著者
松尾 睦
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
Discussion Paper, Series B
巻号頁・発行日
vol.156, pp.1-17, 2017-12

本研究は、中堅社員(課長級管理職に昇進する前の20 代後半から30 代の社員)のマネジメント能力(業務スキル、対人スキル、意思決定スキル等)を高めるために、管理職がどのように仕事をアサインすべきか(任せるべきか)を明らかにすることを目的としている。日 本企業に勤務する部課長級管理職および中堅社員を対象とした質問紙調査データを分析し、次の点を検討した。すなわち、①与えやすく、かつ中堅社員の能力を高めるのに有効な業務、②業務と中堅社員の能力との関係、③業務を創り出す方法、④管理職が中堅社員の業務遂行を支援する方法である。 分析の結果、以下の点が明らかになった。与えやすく有効性の高い業務としては、「他部門との調整が必要な業務」「他部門を巻き込みながら進める業務」「自部門内の戦略・構想を策定する業務」「部門内の業務を改善・変革する業務」「高い目標を達成する業務」「新しい業務の提案や遂行を伴う業務」「顧客や取引先と打ち合わせ・交渉する業務」「協力企業や取引企業との協働」「新人・経験不足のメンバーの指導」「本人が経験したことがない業務」などが挙げられた。特に、権限が及ばない状況での業務、変革に関わる業務、高い責任の業務、幅広い仕事に携わる業務が中堅社員の能力向上に好影響を与えていた。 業務の創り方に関して、管理職は「役割を見直す」「新たな役割を創出する」「部門内の問題に対応する」「他部門と連携する」「外部組織からの要望やクレームに対応する」ことによって業務を創出し、部下に与えていた。また、高い業績を上げている管理職ほど、上位者や自身が担っていた業務を中堅社員に任せ、他部門との連携の機会を自ら創りだしていた。 中堅社員が業務を遂行する際、管理職は「業務の意義・重要性の明確化」→「事前に必要な手配・段取り」→「業務の要所・急所に関する指導」→「実行段階での側面支援・後方支援」→「進捗確認とフィードバック」という順序で部下を支援していた。このうち、本人の 成長やキャリアにおける意味や期待、部門内のフォロー体制、実施段階での側面・後方支援、事後の振り返りが不足している点が明らかになった。 最後に、予備調査(自由記述調査)から、優れたジョブアサインメントを実施していると思われる8つの事例を紹介した。

言及状況

はてなブックマーク (1 users, 1 posts)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

収集済み URL リスト