著者
内村 直之
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.47-56, 2017-01

一般の人にはなじみの薄い「物理学の成果」をどうすれば理解してもらうことができるだろうか.わかりやすさと正確さの両方を求めなければならない,という科学コミュニケーションにとって永遠の課題ともいえるこの問題について,2016年のノーベル物理学賞となった「トポロジカル相転移及び物質のトポロジカル相の理論的発見」という業績を材料に考察した.新聞,放送などのメディアに登場した解説を紹介・比較した上で,その材料となったノーベル財団の発表資料も吟味した.そこでは,一般向け解説にはどんな要素が必要かという私見を提示した.以上の分析をもとに,一般の人に理解してもらえる記事を書くにはどうすればよいかをまとめた.
著者
菊池 結貴子 江崎 和音 中島 悠 石川 遼子 伊與木 健太 正田 亜八香 音野 瑛俊
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.3-13, 2017-01

近年,科学者と非科学者がテーブルを囲んで気軽に語り合う「サイエンスカフェ」が日本で広がりつつあり,開催回数・開催場所ともに急激に増加している.それに伴って,サイエンスカフェの形式も多様化してきており,現在では実に様々な形式のサイエンスカフェが開催・報告されている.本稿では,こうしたサイエンスカフェの多様性の一端として,著者らの運営するイベント「BAPcafe」を取り上げ,その運営方法と実施実績を詳述するとともに,実施記録や参加者へのアンケートをもとに,BAP cafeの特徴と効果および今後の課題について考察を行った.BAP cafeではサイエンスカフェの要素の一つである「わかりやすく説明すること」よりも,「専門的な内容について濃密な議論を展開すること」に重点を置いており,サイエンスカフェの新たな一形式として著者らは位置づけている.スピーカーと参加者の間のみならず,参加者同士,スタッフと参加者の間での対話が自然に起こり,議論が盛り上がる点が特徴であり,参加者からは,スピーカーとの距離が近く,“マニアック”な話題を共に楽しみながら深く議論を交わせるといった評価を得ている.専門性の高い内容はサイエンスカフェでは避けられがちであるが,BAP cafeではそれが長所となり,参加 者を獲得して継続的な開催につながっている.
著者
川本 思心
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション = Japanese journal of science communication (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.19, pp.135-146, 2016-06

現在、科学技術政策において安全保障関連技術の研究が積極的に推進されている。一方で、大学や研究機関の対応は遅れている。デュアルユース研究(軍民両用研究)に関する意思決定において、研究者個人、研究組織、独立の審査機関、そして政府がどのような役割を果たすべきか、専門家による議論が求められる。その際、市民が大学や研究機関におけるデュアルユース研究をどのように捉えているのかを把握し、それを議論に反映させることが重要である。しかし、市民の意識について現状では十分に把握されていない。本稿はデュアルユース研究をテーマに開催した公開シンポジウム「デュアルユースと名のつくもの~科学技術の進展に伴う両義性を再考する」の参加者に対して実施した質問紙調査の結果について報告する。サンプルバイアスがあるため、この結果から議論できることは限定的である。しかし、賛成と反対が二分された結果は示唆的である。科学技術コミュニケーションの観点からも、デュアルユース問題に関して専門家と市民の議論を喚起する必要がある。
著者
森 玲奈 池尻 良平 濱口 麻莉 北村 智
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション = Japanese journal of science communication (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.19, pp.3-15, 2016-06

