- 著者
-
中村 重穂
- 出版者
- 北海道大学留学生センター
- 雑誌
- 北海道大学留学生センター紀要
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.78-97, 2009-12
小論は、日本語の論文に於ける「だ」と「である」の選好状況をアンケート調査によって調べた上で、その選択条件を考察したものである。調査・考察の結果、基本的に論文では「である」が用いられ、特に、段落の順序構造を示す、書き手が強調したい部分を含む、先行内容を承ける指示詞を含む述部、例示表現を含む、文末に一定の述定成分を要求する表現が先行する、「名詞1であるという名詞2」や「名詞/ナ形容詞であると動詞」の構造内、モダリティ表現の後ろという七つの特徴を持つ文では「である」が選好されることが解った。また、「だ」は、文末に現れる「だろう」、「だ」を構成要素として含む文末表現、書き手や引用文の話し手の主観性が反映されている箇所に現れることが観察された。これらによって文章表現指導の際の一定の規則は提示し得たと考えられるが、さらなる妥当性の検証と新たな条件の解明、及び"混用文体"指導の適否やその技術的可能性の追究が必要になると考えられる。