著者
春成 秀爾
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.219-242, 2003-10-31

2000年11月,日本考古学は「前・中期旧石器遺跡」捏造事件の発覚という,未曾有の学問的・精神的打撃をうけた。事件発覚前に一部の研究者から疑いがかけられていたにもかかわらず,奏功せず,新聞社が隠し撮った映像によって初めて捏造を認めなければならなかった。日本考古学には偽造を見抜く鑑識眼,つまり資料批判の精神とそれを議論する諸条件が十分に発達していなかったと認めるほかない。ここでとりあげる日本の偽造例は,研究者による最初の調査と報告がずさんであったために,数十年にわたって,考古資料として通用してきたものである。イギリスのピルトダウン人骨事件をはじめとして,科学の世界,そして人間の社会には捏造は珍しくない。今回の捏造事件について真に反省する,再発を防止しようというのであれば,考古学の諸分野に適用できる鑑識眼を養成すること,偽造の鑑識結果を発表できる場を用意し,反論できなければ,それを素直に受け入れるという勇気と覚悟をもつことが必要である。偽造や誤断を指摘することが憚られるような学界や人間の気持ちをのりこえたところに,捏造事件後の日本考古学の未来は初めて開けてくるだろう。

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@jomonzine 伝茨城県出土は微妙なモノが多いみたいです。

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