著者
村松 哲夫
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.11-28, 2011-12-26

東日本大震災のような大規模な災害が発生した場合,復旧・復興に向けた中長期的支援と同時並行的に短期的支援,すなわち,生活必需品,医療資源を可及的速やかに被災地に送らなければならない。実際,政府は自衛隊に災害派遣命令を出して,行方不明者の捜索に当たらせると共に,現地に物資を 運ばせた。一方,民間企業も独自に物資を被災地に送った。しかし,結果として,被災民に物資が十分に届いたとは言えなかった。これで特に困るのは慢性疾患患者である。日常的に服用している薬が入手できず,服用が途絶すれば,疾患の悪化は時間の問題である。 被災地域以外では,物資が十分にあり,生産余力も十分にあるのにもかかわらず,被災地に物資が届かないのは,官民共同のロジスティクスが構築できないからである。 このようなときは,政府が率先して民間に頭を下げて協力を要請すべきである。そして,それにかかる費用は政府が責任を持って支弁し,後に国民は相応の負担を甘受すべきである。その上で,官民共同のロジスティクスを早急に構築し,被災者に大量の物資を供給すべきである。そうすれば,生活必需品,医薬品も送れる。これによって,一般被災者だけではなく,慢性疾患患者も安できる。特に後者は必要な薬を入手,服用でき,それによって,疾患の悪化をある程度抑えられる。これは,中長期的に見ると,医療費の抑制に繫がり,そこで節減できた医療費を復興財源の一部にも充てられる。 今回のような轍を踏まないために,政府,地方自治体,企業,国民は,災害への備えを怠るべきではない。

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