著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.139, pp.23-42, 2021-12-31

本稿では,筆者がこれまでに考察してきたメディア文化に関する社会システム論的分析枠組みを利用して,クラシック音楽界では異例の注目を集めた佐村河内守の「ゴーストライター騒動」(2014年)を分析し,今日のメディア文化の在り方とそこにおける創造性産出のメカニズムの一端を明らかにした。クラシック音楽は歴史的に市民を感動させる音楽へと発展してきた。そのような歴史から考えれば,身体的障害や被爆二世といった記号的価値を付与して作品の価値を高めようとした佐村河内のやり方は自然なものであった。消費システムを観察し,消費システムを作動させようとする文化産業システムは,過去の作品との微細な差異を生み出しながら新しい商品を創作システムとともに生み出していく。創作システム,文化産業システム,消費システムが複合的に交差する中で佐村河内という「作曲家」が生み出され,彼は,現代日本の消費システムを作動させる調性音楽を生み出すプロデューサーとしての役割を果たした。文化産業システムを中心にした複数の社会システムが複合的に重なり合う中で,これまでになかった「21世紀の調性音楽」が生み出されたのである。
著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.138, pp.21-40, 2021-09

本稿は,筆者が別稿で検討した,メディア文化についての社会システム論的分析枠組みを実証研究に応用するものである。そのことによって,大衆文化としてのメディア文化において創造性が発揮されるメカニズムを社会システムの観点から明らかにするとともに,筆者が提示した分析枠組みの有効性を検証する。分析対象とするのは,今日に至るまで活躍するスター歌手森高千里であり,彼女が1980年代後半にデビューし,スターとしての大衆的認知を得る1990年代はじめまでの時期に焦点を当てる。彼女は文化産業システムによって敷かれた路線を従順に歩むアイドルとしてデビューさせられたが,スタッフの協力を得て独自の世界を切り開いていった。彼女の振る舞いを「キワモノ」「アイドルのパロディ」として解釈する「解釈共同体」が成立し,彼女に唯一無二の地位を与えていった。彼女がスターとしての大衆的認知を得る過程が示しているのは,社会システム論が示唆する通り,様々な社会システムが交差し相互作用する中での葛藤や協働が,資本主義社会のメディア文化に創造性をもたらしていることである。論文(Article)
著者
伊藤 高史
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
no.83, pp.97-114, 2013-07-31

This paper aims to establish a theoretical foundation for sociological analysis of dynamic and diversified nature of journalism, using such sociological concepts as interaction, structuration and field. A major school of sociology, like that of Max Weber, regards the interaction of agencies as a minimum analytic unit. Based on this understanding, we start our analysis of journalism with the interactions of journalists with their stake holders. Then, we identify two types of basic conditions for the work of journalists, that is, the interaction between a journalist and other journalists (colleagues, editors and competitors) and the interaction between a journalist and news sources. The latter is less discussed and more important than the former, as journalistic activities can be done only if journalists are fed information by news sources. The conditions created by the interaction of a journalist with other journalists and news sources can be understood with the concept of "structuration," as presented by Anthony Giddens. Such conditions not only restrict activities of journalists in certain ways, but also enable them to perform the roles expected by the public. The interactions are acted in the "field" of journalism as well as the fields of news sources. The concept "field", originally presented by French sociologist Pierre Bourdieu, implies that the circles created by interactions are the circles of power relations. A journalist must be conceptualized as belonging to both the field of journalism and the fields of news sources. Journalists have many different working ethics and different working styles according to the news sources they cover. This is because different journalists covering different news sources belong to different fields. Understanding journalists as belonging to the field of news sources also helps understand the way journalists influence society through the power of news sources, not through the sway of public opinions.
著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.138, pp.21-40, 2021-09-30

本稿は,筆者が別稿で検討した,メディア文化についての社会システム論的分析枠組みを実証研究に応用するものである。そのことによって,大衆文化としてのメディア文化において創造性が発揮されるメカニズムを社会システムの観点から明らかにするとともに,筆者が提示した分析枠組みの有効性を検証する。分析対象とするのは,今日に至るまで活躍するスター歌手森高千里であり,彼女が1980年代後半にデビューし,スターとしての大衆的認知を得る1990年代はじめまでの時期に焦点を当てる。彼女は文化産業システムによって敷かれた路線を従順に歩むアイドルとしてデビューさせられたが,スタッフの協力を得て独自の世界を切り開いていった。彼女の振る舞いを「キワモノ」「アイドルのパロディ」として解釈する「解釈共同体」が成立し,彼女に唯一無二の地位を与えていった。彼女がスターとしての大衆的認知を得る過程が示しているのは,社会システム論が示唆する通り,様々な社会システムが交差し相互作用する中での葛藤や協働が,資本主義社会のメディア文化に創造性をもたらしていることである。
著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.136, pp.141-159, 2021-03

