著者
荻野 七重 齊藤 勇
出版者
白梅学園短期大学
雑誌
白梅学園短期大学紀要 (ISSN:0286830X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.63-77, 2000

大学入試の成功と失敗の原因帰属と欲求との関連をみることを目的とし、同一の大学生を対象に、欲求および帰属の調査を行なった。分析は10の帰属要因について、帰属の高い学生と低い学生を選び出し、54種類の欲求について2群間の比較を行なった。その結果、それぞれの要因について、以下のような欲求との関連をみることができた。a.「素性、生れの良し悲し」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は他者に対して受容的であるのに対し、失敗の場合は他者に対して否定的である。b.「才能、能力、素質の有無」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は安心を求める傾向が高く、受動的である。この傾向は、失敗の場合にも共通する。失敗の場合は、さらに、自己を前面にだそうとする傾向が低いという特徴がある。c.「性格、性質の良し悪し」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は能動性が高く、欲求と行動のギャップが小さい。失敗の場合は、社会性、協調性を志向してはいるが、行動が伴なわない傾向がある。d.「出身校の良し悪し」への帰属について 成功の場合については欲求との関連が少ない。失敗の場合、帰属の高い学生は保身的、協調的傾向が高い。達成欲求があっても、行動が伴なわない傾向が特に顕著である。e.「長期的努力」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は低い学生よりも努力する傾向がみられる。失敗の場合、帰属の低い学生の特徴として、対人関係における関心の低さがみられる。f.「その時の対応の良し悲し」への帰属について 成功と失敗の間に類似性があり、いずれも、帰属の高い学生の能動性が高い。g.「課題や相手の難易」への帰属について 成功と失敗のどちらの場合も、帰属の高い学生は能動的欲求が高い。成功の場合は、なかでも優越支配欲求が高い。h.「環境の良し悲しや援助の有無」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は低い学生よりも能動的、協調的、保身的である。失敗の場合は逆に、低い学生の方が能動的である。i.「運の有無」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は保身的傾向が低い。失敗の場合は、競争や危険を避ける傾向がみられる。j.「運命、縁の有無」への帰属について 成功の場合、権勢的な面でも、非権勢的な面でも欲求が低い。失敗の場合は、挑戦をせず安心を求める傾向がみられる。また、物事を科学的、合理的に考えようとする欲求が低い。
著者
市川 奈緒子
出版者
白梅学園大学
雑誌
白梅学園大学・短期大学紀要 (ISSN:0286830X)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.65-78, 2011-03-14

高校以降の高等教育機関に在籍する,発達障害を持つ生徒・学生の数は,年々調査するごとに増えてきている。高校では,発達障害支援モデル事業でSNE(Special Needs Education)校に指定された高校や,東京都のチャレンジ校,エンカレッジ校,大学では,障害学生支援ネットワークの拠点校等を中心に,その学校の実態に即したさまざまな支援が始まっている。発達障害は定型発達との境界線がひきにくく,わかりにくい障害であるため,まわりの認識も自己認識も遅れがちで,二次障害のリスクが高い。これまでの高等教育機関における発達障害を持つ学生の実態調査と彼らへの支援の動向を,文献研究並びに学会や視察の結果から明らかにし,それを踏まえて今後の高等教育機関における支援の目的と方向性を提示した。
著者
服部 春子 村田 務 真保 雅子 任海 真実 熊谷 てるみ
出版者
白梅学園短期大学
雑誌
白梅学園短期大学紀要 (ISSN:0286830X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.205-218, 1995

本学女子学生を対象に,保健行動と健康への意識等について質問紙調査を実施し,保健行動の実態を知るとともに,その背景となっている生活要因について分析した。(1)毎日,通学に3時間以上を費やす学生が約2割みられた。健康状態に特に問題となる特徴はなかったが,生活時間の配分などについて相談する機会を設ける等,追跡調査をする必要がある。(2)睡眠時間が短い人の特徴は,自宅からの通学者,通学に長時間要する人,起床時刻が早い人,就寝時刻が遅い人,自炊をしていない人,健康に関心のある人である。(3)就寝時刻が午前2時を過ぎる者が約1割いる。就寝時刻が遅いほど睡眠時間が短くなる傾向があり睡眠不足を招く。また,概して,朝食を抜く傾向もあり健康を維持する上で問題となる。(4)食事が不規則な者は約3割,朝食を「毎日食べないときもある」者は約3人に1人の割合である。健康に関心のない者,アパート等に居住する者に朝食を抜く割合が高い。(5)食事バランス尺度が低かった者の特徴は,アパート等に居住する者,就寝時刻が遅い者,健康に関心のない者などであった。寮生,専攻科生は高かった。(6)ダイエットは,半数が経験していた。その情報源は,雑誌や本,友人からの話が殆どで,誤った方法によることも危惧される。そのためか,約2割の者がダイエット実施後に体調に何らかの弊害があったと回答している。(7)月経痛について,約半数の者が「ひどい」と回答している。その対応としては,「我慢する」が6割弱である。計画的総合的な予防対策が必要であると思われる。(8)アレルギー性疾患は,約3割の者が有しており,殆どが結膜炎,鼻炎を伴った花粉症である。(9)AIDSに関して,漠然とは心配しているが,予防行動への意志が明確でなかったり,学習への意欲が少ないなど,「自分の問題」としては認識していない。(10)以上のことから,保健室,保健管理室の指導・相談の内容として,睡眠時間,食事のバランス,ダイエットの仕方,月経痛の対策,アレルギー対策,AIDSへの理解等があげられる。(9)指導・相談を特に要する対象としては,アパート等から通学する学生があげられる。