著者
松岡 茂 工藤 慈
出版者
森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.149-155, 2009-06

2007年2月15日,北海道札幌市の落葉広葉樹林で,入り口が氷とざらめ雪に覆われたねぐら樹洞内で,ハシブトガラの死体を発見した。氷は透明で,その上をざらめ雪が覆っていたことから,最初に雨氷が降って木に氷が付着し,後にざらめ雪が降ったものと考えられた。ねぐら穴の入り口の方向と,氷の付着方向から,南から南南西の方向の風による着氷,着雪と考えられた。調査地近くで観測された気象データからは,着氷雪の発生は2月14-15日にかけての真夜中ごろと推察された。また,鳥類病院の検査部門に委託した病理解剖の結果は,ハシブトガラは消耗による死亡ではなく,内臓器官の状態からみて,窒息による死亡所見と矛盾しないことを示した。これらの状況証拠から,ハシブトガラが14日の夕方にねぐらに入った後に着氷雪が発生し,入り口を塞いだために通気がとまり,窒息死に至ったと推察された。
著者
松岡 茂
出版者
森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.65-69, 2007-03

キバシリは、ユーラシア大陸に広く分布する種であるが、極東地域での生態研究は少ない。この報告では、北海道札幌市の落葉広葉樹林で観察された冬期間のキバシリのねぐら場所およびねぐら入り行動を記載した。キバシリは、調査地の日の入り時刻前後に、樹幹に掘られた浅い穴に体を埋めるようにねぐら入りしたが、体が隠れるような樹洞や樹皮下へのねぐら入りは観察されなかった。個体識別された個体は、観察された限りではそれぞれ同じねぐらに入った。ねぐら場所の特徴やねぐら入りの行動に大きな変異は認められなかった。