著者
大井 万紀人
出版者
専修大学自然科学研究所
雑誌
専修自然科学紀要 (ISSN:03865827)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.25-37, 2021-03-05

ケプラーの法則はニュートンによって説明されたが,重力の法則だけではケプラーの法則を説明することはできない。慣性の法則,および運動を2つの自由度に分解するという考え方も必要で,これらはガリレオが解明した事柄である。ガリレオとケプラーは,ルネサンス期を生きた同時代の研究者であるから,もし二人が共同で研究を行なっていたら素晴らしい発展が得られたのではないかと想像する人は多いはずである。実際,ケプラーとガリレオの間には手紙のやり取りによる交流があった。しかし,科学的な情報交換は行われず,共同研究に発展することはなかった。ガリレオとケプラーの間の科学的な意思疎通がどうしてうまくいかなかったのを科学史の観点から解き明かすことを最終的な目標として,この論文を起点に二人に関わる科学史を複数回に分けて考察していきたい。まず,今回はガリレオとケプラーの研究スタイルとの相違点について概観し,比較する。
著者
大井 万紀人
出版者
専修大学自然科学研究所
雑誌
専修自然科学紀要 (ISSN:03865827)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.27-42, 2020-03-05

1895年にX線を発見したレントゲンは第一回ノーベル物理学賞を受賞しているにもかかわらず,発見までの経緯やその評価に関して誤った記述が蔓延している。この状況は,レントゲンが自伝を残さなかったばかりでなく,研究ノートなどの書類が死去と同時に焼却されて残っていないことにも起因しているが,これに加え,他の研究者の妬みに由来する誹謗中傷に満ちた不正確な文書,あるいはX線発見によって有名になったゆえの一般の人々による根拠のない噂話やその類の文書によって,レントゲン本人の正しい生き様やその業績の内容は相当程度に歪められてしまったことも原因にあげられる。この論文では,2年間におよぶ文献調査を基に,レントゲンの業績ならびにX線発見に至った実験の内容をできる限り正確に記述することを試みる。
著者
苅谷 愛彦 高岡 貞夫 齋藤 めぐみ
出版者
専修大学自然科学研究所
雑誌
専修自然科学紀要 (ISSN:03865827)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-10, 2020-03-05

北アルプス南部・上高地西方の「西穂池」は,第四紀花崗閃緑岩の岩盤重力変形で生じた主稜線上の線状凹地に存在する小規模な水域である.西穂池を擁する線状凹地の地形発達過程および環境変化にかかわる議論に資する目的で,線状凹地底部においてハンドオーガーによる掘削を行った.その結果,長さ(深さ)210cmに達するほぼ連続的な柱状コアの回収に成功した.このコアから7点の[14]C年代試料と3点のテフラ試料を採取し,年代モデルの構築や示準面の挿入を試みた.西穂池の周辺では4200cal BPころまでに凹地が形成された可能性があり,3500cal BPころ以降に植生が侵入して腐植や泥炭の集積が現在まで続いている.このコアは過去4200年間以上の斜面変動や植生変遷を論じるための重要な資料となる.