- 著者
-
伊藤 高史
Takashi Ito
- 出版者
- 同志社大学社会学会
- 雑誌
- 評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
- 巻号頁・発行日
- no.142, pp.69-89, 2022-09-30
本稿では,メタルダンスユニットBABYMETALが,欧米で最も成功した日本発の大衆音楽アーティストとしての地位を確立していく過程を,社会システム論およびメディア論の観点から分析する。誰もがインターネットやスマートフォンを利用して不特定多数の人々に情報発信をできる今日の社会は,マス・コミュニケーションが全面化した時代である。BABYMETALが欧米で成功し,大衆的認知を得るにあたっては,テレビや新聞,雑誌などの「旧マスメディア組織」だけでなく,ファンが独自に撮影して動画サイトに投稿したライブ映像が大きな役割を果たした。ルーマンが社会システム論において使用した,社会システムの作動を制御する「プログラム」という概念を使って説明するならば,マス・コミュニケーションが旧マスメディア組織の独占ではなくなった今日においては,他者との感動の共有や承認に対する欲求に基づいたプログラムによって制御される消費システムの作動が,BABYMETALの成功の一因となったのである。BABYMETALの成功過程の分析から,「マス・コミュニケーションの全面化」によって特徴づけられる現代社会における,文化産業の創造性の条件の一端が明らかになる。