著者
種村 剛
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.39-50, 2020-04

新型コロナウイルス感染症の拡大をうけ,各国は感染症を抑制する手段として,ICT技術を用いて個人の行動を追跡する活動を行なっている.その方法の一つに,スマートフォンの近距離無線通信技術を用いて濃厚接触者を特定する,コンタクト・トレーシングがある.日本政府は2020年5月の段階で,コンタクト・トレーシングアプリの実用化を検討している.本稿は,コンタクト・トレーシングの概要を紹介するとともに,当該技術の社会実装に関する対話の場を創る際の論点を整理することを目的とする.一般に監視についてはプライバシーの侵害が課題になる一方で,コンタクト・トレーシングは「個人のプライバシーに配慮された監視手法」であることを確認する.しかし,それでもなお当該技術の社会実装の際にプライバシー侵害の可能性について検討する必要があることを指摘する.社会実装におけるプライバシー以外の論点として,コンタクト・トレーシングアプリを使いたくないが使わざるを得なくなることや,一度導入された技術の恒常化を挙げる.そして,当該技術の社会実装の対話の場において,科学技術コミュニケーターは,技術を用いて管理される側にある生活者の立場を代弁することが求められることを述べる.

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接触確認アプリ https://t.co/icIYm8rHUC
ちょっと関心あります。 https://t.co/xq6BPl1HLM
まもなくリリースされる接触追跡アプリ。 → 新型コロナウイルス感染症抑制のために個人の行動を追跡することの是非 : コンタクト・トレーシングアプリの社会実装に関する対話の場のための覚書 : HUSCAP https://t.co/PwPwEZxPeP
種村剛「コンタクト・トレーシングは日常生活の中で利用者に不安や葛藤の感情を生み出しうる科学技術である.筆者は,まずはそのことを念頭において,コンタクト・トレーシングアプリの社会実装の是非について考える対話の場を創る必要があると考える」https://t.co/FTvnjwCTnL
『科学技術コミュニケーション』第27号、以下の論考もアップしました! 種村剛「新型コロナウイルス感染症抑制のために個人の行動を追跡することの是非 : コンタクト・トレーシングアプリの社会実装に関する対話の場のための覚書」 https://t.co/R6iOJilyro

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