and standing positions. We compare the wallflowers found out by our algorithm and that found out by people's intuitions to investigate the performance of our algorithm.
著者
大島 千佳 西本 一志 阿部 明典
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.1546-1557, 2006-05-15

以前より演奏表現に関しての研究が行われ,最近ではコンピュータに自動的に人間らしい演奏をさせる研究が行われている.これらの研究では,主に各音の音量や音長をもとに演奏表現を議論してきた.しかし,音楽演奏では「音の切れ方」も表現の一要素として重要である.ピアノ演奏の場合,音の切れ方は「離鍵速度(下におりた鍵盤が元の位置に戻る速さ)」によって表現され,Musical Instrument Digital Interface(MIDI)では,“Note off velocity” として数値的に示される.したがって本論文では,音楽情報科学分野における演奏分析や演奏生成の研究に利用可能な,知識表現を求めるための基礎的な段階として,ピアノの演奏表現における離鍵速度の重要性を示した.まず,音響スペクトログラムと聴取による評価実験により,離鍵速度の変化が演奏表現に影響を与えることが分かった.次に,演奏データを分析したところ,ところどころで際立って離鍵速度が遅い箇所があり,これらの箇所は楽譜上の情報と関係していることが示唆された.さらに度数分布を求めて打鍵速度の特性と比較することで,離鍵速度に示される奏者の知識表現を求めるには,離鍵速度が際立って遅い箇所や速い箇所に注目する必要があることが示された.
著者
西本 一志
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.267-276, 2021-08-25 (Released:2021-08-25)
参考文献数
8

A concept of “Benefit of Inconvenience (BoI)” has recently attracted much attention as a novel design paradigm, and it has gained sympathy from a lot of people who question the excessive pursuit of conveniences in modern society. However, some of such sympathy is based on, for example, shallow nostalgic ideas that excessively beautify the past. In order to avoid such misunderstandings and misusing, some attempts to (re)define the concept of BoI in a clear and easy-to-understand manner have been made. However, even these (re)definitions still cannot eliminate undesirable misunderstandings and misusing of BoI concept. This paper clarifies causes of such problems of the former definitions and proposes a new definition of BoI that can solve the problems.
著者
下村 賢人 高島 健太郎 西本 一志
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:21888744)
巻号頁・発行日
vol.2020-GN-110, no.9, pp.1-7, 2020-03-09

既存の観念にとらわれない発想を行う目的で,飲酒の機会を活用しようとする事例が見られる.これまでにも飲酒に関する○○についての研究は行われているが,飲酒時に創出されるアイデアの活用に関してはほとんど検討されてこなかった.本研究では,飲酒者が創出したアイデアを非飲酒者が参照することによって,より良いアイデアを創出できるという仮説を立て,その検証を実施した.実験の結果,非飲酒者のアイデアを参照したときと比較して,飲酒者のアイデアを参照した場合,より多くのアイデアを創出し,実現可能性はやや低いものの独自性が有意に高いアイデアを創出できるようになることを確認した.
著者
岩本 拓也 小倉 加奈代 西本 一志
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2013-HCI-152, no.19, pp.1-8, 2013-03-06

恋人間の愛着行動 (いわゆる 「いちゃいちゃ」 ) は,幸福感を得るためや相手との関係をより良いものにするために重要な行為である.愛着行動はデリケートな行動のためプライバシが確保された場所で行うのが一般的であり,公共の場では行われない傾向にある.公共の場では,周囲の目が障壁となるため,カップルは愛着行動を行うことが困難になると考えられる.そこで我々は,公共空間内での対面状況において,周囲に不快感を与えることなく愛着行動を行えるメディアの研究開発を進めている.本稿では,裏腹的愛着行動を伝えあう対面コミュニケーションメディアである 「ちんかも」 を提案し,その有用性をユーザスタディによって検証する.