著者
中尾 喜保
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.38-44, 1960-02-01

乳房は,古来多くの美術家達によつて女性美の象徴として,特に重要視されて来ました. 偉大な美術作品は,その形態について,解剖学的基礎の上に初めて芸術的な美を表現していると言われています.
著者
島田 信宏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.631, 1976-10-25

前回までは3回にわたり,CPDの診断までの過程を解説してきました。その妊産婦が完全にCPDであると診断されたような場合,帝王切開術が唯一の分娩様式となります。しかし実際には,このような症例よりもCPDかどうか判定に苦しむ症例,たとえば,児頭計測値は9.5cm,TCの値は10.4cmで,その差0.9cmといったような場合は,ほんとうにCPDといって,帝切のみがこの症例の唯一の分娩様式といい切れるのかどうか,誰でも疑問に思えてくることでしょう。 そこでこのような場合CPDと明確に判定できないという理由で,borderline caseとして,一応経腟分娩を試みてみる。そしてそれが駄目なら帝切にするという方式をとります。このような分娩形式を試験分娩test of laborといいます。もしそれが不可能ならいつでも帝切にきりかえられるように,その準備も同時にしておかなくてはなりませんので,経腟分娩,帝切と2つの異なった分娩様式のセットを同時に作らなくてはならなくなります。この両者同時の準備をdouble set-upと呼び,試験分娩を行なう時は,いつでもこの体制でのぞまなくてはならないとされています。
著者
新井 豊美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.446, 1988-06-25

山本沖子は、詩人三好達治に見出された人である。日本海に向けて開かれた港町、福井県の小浜に生まれ育った沖子と達治の交流は、独学で手さぐりしながら詩を書きはじめていた沖子が、昭和十九年に同県三国町に疎開して来た達治の存在を知り、書きためていた詩稿を送って教えを願ったことに始まっている。一読して詩人はこの見知らぬ娘の秀れた才能を認め、以後、沖子は三好達治の門下で詩を学ぶことになる。 詩集『花の木の椅子』は昭和三十二年に師の序文をもらい、推されて大阪創元社から出版されたが、初版三千部がたちまち売り切れ、戦後間もない荒廃した社会で多くの読者の心を魅了した。当時、それはおどろくべきことだったと云う。なかに次のような詩もある。
著者
池上 千寿子
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.611-614, 1983-07-25

PMS論争に火をつけた幼児虐待事件 6人の子をもつシャーリー・サントスさん。ふ と気づくと4歳になる末娘が,ソファの上でぐっ たり。脚はミミズばれで,血尿もでています。「ス ワッ,一大事」と救急隊を呼びました。かけつけ た救急隊員が末娘を診察。家の中は物盗りにやら れた気配もなく,家庭内幼児虐待(チャイルド・ アビュースchild abuse)として警察に連絡。4時 間後,当の母親シャーリーさんが虐待犯として逮 捕されてしまいました。シャーリーさんは黒人で 未婚です。 これだけの事件ならば,目下アメリカで社会問 題となっている,幼児虐待の典型的一例(学齢前 の子どもに対する暴行傷害や暴行致死は,年間3 〜35万件と推定されています)として,統計数値 をひとつふやすだけ。未婚であることや,サント ス家の住むニューヨーク・ブルックリンの都市環 境などを問題にする専門家はいるかもしれません が,すぐ忘れられたことでしょう。
著者
松木 玲子
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.46-53, 1993-01-25

妊婦雑誌花ざかりの時代 妊婦さんのための雑誌,いわゆるマタニティ雑誌が今や絶好調である。現在出ているのは月刊の『バルーン』(主婦の友社)『ピー・アンド』(小学館)『マタニティ』(婦人生活社)の3誌が中心。創刊から7〜8年がたつ。この間も出産率は低下していったが,これらの雑誌の発行部数は逆にじわじわと増え続け,今では3誌の合計が60万部近くに達するというから驚く。現在,日本全国の妊婦さんは約120万人。単純に計算すると,妊婦さんの2人に1人はこういう雑誌を愛読しているわけである。 マタニティ誌が次々に創刊された当時は,松田聖子やアグネスチャン,竹下景子などの芸能人が表紙を飾り,「出産・育児のファッション化」と皮肉られたものだった。一時の熱は冷めたものの,これらの雑誌には今も相変わらずおしゃれな妊婦さんがにこやかに登場し,かわいい赤ちゃんグッズがあふれ,「ファッショナブルで楽しいお産」「明るい妊娠」のイメージを振りまいている。かつての苦しいお産はもうなくなってしまったのだろうか。それなら,こんなに喜ばしいことはないのだが──。
著者
榊原 洋一
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.754-758, 2001-09-25

