著者
船木 實 大槻 一枝 大野 正夫
出版者
日本応用藻類学会
雑誌
Algal Resources (ISSN:18833284)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.29-47, 2021 (Released:2022-12-30)

In the years 1932-52, Yoshiro Otsuki, while living in China, investigated how to cultivate Saccharina japonica var. japonica (Makombu) and Undaria pinnatifida (Wakame) in the Yellow Sea area in China. In 1938 he was able to develop a seeding method that could release numerous numbers of zoospores from mature Makombu and Wakame within several hours by stimulating the seaweed through partial drying of their thalli also known as “dry stimulation method ”. Consequently, he was able to establish the complete cultivation of Wakame using the raft cultivation method near the sea surface. However, Makombu has to be submerged on the seabed during the summer season because of too high temperature. Otsuki solved this problem by cultivating the gametophyte stage in the oligotrophic seawater below the sea surface and by this treatment, the gametophyte stage developed some form of resistance against environmental change. He was able to establish the complete cultivation technique of Makombu in 1952. However, he was not able to apply the technique in commercial scale in China as he had to return to Japan in 1953, just after being released from detention by the Chinese government. In Japan, he started the cultivation of Wakame in Onagawa, Miyagi Prefecture as soon as he returned home. This time he succeeded in the commercial cultivation of Wakame. Some Chinese researchers have evaluated his contribution to the establishment of cultivated technology of Makombu in Yellow Sea, where it does not grow naturally. Unfortunately, Otsuki's achievements have been almost unknown to the Japanese-both to the general public and the fishermen.
著者
大野 正夫
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.39-55, 1956-12-30

(1)1950年度において果樹の人工授粉の能率化をはかる第一手段として花粉の増量剤について小実験を行つた.(2)モモ,ナシ,カキ,リンゴについて,夫々の授粉用花粉に増量剤としてシッカロトール,小麦粉,馬鈴薯澱粉,小豆粉を用いた.(3)増量剤の混入率は重量比で花粉の8〜10倍とした.(4)これ等増量剤中果樹の授精に障害のあつたもはのシッカロールで,次で粒子の大きな麸を混じた小麦粉は成績わるく,馬鈴薯澱粉,小豆粉はこの範囲の混合比では良好な結果率を得,花粉単用区に比しいささかも遜色がなかつた.(1)1951年度にカキ富有について禅寺丸花粉に石松子,蒲黄を夫々20, 40, 60倍量容量比で添加し圃場での人工授粉による結果率を調査した.(2)増量割合が多くなるに従つて結実は低下した.その実用的利用倍率は30〜40倍までの範囲と考えられた.(3)結実率不良はカキ花粉に対し,石松子60倍添加の場合にのみ看取された.(4)増量割合が増加するに従い,果実内種子数も減少した.(1)1952年において,カキ富有に対し,禅寺丸花粉の人工授粉に際し,増量剤として石松子,蒲黄の他胡桃,赤松,多行松,ヒマラヤ杉,玉蜀黍花粉を使用した.増量割合は容量で10倍とした.(2)実験は千葉県松戸,埼玉県上尾の2ヶ所で行つた.その成績は何れも同様な傾向を示し,花粉単用区に比し遜色のない良好な結実率を示したのは胡桃花粉増量区であつた.(3)胡桃花粉を増量剤として用いた区の果実内含有種子数も花粉単用区に近似し,1果につき4個以上のものが76〜82%を占めた.(4)人工発芽床上での増量花粉中のカキ花粉の発芽並に花粉管の伸長も胡桃花粉区がもつとも花粉単用区に近似して良好であつた.(5)これを要するに,胡桃花粉はその大きさ,粉末比重共にカキ花粉のそれに近似しているのでよく混合し,柱頭にカキ花粉がむらなく附着することと,柱頭上で何等有害作用を及ぼさないことによるためと考えられた.
著者
大野 正夫 山本 裕二 畠山 唯達 田尻 義了 渋谷 秀敏 加藤 千恵 足立 達朗 齋藤 武士 桑原 義博
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、地磁気の強さの「永年変化」を用いた過去3500年間(縄文時代後晩期以降)の遺跡・遺物の年代の決定方法を確立する。そのため、従来あまり利用されてこなかった土器片・甕棺・瓦などを主な資料とし、新手法である「綱川―ショー法」を用いて地磁気強度の推定を行い、地磁気強度変化の標準曲線を構築する。この地磁気強度永年変化曲線は東アジアの遺物・遺跡の新たな年代指標となると考えられる。
著者
吉村 辰朗 大野 正夫
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.151-160, 2012 (Released:2016-04-15)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

