著者
ナスティオン 土屋 武志
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.101-110, 2003-03-29

本論文は,教科書を通して日本とインドネシアが,どのようなナショナリズムを育ててきたのか,また現在,育てようとしているのかを分析した。第二次世界大戦以前の日本のナショナリズムの大きな力は,国家神道と呼ばれる宗教的な精神によって支えられていた。その意識(国家-天皇-神)は戦前日本の教科書を通して育てられた。戦後は日本国憲法および教育基本法の理念に基づき,民主主義や平和を愛する意識を育てることを重視する経緯をたどってきた。しかし,現在は一部の日本人が戦前のナショナリズムの復活を期待する傾向がみられる。近代的な国民国家形成期に日本は天皇を統一のシンボルとしてきたが,インドネシアの場合はこのような存在がなかった。多民族,多文化,多言語,多宗教,多島などの国として成立した国家を守り育てていくためにパンチャシラ(五原理)いわゆる「寛容的なイデオロギー」(多様性の中で統一)を作った。これを教育で強調し,インドネシア国民の社会的,政治的,文化的な統一を企図してきた。しかし,インドネシアの各時期によって,政府の政策は異なった特徴を持っている。

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