- 著者
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田中 良英
- 雑誌
- 宮城教育大学紀要
- 巻号頁・発行日
- vol.55, pp.65-81, 2021-01-29
2006年の「世界史未履修問題」に象徴される、近年の日本社会における「歴史離れ」に関しては、歴史研究者・歴史教育者の双方に危機感が広がり、それが2022年度からの高等学校における歴史系教科再編の背景ともなっている。本稿では、この「歴史離れ」への対応策の一つとして、学校教育以外の場においても児童・生徒に歴史への関心を喚起し得るものと予測される、最近の歴史系エンターテインメント作品、とりわけ歴史漫画の現状の確認を図った。当初の予想に反し、近年の歴史漫画は数が増加しているのみならず、扱う時期・地域・テーマも多様化しており、さらには学術的な知見と重なる内容を持つものも多い。それゆえ、これらを通じて歴史への関心を涵養すること、そして歴史を多様な観点から眺め思考することを伝える方途にも、大きな有効性が見込めるように思われる。ただしその一方、内容が低年齢層の講読に適さない作品もあり、そのまま活用することには一定の困難も予想される。また、もともと歴史に関心がない読者にいかにして手に取ってもらうか、そして歴史的背景に関する解説などが付されていない作品にどのような補完的情報を具体的に追加すべきかなど、今後の課題も見いだせる。