2つの「三歳児神話」 先日第1回の「日本赤ちゃん学会」が東京で開催された。赤ちゃん学会は,これまで医学,心理学,動物行動学,サル学,コンピューター学などさまざまな分野で別々に行なわれてきた赤ちゃんについての学問を,異分野の研究者が集まって幅広い見地から共同で研究していこう,ということで創設されたものだ。その第1回の学会のテーマとして選ばれたのが「三歳児神話を検証する」であった。1日めの午前中は,基礎脳科学の立場で三歳児神話を検証し,午後は保育の現場に関係のある主に発達心理の立場から検証する,という趣向であった。 ふたをあけてみたところで,奇妙なことが起こった。午前中の基礎脳科学のセッションの座長が,シンポジウムの開催に先立って「三歳児神話」の意味を説明するとしてことわざの「三つ子の魂百まで」を例として持ち出したのである。そして三歳児神話の意味を,3歳までに子どもの脳はできあがってしまう,それくらい重要な時期なのだ,という説明でまとめたのである。座長は小児科医であり,子育ての現場にも詳しい方であったが,その方が三歳児神話の意味を,「3歳までの(脳)発達は極めて重要であって,その間に正しい刺激を与えなければ,健常な発達が臨めないことがある」という意味に解釈されていたのであった。午後のシンポジウムの座長を筆者がつとめたのだが,そこでも参加している小児科医から,「三歳児神話をどういう意味で捉えているのか」という私にとっては意外な質問がだされた。もちろん「三歳児神話」の公式の意味は「3歳までは母親が子育てをしないと,健常な発達がさまたげられる」というものであり,数年前に厚生省が出した三歳児神話にはそれを支える科学的な裏づけはないという声明においても,三歳児神話はそういう意味で使われている。
著者
奈良林 祥
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.692-697, 1998-08-25

急激に増えたセックスレスの相談 「あれっ?」カウンセリングの途中で異変の芽のようなものを感じ,クライアント(相談依頼人)には気づかれないように心の内でドキリとさせられていたのは,もう12,3年も前のこと。わざわざ長野県から,“一昨年結婚致しました長男の嫁から,結婚して1年半になるのに,まだ一度も交わりがありません,と聞かされ,びっくり致しまして”とやって来た人品卑しからざる,その長男なる人物の母親を前にしてのことであった。そして,私を,「あれっ?」と思わせたのは,前日にも似たようなケースを扱ったばかりであり,そう言えば,当時は「性交回避」または「性愛嫌悪症」と言う病名で扱っていたこの種のクライアントが,このところ妙に増えて来ていることにフト思い当たったからである。今にして思えば,後に「Sexless(セックスレス)」と言う言葉がある種流行語のように通用してしまう事態を招くことになる「Sexless husband(セックスレスハズバンド)」と呼ばれる,性を病む亭主の急激な増加と言う現象の前触れに私はその時点で既に出会わされていた,と言うことであったのだ。 厳密に申せば,私が「性交回避」とカルテの病名欄に書き込むケースはかなり以前からなかった訳ではない。でも,あったと言ってもせいぜい年間2〜3例のものであって,世の中には変わった人間もいるものだ,で通り過ぎていたのであるが,それが,毎週のようにケースとして現れると言うことになると,これはおかしい,と言うことにもなる。当然のことであろう。私事めいて恐縮であるが,私のクリニックでは1日5人しか面接は受けないのであるが,一時期,その5人全部がセックスレスの相談と言うことがしばしばあったものである。やはり,異常事態である。
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.917, 1999-11-25

サムさん父子がモデルとなったポスターの「育児をしない男を,父とは呼ばない」は,今年の流行語大賞に選ばれて当然。名文句は父親と子どもの関係ばかりでなく,従来の日本社会の秩序を見直すインパクトをも与えたようだ。 厚生省の面々がこのポスターの仕掛人だが,その背中を押したのは総理大臣主宰の「少子化への対応を推進する有識者会議」の提言だった。この会議の事務局役の一人だった高倉信行さんは,昨年5月に生まれた長男の育児のために今年1月から3月まで3か月の育児休業をとり,しっかり「父」をやっている。
著者
森田 正
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.582-585, 1975-11-25

1.はじめに 第1子が誕生して喜んだのもつかのま,2昼夜ほどして母乳分泌が始まると,乳管の流通障害のため,妻は激しいうつ乳に,子は補乳困難でともに泣いた。授乳しようとしても,吸乳器にかけても,楽になるどころかうつ乳がひどくなるばかり。子は空腹のためにミルクを与えない限り泣きやまない。それでも病院では乳房に対する処置を,何ひとつしてくれなかった。それに,病院には同じ苦しみにあっている人がたくさんいた。 以来わたしは,乳房マッサージの研究を続け,その成果の一部は,本誌の昭和41年11月号,42年11月号,44年の2月号と5月号などで報告してきた。現在も乳房マッサージの研究を続けているが,産婦と接しているといろいろなことに気づいたり,疑問にぶつかったりする。そして気づいたことの裏づけをとるため,また問題を解決するために,岐阜市内の高橋産婦人科医院院長高橋政郎医博のご指導とご協力のもとに,いろいろアンケート調査を試みた。以下その中から2,3を紹介してみたいと思う。
著者
北原 龍二
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.240-242, 1976-04-25

はじめに:今月から6回ぐらいの連載で,家族社会学について述べることとなった。あらかじめおことわりしておくが,私はここで教科書や概説書ふうに,家族社会学の全体を要約的に取り上げるつもりはない。そういうことを離れて,私なりに,社会学の視座から家族をみるときの,いくつかの焦点を考えてみようとしている。 よく言われるように,家族は誰もが,あまりに身近にかかえているため,かえって知りすぎ,親しみすぎにおちいり,客観的にみることができにくいものである。また個別体験にかたよりすぎる危険も大きいものである。この連載コラムを通じて,何かしらの新しい眼をもって,家族を見直す機会を読者に提供できれば幸いである。