断層破砕帯において帯磁率測定を行なった結果,高帯磁率を呈する場合があり,その時に断層破砕帯では低γ線量を呈する場合もある。帯磁率を増加させる要因がγ線遮蔽効果の指標として用いることができるかどうか確かめるためにγ線減衰実験を行なった結果,帯磁率を高めるFeOの含有量が多い場合や細粒化が進んでいるほどγ線吸収量が多くなる現象が認められた。断層破砕帯におけるγ線量の減少の中には,断層破砕帯での帯磁率を増加させる要因によってγ線の遮蔽効果が顕著になった場合があると考えられる。帯磁率は,磁性鉱物の細粒化,磁性鉱物の増加,磁性鉱物の風化・変質によって変化する。断層破砕帯におけるγ線は,断層物質の磁性特性によって異常値の出現状況が変化すると考えられる。
著者
大野 正夫 LARGO Danilo FORTES Migue TRONO Gavino 鰺坂 哲朗 小河 久朗 増田 道夫 山本 弘敏 奥田 武男 吉田 陽一
出版者
高知大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

フィリピン諸島の海藻・海草・微細藻類に関する分類、生態に関する調査研究、有用海藻類の資源学調査は昭和60年度より開始され、3次にわたる現地調査が行われた後、最終年度の平成2年度に総括的調査研究が実施された。1.現地調査:今年度の実施計画では、各担当者が今迄の調査で、デ-タや海藻標本等を特に補ぎなう必要のある地域を定めた。また3次まで行動等を考慮して乾期に現地調査が実施されてきたが、雨期の海藻の生育状態も知る必要が生じたために、6月16日から6月28日の期間現地調査実施した。山本,増田,鰺坂は、今迄の研究から、それぞれオゴノリ属,ソゾ属,ホンダワラ属の海藻類の分類学的研究にしぼって、北ルソン島で調査が行われた。短期間でかなり広い範囲の採集調査が行われ、オゴノリ属やソゾ属の標本は充分に得られ、特にフィリピンでのこれらの種の季節的消長を知ることができた。ホンダワラに関して、新らたに得られた種の標本は多くはなかったが、生殖器床を持つ標本が多く得られた。吉田は、マニラ周辺のミル貝の養殖場の環境調査を実施した。今回はミル貝養殖を指導しているJICAの専門家の協力も得て、詳細な水質調査とともに、養殖場内の植物プランクトン組成を知ることができ、ミル貝養殖の管理の基礎資料を得ることができた。奥田は、フィリピン諸島の中央部にあるセブ島で、サンカルロス大学の協力を得て、5昼夜にわたり、紅藻類の果胞子放出周期、特に日周リズムの有無についての観察を実施した。今迄の調査で季節的成熟リズムを追ったが、今回の調査研究で、熱帯域における海藻の成熟現象を明らかにすることができた。小河は、海草類の分類地理学的調査を実施してきたが、生態的調査資料が充分でなかったので、パラワン島に定点を定め、季節的調査を実施してきたが、今回、その総括的な調査を実施した。その結果、雨期は結実期であることがわかり、熱帯域の海草の生活パタ-ンをとらえることができた。大野は、フィリピンで養殖されているキリンサイ類の養殖方法を生態学的に検討した。また前回採集された海藻標本の整理と種類の検討を行なった。2.招へい:3次調査までに協同調査を行なってきたフィリピン大学のトロノ教授,フォルテス助教授,サンカルロス大学のラルゴ講師は、彼等の専門分野について、日本側メンバ-および日本国内の関係研究者と有意義な意見交換をすることができた。トロノ氏は、フィリピン産のホンダワラ類について、出来るかぎり種名を明らかにする研究計画があり、北海道大学の標本庫におさめられている標本と比較検討することにより、多くの未同定のものについて、検討することができた。フォルテス氏は、海草類の生態に関し、熱帯域と温海域の相違点などを検討することができた。ラルゴ氏は、有用海藻であるオゴノリの生理生態的な研究とホンダワラ類の生態調査をセブ島で実施しており、そのデ-タを高知大学と京都大学において検討する会合を持った。以上のように各担当者は、短期間の現地調査であったが、多大の成果を得て、現在デ-タ-の解析や分類学的検討を行なっている。各人の成果は、個別に学術雑誌に投稿することにしているが、このプロジェクトの成果として日本水産学会平成4年度シンポジュウム「東南アジアにおける養殖の現状と将来展望」において、海藻類に関し、大野(海藻類の養殖)、小河(キリンサイ類)、鰺坂(オゴノリ類),吉田(ミドリガイ養殖と環境)が報告する。また、6年間にわたった調査研究の成果の総括的出版物として、200頁程度のものを企画している。原稿〆切を9月にして、来年度中に発行をめざしている。なおこのプロジェクトによりフィリピン諸島の海藻に関する研究は進んだが、海藻の分布域をみると、ベトナム沿岸の海藻が、日本・フィリピン諸島と似ているので、次にベトナム沿岸の海藻調査研究計画が立てられている。
著者
永沢 勝雄 大野 正夫 野間 豊 大場 陸司
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-8, 1968-12-31