本稿は,ドイツの哲学者ノルベルト・ボルツの「メディア論」の特徴を明らかにするものである。ボルツはニクラス・ルーマンの社会システム論から強く影響を受け,社会を個人間の「理性的な合意」に基礎づけようとするユルゲン・ハーバーマスの思想を徹底的に批判する。その一方で,メディアと社会との関係についての考察を展開する。我々が現実を観察するインタフェースとしてのメディアはデジタル化の時代を迎えて根本的に変化し,現実とメディア表象の二分法を根本的に解体し,人間の「感覚変容」をもたらし,「弱いつながり」が重視される時代を導いた。これらの考察は,メディア文化と身体性などの関係を社会学的に考える上で大きな示唆を与えてくれるものだ。This research note is to clarify the major characteristics of Norbert Bolz'theory. Having been significantly influenced by the social system theory of Niklas Luhmann, Bolz developed his own social theory and harshly criticized Jürgen Habermas's social theory based on the idea of communicative rationality. Bolz also developed his own media theory and argued that the digital media revolution transformed our senses of reality. The dichotomy between reality and media representation has radically fallen apart as we cannot determine the differences between the real and virtual. The latest media technology allows an immersion into virtual reality without making us aware of its existence. The computer science algorithm has established foundation in our society as a tool to control human beings. Digital media technology has also changed our image of social capital. Weaker ties in cyberspace have become more effective than the stronger ties in physical space among intimate persons like friends or family as the former is more informative than the latter. These arguments of Norbert Bolz can be effectively applied to the sociological analysis of contemporary media culture.研究ノート(Note)
著者
伊藤 高史 イトウ タカシ Ito Takashi Itoh Takashi
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.128, pp.21-38, 2019-03

論文(Article)「ジャーナリズムは今(現在)を伝える」という言葉で,ジャーナリズムの機能が語られることがある。本稿の目的は,このように表現されるジャーナリズムの機能を,ニクラス・ルーマンの社会システム理論の観点から明らかにすることである。ルーマンはマスメディアを「情報/非情報」の二値コードによる選択を行うシステムとして定式化した。この場合の「情報」とは,システムの作動を継続させていくものことを意味する。ジャーナリズムが「情報/非情報」の二値コードによる選択を行うとは,情報を通じて構造的カップリングの状態にある他の社会システムを作動させることである。ジャーナリズムが別の社会システムを作動させるその瞬間,過去と未来を切り離す「今(現在)」が生み出されるのである。
著者
伊藤 高史
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 = Journal of law, politics and sociology (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.29-52, 2018-06

1. 本稿の目的2. ジャーナリズム研究の課題とオペレーションによる構築主義3. システムと環境4. 報道の影響力を考えるキーワードとしての「相互浸透」と「コミュニケーション・メディア」5. 結語研究ノート
著者
伊藤 高史
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.140-154,230, 1997-01-31 (Released:2017-10-06)

This paper puts forward a republican view on freedom of expression to discuss the legitimacy of the media's self-regulation of so-called hate speech in Japan. The issues concerning such self-regulation make it evident that the idea of free speech has lost its real meaning and I argue that going back to the idea of republican freedom is indispensable to reconstruct the idea of free expression. By discussing the republican view, I suggest that the problem with the current way of settling the arguments of hate speech is that a third party is eliminated from negotiation processes between the media and complaints.
著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.141, pp.49-70, 2022-05-31

本稿では,テクノポップユニットPerfumeを,社会システム論の観点から分析する。彼女らのパフォーマンスの特徴は,「非人間的身体性の表象」とでも表現できるような,機械的に処理され個性を奪われたかのように聞こえる歌唱と,アンドロイドのような非人間的なイメージをともなうダンスによって示される。このようなPerfumeの非人間的身体性の表象は,文化産業を資本主義の非人間性との関連で捉える伝統的な見方に対するアンチテーゼとして理解できる。様々な社会システムの複合的重なり合いの中で生み出されるPerfumeというコンテンツは,音楽に関わる社会システムの作動に影響を与える「出来事」として,音楽を語る語彙を変革し,我々の思考枠組みに影響を与えてきた。Perfumeの非人間的身体性の表象が大衆的な支持を得続けているという事実は,個人と社会,個性と文化産業,生活世界とシステムといった二元論的世界観に基づく認識枠組みに根本的な反省を迫るものである。
著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.140, pp.1-21, 2022-03-31

