- 著者
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標葉 靖子
- 出版者
- 北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
- 雑誌
- 科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, pp.25-36, 2018-07
オバマ政権(2009-2016)は,米国の科学技術イノベーション政策における重要な省庁横断的な優先事項の一つとしてSTEM(Science, Technology, Engineering, and Mathematics)教育の振興を掲げ,連邦政府レベルでのSTEM 教育への財政支援を積極的に行ってきた.ところが2017 年1 月に就任したトランプ大統領は,そうしたSTEM 教育推進の流れを大きく転換させるかもしれない.そこで本稿では,まずオバマ政権におけるSTEM 教育への優先的な予算配分について概説した.その上で,2017 年5 月にトランプ大統領が発表した2018 年度予算教書におけるSTEM 教育関連予算要求の詳細を確認した.トランプ予算教書では,これまでオバマ政権とは対照的に,STEM 教育関連予算が前年度比47.1%減の大幅削減要求となっていた.上下両院の予算委員会で作成・可決された2018 年度予算決議案では,STEM 教育関連予算の総額はいずれも前年度とほぼ変わらない水準となっているものの,当該政権が何を重視しているかがその予算案に色濃く反映されることを鑑みれば,トランプ政権が科学技術全般やSTEM 教育に対してこれまでのような重点投資のビジョンを有していないことは明らかであるといえよう.日本と米国では状況が異なるものの,米国のイノベーション政策動向は日本の科学技術イノベーションならびにSTEM 教育関連政策にとって参照点も多く,トランプ政権下での米国STEM 教育関連予算の動向について,日本においても引き続き注視していく必要がある.