著者
建内 高昭 小塚 良孝
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.127-131, 2010-02

教員養成のあり方を検討することを目的として,第一に客観英語能力に関わる新入生前期と後期における英語能力の推移を考察した。第二に大学センター入試英語リスニング導入前後において入学者の客観英語力(特にリスニング力)への影響を探った。結果は,英語専攻・国際文化コースではいずれの年度においても客観英語力が向上していることが示された。次にセンター入試にリスニングが導入されたことにより,国際文化コースでは有意に得点が伸び,また英語専攻において有意差は示されていないものの得点が上昇していた。一方で幼児コースにおいては,有意な差は示されていない。これらから本学入学者において,英語専攻や国際文化コースなど英語を専攻する入学者はセンター入試にリスニングが導入され,より高い客観英語力を身に付ける契機となり得たと指摘できる。
著者
生島 博之
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.165-172, 1999-03-29

本論文は,抜毛症の小学生男児2名の遊戯治療の経過を報告したものである。小学校3年生男児Mは,遊戯治療の中で,「女の子を人質にとってハゲにして殺し,最後には自決する銀行強盗」の遊びに熱中し,学校や家庭場面などでは,好きな女の子のあとをつけたり,いたづら電話をかけたりした。小学校4年生男児Yは,箱庭の中で,「流れの悪い川や渋滞する自動車」「ダムに墜落した飛行機」「武術の練習をする兵士」などを表現し,学校や家庭などでは,いたづら電話に熱中したりした。これらのことから,抜毛症の背景として,否定的な自己イメージ,鬱積し内閉された激しい攻撃的感情,いたづら電話に象徴されるようなアクティングァウト傾向と現実感覚の希薄さ,兄弟葛藤,身体境界の不明瞭さ(自他の境界のあいまいさ)等がうかがわれた。
著者
廣澤 愛子
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.319-327, 2004-02-27

スケープゴートとは、ある集団に属する人がその集団の正当性と力を維持するために、特定の人を悪者に仕立てあげて攻撃する現象を指す。少数民族の迫害(ホロコーストなど)はこの一例であるし、より卑近な例を挙げると、学級におけるいじめや家庭における虐待も同様であろう。従来、虐待やいじめについては「トラウマ」という視点から論じられることが多いが、本論では、「スケープゴート」という視点から論じた。そして、虐待やいじめの被害者(児)の心理療法を通して筆者が感じたことを中心にして、スケープゴートにされるという経験が当人にどのような影響を及ぼし、その中で彼らがどのように自らのアイデンティティを築いていくのかについて考察した。具体的には、スケープゴートにされるという経験が及ぼす影響について、①スケープゴートとの同一化、②実存的な孤独、③「集合的な影」を見続けること、の3点から論じた。そして、彼らが自ら築いていくアイデンティティについて、①辺縁を主体的に生きること~スケープゴートからトリックスターヘ~、②基盤のなさを受け入れること、③「影」との新しい関係、の3点から論述した。
著者
生島 博之
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.291-298, 2001-03-30

本論文は,筆者が経験しか軽度の自閉的な児童2名に実施した遊戯治療の経過を報告したものである。小学校3年生男児Yは,遊戯治療の中で,自分が気にいった玩具を他児に使われないようにするために,「使用禁止」等の貼り紙をつくって貼る遊びに熱中したり,特異な思考様式や変わったジェスチャーを示した。また,突飛な感情表現も見られ,ゲーム遊びで負けかかると突然セラピストを殴ろうとした。幼稚園女児H子は,遊戯治療の中で,ママゴト遊びで玩具の食物をいつも口に入れたり,描画などにおいて固執傾向をしめしていたが,治療関係が確立するにつれて改善をみせた。また,イナイナイバァー的な遊びを経て,ゲップやオナラを楽しむようになったりした。これらの経過をふまえ,視線があいにくい自閉的な児童の内的世界などについて考察した。
著者
生島 博之
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.257-264, 2003-03-29

本論文は,盗みなどを主訴としてプレイセラピーを受けることになった児童たちの治療経過を,箱庭を中心として報告したものである。男性遍歴から水商売に生きている母親と同棲中の男性との共同生活を強いられる中で盗みをするようになった小学生男児のYとMは,「ギロチン」という表現をおこなった。Yは,「いたづらするワニを処刑するためのギロチン」を置いたり,「早く戦争がなくなるように」と願って基地にエベスさんを置いたりした。一方,Mは,「ギロチントンネル」という遊びをしたり,「仁義を切る怪獣たち」や「金閣と銀閣にさらわれたお姫さまの救出に向かう孫悟空」を置いたりした。そこで,これらのテーマを掘りさげ,盗みの深層心理に隠されている「怒り」や「淋しさ」の感情について考察した。
著者
坂本 美紀
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.47-54, 1999-03-29