1.1966,1967両年度において,早生温州ミカンの結果母枝の発育程度とNAA散布による落果助長効果との関係,側枝の着果にあたえる影響を調査し,なお,NAA散布が収穫果実の形質におよぼす影響について調査した.2.NAA散布濃度は300,150ppmの2種類とし,花弁脱落期(満開5日後)ならびに幼果期(満開40日後)に散布した.一般に濃度の高い方が落果を助長した.3.NAA散布による落果助長効果は1966年では,幼果期散布区,1967年では,花弁脱落期散布区に顕著で,年によって様相を異にした.4.NAA散布が果実の形質にあたえる影響については,1966,1967の両年とも,いづれのNAA散布区においても一果平均重が大きく,大果歩合が高くなった.その原因としては,落果助長にもとずく,一果当り葉面積の増大によるほか,NAAそのものに残存果実の肥大を助長する作用があるのではないかと考えられた.
著者
大野 正夫
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.33-40, 1954-09-30

昭和28年度(1953)に於て,果樹の混合花粉の適当な撒布方法を見出すへく,小型撒粉器を用いて実験を行つた.その結果は次の通りである.1.新鮮な果樹の花粉は,撒粉器ガラス球内壁面に相当に附着する.そこで,この欠点を防ぐために樹脂塗料を用いた.塗料はメラミンザボン及びシリコンオィルラッカーである.2.両者とも,包蔵する混合花粉の量が少い場合には,上の目的に役立つことがわかつたが,その量が多い場合には,その影響は顕著でなかつた.3.混合花粉を撒布する場合には,撒布距離はなるべく,その目的物に近接させるべきである.4.撒粉器使用によつて授粉した結果は苹果紅玉種には好ましいものでなかつた.これは,その開花状態に変化があることが関係しており,一方向からの撒布では,飛散花粉が花柱に不平均に着くためであると考えられる.5.富有柿ではよい結果が得られた.果実の結果歩合,含有種子数は人手による交配に比較して,少しも遜色がなかつた.