著者
小島 基洋
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-12, 2015-12-20

村上春樹の『羊をめぐる冒険』(1984)の基底には<再・拠失>の詩学がある. 本作では, 鼠と呼ばれる主人公の死んだ親友が, 羊男, そして幽叢として姿を現し, 再び姿を消す. また, 主人公の自殺した恋人が, 「誰とでも寝る女の子」, 「耳の女の子」として現れ, 前者は交通事故で死に, 後者は突然, 主人公のもとを去る. さらに, <再・喪失>の詩学は登場人物だけなく, 物や場所にも適応される. 時計の停止が, 鼠の<再・喪失>を, 再訪した海岸から立ち去ることが, 青春の<再・喪央>を表してもいる.

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小島基洋(2015)「午前8時25分,妻のスリップ,最後に残された五十メートルの砂浜 : 村上春樹『羊をめぐる冒険』における〈再・喪失〉の詩学」、『人間・環境学』24号、pp.1-12 https://t.co/Xd1IcGfqkT

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