本研究は,割合文章題の解決場面で,小学生が構成した問題表象を調査したものである。研究の主眼は,児童が構成した問題の外的表象にあり,小学5年生が小数の割合文章題をどのように図示するか,また描かれた図のタイプと問題解決の成績は関連するかどうかについて検討した。調査の結果からは,児童が自発的に描いた図の多くが,教科書などで指導されている線分図とは異なるタイプのものであること,立式の正しさは,描いた図のタイプよりも,文章題の問題構造の違いを反映させて外的表象を構成できたか否かに大きく関連していたこととが明らかになった。
著者
松本 昭彦
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.139-146, 2010-02

図画工作科研究の受講学生たちにキミ子方式の基礎的題材を体験させた後,人物や動物,樹などを組み合わせて描く実践を行ったところ,シュルレアリスムの画家たちが多用した「配置転換」を活かすことにより,創造画制作への可能性が見えてきた。「絵は自由に,個性的に,創造的に描くもの」という考え方が世間や学校現場にまで拡がり,絵画制作の領域から「見て描く」行為を遠ざけている。キミ子方式の描き方の基本は写実であるが,同じ題材で描かせても出来上がってくる絵には自由や個性が溢れている。
著者
山中 哲夫
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.79-83, 2007-02-28

男の子の失禁は心理的なもの。括約筋によるコントロールが性器的なものと結びついているため。「欲求」と「欲望」の混同。男の子における夜尿症の心的特殊性/核家族化が進む中での教師の役割。子どもが学業に失敗したときの対処法/兄弟姉妹は別個の存在。兄姉は弟妹の親代わりになってはいけない。近親相姦の危険な陥穿。模倣は有害。父親と母親の役目。
著者
鈴木 将史
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.167-170, 2004-02-27

2つの事象AとBの独立性については,いくつかの同値な定義が与えられるが,学校教育の現場では,事象の独立性について生徒が正確に理解することの困難さがしばしば指摘される。本報告では,2つの事象の独立性については,条件つき確率を用いた定義の方が,直観を反映していて理解しやすいと結論づける。しかし3つ以上の事象の場合へと一般化しようとすると,調べなければならない式が多くなり,確率の積で定義する方が簡潔で優れている。学校教育でもこのような観点で定義を見直すと,生徒の理解が深まるのではないだろうか。
著者
子安 潤
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.17-24, 2002-03-29

近年の有力な学力低下論の言説がいかなる意図の下に主張されているかを考察し,それぞれの議論の根拠や問題点について考察することを目的とする。ここで取り上げるのは,財界の学力低下論,科学主義的な学力低下論,保守主義的な学力低下論,文部省リベラル派の学力論,苅谷の社会学的学力低下論の五つである。特に,それぞれの学力低下論が,今日進められている教育政策の動向と深く関わって発言されていることを示し,教育方法的視角からの議論もきわめてマクロな政治的判断と深く結びあっていることを示した。
著者
内田 良
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.269-277, 2009-02

本研究の目的は,今日支持されている「虐待増加」の言説を批判的に検討し,その言説が支持される背景を明らかにすることである。虐待の「発生件数」を把握するためには,多くの困難がある。それにもかかわらず,多くの論者が容易に虐待の増加を支持している。そこで本稿では,まず今日主流となっている虐待の増加説の議論を概観し,次に,社会問題の構築主義をはじめとする減少説の見解を参照する。この作業をとおして,虐待を現代的・都市的に語る「『虐待』の現代化・都市化」と,虐待が最小限にまで抑制される時代にこそ虐待がかえって目立ってしまう「安全と危険のパラドクス」の視点を提起し,「虐待増加」の解釈が生み出される背景を説明する。
著者
西川 絹恵 生島 博之
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.225-231, 2010-02

