著者
伊藤 理史 イトウ タカシ Ito Takashi
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-15, 2016-03-31

2011年11月27日に実施された大阪市長・府知事選挙(2011年ダブル選挙)の結果、大阪市長に橋下徹が、大阪府知事に同じく橋下陣営の松井一郎が当選した。このような橋下陣営の躍進(橋下現象)は、現代日本における新しい政治現象の典型例とみなされている。しかし誰が橋下現象の担い手なのかという点については、必ずしも明らかではない。論壇やマス・メディアでは階層との関連が指摘されているが、いまだ適切な個票データと実証研究の蓄積は乏しい。そこで本稿では、階層政治論に注目して主にその有効性を検討した。自ら実施した「大阪府民の政治・市民参加と選挙に関する社会調査」の個票データを使い、多項ロジスティック回帰分析から2011年ダブル選挙における候補者選択と投票参加の規定要因を検討したところ、階層と投票行動の関連が両選挙でみられなかった。このことは候補者選択における階層間対立と投票参加における階層的不平等の不在を意味する。以上の分析結果より、現代日本における新しい政治現象の典型例としての橋下現象は、階層政治論から説明できないことが示された。橋下陣営の人気は、候補者選択における階層間対立と投票参加における階層的不平等を超えて多数派からの支持を獲得したことによって生じている。つまり本稿は、現代日本における新しい政治現象が生じた有権者側の要因について示唆を与えるものである。

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伊藤理史,2016,「2011年大阪市長・府知事選挙における投票行動の規定要因分析:有権者の階層に注目して」『年報人間科学』37: 1-15. https://t.co/O7kN5ZefIR

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