本稿では,メディア論としての社会システム論という観点から,スター歌手として大衆的認知を獲得した森高千里が,「人形」や「アンドロイド」などといった非人間的な存在感を示す言葉で表現されたことの社会的意味を考察する。このことを通じて,大衆文化が持つ創造性とそれを生み出すメカニズムを明らかにすることが本稿の目的である。森高はメディアを通じて表象された「複製」こそが消費システムにとっては「オリジナル」として体験され,実際の森高は「複製の再認」であるという倒錯した状況を観察し,そのことを表現するパフォーマンスを行った。「人形」や「アンドロイド」といった表現が示唆するのはメディア的表象の中にあっても森高は独特の質感を持った存在として,「メディア的身体性」と呼び得るものを獲得していたことである。消費システムは文化産業システムと創作システムの作動の中に,消費システムがいかにして観察されているのかを観察し,そのことによって森高のパフォーマンスに「リアルなもの」としての意味を見出した。森高がメディア的身体性を獲得したことの分析を通じて,大衆文化における創造性は,様々な社会システムが複合的,重層的に連鎖し,相互に観察し合うことを通じて生み出されていることが明らかになる。
著者
伊藤 高史
出版者
慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所
雑誌
メディア・コミュニケ-ション (ISSN:13441094)
巻号頁・発行日
no.58, pp.101-114, 2008-03
被引用文献数
1

1 CNN効果の意味2 政策 : メディア相互行為モデル3 北朝鮮拉致被害者の帰国に際しての報道と日本国政府の政策4 考察
著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.137, pp.65-84, 2021-05-31

本稿は,ジャン・ボードリヤールが「シミュラークル」や「ハイパーリアル」といった概念を使って展開した社会分析を,メディア文化を分析するために筆者が提示した社会システム論的分析枠組みから捉え直し,同分析枠組みの有効性を示すことを試みる。ボードリヤールが描いた社会は,メディアの表象が「現実の表象」ではなく「現実」そのものとなるような社会である。このため,メディア文化に理論的にアプローチするときには,重要な示唆を与えてくれるものだ。ボードリヤールの議論は管理社会への警鐘として理解できるが,シミュラークルとしての「記号」「言語」の在り方を問い直すことで,人々が主体性を回復する可能性をも示唆している。メディア文化の社会システム論的分析枠組みから解釈すれば,管理社会論が指摘した側面は,経済的利益を制御メディアとする文化産業システムが創作システムと消費システムを浸食するものと理解できる。メディア文化の創造的側面に関しては,文化産業システムが本来的に差異を生み出すことで作動を継続するものであることに加えて,文化産業システムと創作システム,消費システムが相互に観察し合い,また自己を反省的に観察し,自己の作動を更新していく点に創造の契機が含まれていることを確認できる。
著者
佐藤 英司 前田 裕伸 本田 一典 伊藤 高史 月岡 恵 柴崎 浩一 吉益 均 市田 文弘
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.674-681, 1984-05-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
14
被引用文献数
4 3

内痔核治療の目的で,市販漢方製剤(金鵄丸)を服用し,薬剤性肝障害をきたした2症例について報告する.第1例は51歳,女性.ドック健診にてGOT, GPTの軽度上昇を指摘され,精査のため第1回目の入院.その後経過良好で勤務していたが,全身倦怠感とともに,再びGOT, GPTの上昇がみられ第2回目の入院.入院加療後順調に回復.その後3回目のGOT,GPTの上昇がみられ,その際患者自身より,上記薬剤の服用後,全身倦怠感と肝機能の異常を指摘されるとの申し出があった.LMTは陰性,LSTは弱陽性を示したが,チャレンジテストにて確診した.第2例は46歳,女性.全身倦怠感にて来院.肝機能障害がみられ,その際,上記薬剤を服用したとのことで,LMT, LSTを施行したが,共に陰性.チャレンジテストによって確診した.
著者
伊藤 高史
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
no.44, pp.1-14, 190, 1994-03-25

This paper focuses on the works of Luis Althusser, especially his early works such as Reading Capital and For Marx. Althusser is known as structural Marxist but his works contain various elements including psychoanalysis, epistemology, and linguistics. I reevaluate his early works from the viewpoints of mass communication study. What is most important in Althusser's work is that it shows the way of empirical analysis of"discourse". Therefore, to reevaluate Althusser is to make clear his way of analysing discourse, "symptom reading". Nowadays, the concept of discourse draws much attention from sociologists in various fields. Some structuralists and post-structuralists have explored a variety of techniques for the analysis of discourse. Althusser's method is the most important one among them. According to Tim Dant, sociological analysis of knowledge and ideology is possible through the empirical analysis of discourse. He explains the meaning of discourse in his Knowledge, Ideology and Discourse as follows. By discourse, he means"the material content of utterances exchanged in social contexts that are imbued with meaning by the intention of utterers and treated as meaningful by other participants."And"the meaning is a property of the structural feature."In the field of mass communication study, Althusser is known for his theory of ideology which is explored in his latter works. The Cultural Studies Group is deeply effected by his theory of ideology. Althusser viewed the ideology as a representation of the imaginary relationship of individuals with the real condition of their existence. However, in his latter works, discourse is explained only in terms of reproduction of class society. On the contrary, structuralists think that discourse has its inherent power which bind human recognition and act. Althusser's early works are examples which exposes such power in the realm of human recognition. And his contribution to mass media study is made clear when we understand his way of exposing such power through his discourse analysis.
著者
伊藤 高史
出版者
創価大学
雑誌
Sociologica (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-20, 2008-03