ギャップの典型例は,支え喪失(強力な支えがなくなった),自己発揮機会喪失(自分を発揮する機会が持てなくなった),脆弱性露呈(関係維持の潜在的な脆さが徐々にあらわれた),課題解決困難化(課題解決が徐々に困難となり不満や不安を募らせてきた),友人関係展開困難化(仲間関係を広げていくことができず徐々に孤立した)があるといわれている。しかし発達障害児(グレーゾーンの生徒も含む)の特徴と「中1ギャップ」の5つの典型例はよく似ている。発達障害児は小学校から中学校入学という環境の変化において,変化を好まない,適応が困難であることなどの障害特徴から,二次的障害としての不登校を誘発しやすい状況となっていることが多いと思われる。よって発達障害の子どもたちの多くにも中1ギャップが影響している可能性は非常に高いと思われる。発達障害と不登校の関連性については多くの研究が指摘するところであり,したがって発達障害児に対しては,さらにきめ細やかな中1ギャップに対する対応が必要であると考えられる。本研究では「特別支援教育」の観点から,そのギャップの解消につなげるためのスクールカウンセラー(以下 SC と表記)の小学校から中学校へつなげるための取り組みについて,広汎性発達障害児とのかかわりを通して「小学校から中学校への変換期を支える特別支援」について検討した。
著者
中野 真志 太町 智
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-9, 2004-02-27

現在,日本の多くの学校で,総合的な学習の時間を利用して,地域社会に参加する活動が行われている。日本においても,子どもは「権利を行使する主体」であるとする「子どもの権利条約」の理念が浸透しつつあることは明らかであろう。しかし,学校における子どもの参加の中には,教師主導の活動であったり,イベント的で表面的な活動に終始してしまったりする実践も少なくない。地域社会を住み良い環境にするためには,子どもが責任を負い,大人と意思決定を共有する参加が必要である。本小論では,ロジャー・ハートやデヴィッド・ドリスケルの理論を手がかりとして,総合的な学習の時間の事例を分析することも含め,子どもの参加の質を高める方策について論じる。
著者
子安 潤 久保田 貢
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.9-16, 2000-03-29

1950年代末より積極的に展開された「主権者教育論」は,その初期の頃,「国家の一員」におしとどめようとする教育内容が,「国家の教育権」のもとに強制されようとしていたことに抗し,「国民」を「主権者」と位置付け,次代の主権者を育てようと提起した点で,意義は大きい。しかし,「国民」に限定した点や,子ども自身が権利行使主体としてどのような行動ができ,あるいはその行動能力を育むのか,といった考察が乏しかった点など,問題点も残されていた。
著者
村岡 眞澄
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.77-82, 2003-03-29

いわゆる「一年生プロブレム」などをきっかけにして、幼・小連携への実践的取り組みに対する関心が高まっている。より実りある連携を推進するには、従来のようなイベント的な交流に終ることなく、教育内容や指導方法の見直しといったところにも踏み込んでいく必要があると思われる。このような問題意識から、小学校低学年の子どもの発達特性に相応しい教育の内容や指導方法を「体育」を切り口として探ろうとした。幼少年期の子どもにとって、身体活動の持つ意味は大きいからである。運動種目を課題として与えず、「子どもがやりたい」と思い、「やってみよう」と自分で取り組み、多種多様な動きを工夫してつくり出す子ども中心の生き生きとした体育学習を総合的につくろうとしている岩井の「忍者体育」のような実践が追究されるならば、そこに自ずと幼・小連携の道が開かれるであろう。岩井の実践はまた幼児教育の見直しを要請する。幼・小の相互理解をふまえながら、子どもの側からの教育を追究することが小連携の基本となると考える。
著者
瀬田 祐輔 牧 恵子
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.91-100, 2010-02

学校図書館司書教諭講習科目「読書と豊かな人間性」は,司書教諭が,読書指導の直接の担い手となることばかりではなく,全校の読書指導の推進者としての役割を果たすことをも見据えた内容となっている。しかしながら,子どもを読書に誘うための個々の手法を実習または演習として組み込むのみでは,それらを駆使した計画・実践ができる力,いわば応用のきく力として身につけさせることは困難である。そこで本稿においては,この問題を解決しうる授業方法を探るべく,プロジェクト型の学習形態(「第2回科学・ものづくりフェスタ@愛教大」に参加し,科学読み物を中心とした読書材の読み聞かせ企画を受講生に運営させるという形)を組み込んだ授業を構想し,実施を試みた。その結果,「読書と豊かな人間性」において,プロジェクト型の学習形態を採用することには,読書指導に関する知識や技能を応用のきく力として身につけさせるという点で,一定の効果を見出すことができた。