著者
高橋 五郎 磯辺 俊彦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.91-104, 1990-02

サン-シモンとフーリエの思想には,生産協同組合の思想の萌芽が見られた.本稿では,その萌芽にすぎなかった思想が徐々に発展させられていった様子を,彼らの弟子たちの思想を見ることによって辿ってみたものである.従来,サン-シモンとフーリエの思想のなかから生産協同組合論を見出だそうとの試みは,全くといってよいほど行われてこなかった.その理由の大きな部分は,生産協同組合研究は社会主義論の次元で扱われてきた傾向が強いことに見出だされる.また,マルクスやエンゲルスの偉大すぎる生産協同組合論のまえに,彼ら以前の生産協同組合論が埋没してしまって,その発展史を辿ることすら無意味のように思われてきたためとも見られる.しかし資本主義体制のなかでは,生産協同組合の仕組みをそなえた個別企業の存立する条件はないと断定することは疑問である.わが国農業の現状を見ても,農協が生産協同組合としての機能をそなえるならば,従来見られた農業生産組織論や最近の「集団的土地利用秩序」論の発展を深めるなかで,有効な農業生産機能をそなえることができる展望が持てよう.本稿は,こうした観点からマルクスやエンゲルスの思想以前に遡ることを通じて,そこに,現代社会に通じる生産協同組合論の基層的考え方を拾いだし再評価の機会をつくり出してみようと試みたものである.サン-シモンとフーリエの膨大かつ難解な著作からそれを完全なまでに行うことは不可能に近いが,本稿は,その糸口の発見に重点を置いたものである.
著者
大野 正夫
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.33-40, 1954-09-30

昭和28年度(1953)に於て,果樹の混合花粉の適当な撒布方法を見出すへく,小型撒粉器を用いて実験を行つた.その結果は次の通りである.1.新鮮な果樹の花粉は,撒粉器ガラス球内壁面に相当に附着する.そこで,この欠点を防ぐために樹脂塗料を用いた.塗料はメラミンザボン及びシリコンオィルラッカーである.2.両者とも,包蔵する混合花粉の量が少い場合には,上の目的に役立つことがわかつたが,その量が多い場合には,その影響は顕著でなかつた.3.混合花粉を撒布する場合には,撒布距離はなるべく,その目的物に近接させるべきである.4.撒粉器使用によつて授粉した結果は苹果紅玉種には好ましいものでなかつた.これは,その開花状態に変化があることが関係しており,一方向からの撒布では,飛散花粉が花柱に不平均に着くためであると考えられる.5.富有柿ではよい結果が得られた.果実の結果歩合,含有種子数は人手による交配に比較して,少しも遜色がなかつた.