- 著者
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生島 博之
- 出版者
- 愛知教育大学
- 雑誌
- 愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, pp.165-172, 1999-03-29
本論文は,抜毛症の小学生男児2名の遊戯治療の経過を報告したものである。小学校3年生男児Mは,遊戯治療の中で,「女の子を人質にとってハゲにして殺し,最後には自決する銀行強盗」の遊びに熱中し,学校や家庭場面などでは,好きな女の子のあとをつけたり,いたづら電話をかけたりした。小学校4年生男児Yは,箱庭の中で,「流れの悪い川や渋滞する自動車」「ダムに墜落した飛行機」「武術の練習をする兵士」などを表現し,学校や家庭などでは,いたづら電話に熱中したりした。これらのことから,抜毛症の背景として,否定的な自己イメージ,鬱積し内閉された激しい攻撃的感情,いたづら電話に象徴されるようなアクティングァウト傾向と現実感覚の希薄さ,兄弟葛藤,身体境界の不明瞭さ(自他の境界のあいまいさ)等がうかがわれた。