防災教育において、知識の提供のみで十分と言えないことは周知の事実である。例えば、気象庁では警報を始めとする「防災気象情報」により重大な災害への警戒を呼びかけてきたが、住民や地方自治体が災害発生の危険性を十分に理解することに繋げられない事例、十分な避難行動に結びつかない事例もあった。基本的な情報がどこでどのように入るか、それがどのような情報であるのか、知識として人々が持っていなければ、有事、各々の状況に合わせた判断や行動につなげることも難しいと考えられる。そこで、人々の防災情報の知識を高め、その知識を行動に結びつけるために、災害についての考え方の変容を促進する教育プログラムが必要である。本研究では、大雨に対する防災情報の知識や意識の向上を目的としたワークショップを設計し、その実践の結果からワークショップの学習効果の分析を行った。It is a well-known fact that the provision of disaster prevention knowledge is not enough to disaster prevention education to the public. For example, the Japan Meteorological Agency issued 'weather information for disaster prevention', including warnings, to inform people that a serious disaster was about to occur. But, residents and local municipalities were not adequately aware about the risk of disaster, warnings failed to result in adequate evacuation procedures, in some cases. If people do not acquire knowledge about where and how to receive basic information, and what kind of information is available, it is difficult to make judgments and act according to individual situations in emergencies. To strengthen people's knowledge of information for disaster prevention and connect thisknowledge to action, there is a need for educational programs that encourage people to change the way they think about disasters. Therefore, in this study, we designed workshops with the aim of improving knowledge and awareness of weather information for disaster prevention in response to heavy rain and analyzed the learning effects of these workshops.
著者
一方井 祐子 横山 広美
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.57-70, 2016-07

2011年3月11日に発生した東日本大震災および福島第一原発事故(以後、震災と略す)以降、科学コミュニケーター自身がどのように考え行動したのか、彼らの肉声を集め調査したものはない。筆者らはウェブ調査から震災以降に活動に限界を感じた職業的科学コミュニケーターが5割にのぼること、さらに科学コミュニケーターの活動が限定的であることへの批判に対し、約8割の職業的科学コミュニケーターが妥当である、または比較的妥当であると考えていることを明らかにし、さ らに、「スキル・専門性・感情」の3つの壁があることを見出した。ワークショップではこれらのデータをもとに、普段、使っているスキルをもって貢献活動にあたることが有効であることが議論された。本研究ではこれらに加え、科学コミュニケーターが適切なデータや見解を示す科学者集団と共にグループを組んで活動することで、これらの壁を乗り越えられる可能性があることを提案する。
著者
森 玲奈 池尻 良平 濱口 麻莉 北村 智
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.3-15, 2016-07

防災教育において、知識の提供のみで十分と言えないことは周知の事実である。例えば、気象庁では警報を始めとする「防災気象情報」により重大な災害への警戒を呼びかけてきたが、住民や地方自治体が災害発生の危険性を十分に理解することに繋げられない事例、十分な避難行動に結びつかない事例もあった。基本的な情報がどこでどのように入るか、それがどのような情報であるのか、知識として人々が持っていなければ、有事、各々の状況に合わせた判断や行動につなげることも難しいと考えられる。そこで、人々の防災情報の知識を高め、その知識を行動に結びつけるために、災害についての考え方の変容を促進する教育プログラムが必要である。本研究では、大雨に対する防災情報の知識や意識の向上を目的としたワークショップを設計し、その実践の結果からワークショップの学習効果の分析を行った。
著者
吉武 裕美子 勝身 俊之 南口 誠 西川 雅美 宮 正光 近藤 みずき 白仁田 沙代子 田辺 里枝 山本 麻希
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.31-42, 2016-07

科学技術へ関心の低い女性に科学技術を伝えるツールとして、かわいいと感じる要素を取り入れた科学実験・工作を考案し、その効果を調べた。女性が男性よりもより強く感じる感情である「かわいい」は、対象と関わりたい、仲良くなりたいという共感性や、社会的交流を求める感情に関連している。実験・工作を体験した中学生に対し「実験を体験していない人にも話したいか」というアンケート調査を行ったところ、普段の理科の授業や実験はあまり人に話さないのに対し、かわいいと感じる要素を取り入れた実験は特に女性にとって誰かに話したくなる実験であることがわかった。「かわいい」と科学の組み合わせは、実験実施者から体験者だけでなく実験体験者からその知人へと波及していく効果があり、より多くの人へ体験を伝えるという意味で、特に若い年代の女性にとって科学技術コミュニケーションの強力なツールになると思われる。